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国際比較調査からわかる、日本の若者が「恋愛より、仕事より大事にしているもの」

荒川和久独身研究家/コラムニスト/マーケティングディレクター
(写真:アフロ)

恋愛と仕事、どっちが重要?

前回の記事(「恋愛はお金がかかる?」日本と欧州3カ国の若者の恋愛意識の違いを比べてみた)で、日本、フランス、ドイツ、スウェーデンの20代男女の恋愛意識の違いについてご紹介したが、今回はその続きである。

前回のおさらいとして要約すると、

・日本の若者は恋愛意欲が少ない

・日本の若者は恋愛に自信がない

・日本の若者は恋愛は金がかかると思っている

ということになる。

では、逆に、恋愛以外に関しての興味関心や意欲は欧州諸国の若者と比べてどうなのか?という点についてみていきたい。

独身者に「まだ独身でいたい理由」を聞いた時によくでてくるもののひとつに「今は仕事に打ち込みたいから」というのがある。結婚したら仕事に打ち込めないということは実はないし、むしろ、家族がいるからこそ仕事に邁進する場合もあるのだが、結婚しない理由に仕事をあげる場合が多い。

「恋愛と仕事、どっちが大事なの?」なんて質問は、よくバカップルが「私と仕事、どっちが大事?」とか質問するのに似て、あまり意味のあるものではないのだが、内閣府の調査員はそうは思っていないらしく、堂々とそういう質問をしている。

結果は以下の通りである。

「恋愛より仕事が大事」と答えているのは、日本の若者より欧州の若者の方が多い。フランスに至っては、男性より女性のほうが「仕事が大事」だと思っているようだ。

フランスやドイツの女性は25%以上だが、それと比べて、日本の女性は15%と低い。もちろん、男性も欧州3カ国が25-30%であるのに対し、22%と低い。

恋愛と仕事は二択じゃない

ここで思い返してほしいのは、日本の若者が「恋愛より仕事が大事じゃない」と言っているからといって、恋愛を重視しているわけじゃないということである。そもそも恋愛に意欲的でないのにもかかわらず、意欲的ではない恋愛以上に仕事にも意欲的ではないということになる。

こう聞くと、高度成長期を支えてきたかつての若者である今の高齢者たちは、「近頃の若者は…」というお決まりのフレーズを言ってしまいたくもなるだろう。

しかし、よくよく考えてほしいのは、かつては仕事をすればするほど給料があがった時代である。「24時間戦えますか?」という広告キャッチコピーが堂々と放送されていた時代でもあり、残業も多かったし、その分残業代もついた。

写真:アフロ

鍛えれば鍛えるほど筋肉がつくボディビルダーの喜びと同じように、働けば働くほど報われたことで、あの時代は、ある意味変なドーパミンが出まくっていたことだろうと思う。

しかし、皮肉なもので、それだけ仕事漬けで労働時間も長かった当時は、ほぼ100%が結婚した皆婚時代だったのである。

「恋愛より仕事」という二者択一の話ではなく、本当のところは、「仕事ができる奴は恋愛でも強者」なのである。仕事で多忙であればあるほど、恋愛行動もそつなくこなせるのである。むしろ、恋愛弱者ほど暇をもて余しているだろう。

余談だが、女性が気になる男性を誘った際に「ちょっと忙しいから当分無理だわ」と断られてしまう場合、100%脈はない。仕事がどんなに忙しくても、興味ある相手とのデートの時間くらいは作れるものだし、デートの時間も作れないような者はそもそも仕事もできない。

恋愛意欲と仕事意欲は、どっちを優先するかという話ではなく、「どっちも充実させる」か「どっちも不満足」か、でしかないのだ。

日本が唯一勝っている部分

しかし、そんな日本の若者が欧州の若者に唯一勝っている部分がある。

「恋愛より趣味」を大事にするのである。

以下の通り、日本人は男女とも他国を圧倒している。

生真面目なイメージのドイツ人の趣味重視の割合が低いのはなんとなくわかるが、日々を楽しもうとしているイメージのあるフランス人より、日本人は「趣味が大事」なのだ。

つまり、日本の若者は、仕事よりも恋愛よりも、趣味が第一なのであり、ある意味、未婚化、非婚化、少子化となるのも頷ける話である。

そうなると、日本が世界に誇るオタク文化が、世界に波及し、みんなが「恋愛より趣味」派になると、世界が未婚化していくのだろうか。

写真:アフロ

いやいや、決してそうではない。もはやオタクも半分以上は既婚者なので、決してオタクを究めたからといって結婚できないわけではない。

男女で違うオタク種類別の未婚率~結婚しやすいオタクと結婚しにくいオタク

むしろ、危険なのは、「どっちか選べ」と言われた時に、何の疑いもなくどちらか一方を選択しないといけないと思い込んでしまう性根の方かもしれない。「どっちか」ではく、「両方とる」という第三の選択肢があるのである。

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独身研究家/コラムニスト/マーケティングディレクター

広告会社において、数多くの企業のマーケティング戦略立案やクリエイティブ実務を担当した後、「ソロ経済・文化研究所」を立ち上げ独立。ソロ社会論および非婚化する独身生活者研究の第一人者としてメディアに多数出演。著書に『「居場所がない」人たち』『知らないとヤバい ソロ社会マーケティングの本質』『結婚滅亡』『ソロエコノミーの襲来』『超ソロ社会』『結婚しない男たち』『「一人で生きる」が当たり前になる社会』などがある。

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