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パリオリンピック。スペイン優勝でいっそう露わになった日本サッカーの方向性なき強化策

杉山茂樹スポーツライター
(写真:森田直樹/アフロスポーツ)

 0-3の敗戦といってもいろいろある。0-2に近いものもあれば0-4に近いものもある。0-1に近いものもあれば0-5に近いものもある。サッカーの結果、スコアには幅がある。内容とスコアを照らし合わせながら実際の差はどれほどなのか、探る必要がある。

 結果がすべてという価値観に支配されるスポーツの世界において、サッカーは異端に属する。だが得点が最も入りにくいという競技の特性を忘れ、つい他の競技と同じ視点で語ろうとする。勝てば喜び負ければ悲しむ。他の競技と横並びで画一的に紹介されるオリンピック報道では、その傾向に陥りやすい。特にテレビは、他の競技と同じコンセプトでサッカーを語ろうとしていた。

 オーバーエイジを含まない23歳以下という特殊な編成で臨んだ男子チーム。一方、バリバリのA代表で臨んだ女子チーム。参加チームも女子が12で男子が16だ。オリンピックは同じサッカーでも男子と女子で別競技のような隔たりがあった。結果はどちらもベスト8。より厳しい目を向けるべきは女子になる。筆者は女子サッカーを男子ほど頻繁に取材しているわけではないので、あまり声を大にして言いたくないが実際、男子以上に物足りなさを覚えたものだ。

 5バックで後方を固める守備的サッカー。サイド攻撃を追求せず、真ん中でパスを繋ごうとするサッカーでいいのか。見るからに弱気で貧弱そうに見えた女子サッカーに明日があるようには思えない。選手の責任ではない。ひとえに采配を振る池田太監督の問題だ。方向性はこのままでよいのか。

 だが女子サッカー界からはその是非論さえ聞こえてこない。極めて正攻法に戦った大岩剛監督率いる男子と比較するとその差は鮮明となる。池田監督のサッカーはどちらかと言えば森保一監督的。パリオリンピックは日本サッカー界の目指す方向性に一貫性がないことを証明する機会にもなった。技術委員長の見解を聞きたいものである。

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スポーツライター

スポーツライター、スタジアム評論家。静岡県出身。大学卒業後、取材活動をスタート。得意分野はサッカーで、FIFAW杯取材は、プレスパス所有者として2022年カタール大会で11回連続となる。五輪も夏冬併せ9度取材。モットーは「サッカーらしさ」の追求。著書に「ドーハ以後」(文藝春秋)、「4−2−3−1」「バルサ対マンU」(光文社)、「3−4−3」(集英社)、日本サッカー偏差値52(じっぴコンパクト新書)、「『負け』に向き合う勇気」(星海社新書)、「監督図鑑」(廣済堂出版)など。最新刊は、SOCCER GAME EVIDENCE 「36.4%のゴールはサイドから生まれる」(実業之日本社)

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