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自らの5バックを「賢くしたたかな戦い」と自画自賛する森保日本代表監督の楽観主義を心配する

杉山茂樹スポーツライター
(写真:岸本勉/PICSPORT)

 2026年W杯アジア3次予選でサウジアラビアに勝利、オーストラリアに引き分け、勝ち点を快調に伸ばしている日本。同C組の「死の組」という下馬評は何処へやら。予選突破は最終戦を待たず、早い段階で決まりそうである。

 日本が強いというより対戦相手に手応えを感じない。そちらの方を心配したくなるほどだが、5バック(3バック)サッカーに傾倒する森保サッカーを、超攻撃的布陣と持ち上げる一部メディアも同様である。攻撃的に見えるのは相手が弱い間だけという布陣構造の本質を忘れ、大勝劇にはしゃぐ姿は哀れ。低レベルを象徴する一件だ。

 ものすごく大きな話を軽んじているようにも見える。5バックへの変更は大きな賭だ。博打的要素を含んでいる。4-2-3-1や4-3-3から試合の途中で変更すると分かりやすい。後ろの人数が増えるので、試合の主導権は否応なく相手側に移る。森保監督は「賢くしたたかな戦い方」と肯定するが、そうだろうか。守り切れず失点を食う失敗例は枚挙にいとまがない。サッカー“あるある”のひとつといっても過言ではない。

 日本代表で言えば、ザックジャパンが臨んだ2011年のアジアカップカタール大会準決勝対韓国戦だ。1-1のスコアのまま延長戦に進んだこの一戦。日本は延長前半細貝萌のゴールで2-1とした。そこでザッケローニは前田遼一を下げ伊野波雅彦を投入する。FWを1枚削り、DFを1枚増やし、布陣を4-2-3-1から5バック(5-3-2)に変更した。

 延長後半は韓国の一方的なペースとなる。案の定、延長後半15分、まさに最後の最後で追いつかれてしまった。逃げ切りに失敗したわけだ。

 PK戦を制したのは日本。決勝でオーストラリアを下し、優勝を飾ったことで、このザッケローニの判断ミスは表面化せずに終わった。筆者は準決勝後、もちろん痛烈に指摘した。

 岡田武史監督退任を受け、攻撃的サッカーというコンセプトのもので代表監督探しは行われ、その結果、招聘されたのがザッケローニだったと言う経緯を踏まえるとなおさらである。看板に偽りあり。監督探しの根幹を揺るがしかねない、これは大問題と言えた。

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スポーツライター

スポーツライター、スタジアム評論家。静岡県出身。大学卒業後、取材活動をスタート。得意分野はサッカーで、FIFAW杯取材は、プレスパス所有者として2022年カタール大会で11回連続となる。五輪も夏冬併せ9度取材。モットーは「サッカーらしさ」の追求。著書に「ドーハ以後」(文藝春秋)、「4−2−3−1」「バルサ対マンU」(光文社)、「3−4−3」(集英社)、日本サッカー偏差値52(じっぴコンパクト新書)、「『負け』に向き合う勇気」(星海社新書)、「監督図鑑」(廣済堂出版)など。最新刊は、SOCCER GAME EVIDENCE 「36.4%のゴールはサイドから生まれる」(実業之日本社)

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