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日本では何年経っても語られることがない5バックサッカーを観戦する上でのキーポイント2つ

杉山茂樹スポーツライター
(写真:岸本勉/PICSPORT)

 かつて4バックは中盤フラット型4-4-2と相場が決まっていた。中盤ダイヤモンド型や日本でも流行したブラジル式の4-2-2-2など例外もあったが、8割方は中盤フラット型の4-4-2だった。

 1990年代前半頃までの話である。中盤フラット型4-4-2が、当時流行し始めたプレッシングサッカーの定番布陣であったことも輪を掛けた。2トップ全盛時代。言い換えればそうなる。

 だがプレッシングの反動からか、そうこうしているとイタリアを発信源とした守備的サッカーが欧州を席巻し始める。前から行くのではなく、後ろを固めるサッカーだ。代表的な布陣は3-4-1-2。当時3バックと言えばこの布陣がほとんどだった。日本でも加茂ジャパン、岡田ジャパン(第1期)あたりまでは3-5-2(3-3-2-2)が主流だったが、トルシエ・ジャパンになると3バックと言えば3-4-1-2にすっかり変化した。

 3バックは4-4-2の2トップに対しきれいにハマった。2人のストッパーが2トップと1対1の関係を築き、余った1人がスウィーパー然とカバーに回る。2トップは3バックに挟まれやすい並びだった。ユベントスがチャンピオンズリーグ決勝に3年連続で進出した1997-98シーズン頃まで、3-4-1-2は急速にシェア率を伸ばしていった。

 だが、その看板チームであるユベントスが1997-98シーズン、CL決勝でレアル・マドリードに敗れると流れは変わり始める。直後に開催されたフランスW杯でベスト4入りしたオランダのフースヒディンク監督が採用した4-2-3-1が、その対抗軸になっていく。

 ミランでプレッシングサッカーの主役として活躍し、後にバルセロナで監督を務めたフランク・ライカールトに言わせれば「バルセロナやアヤックスなど一部のクラブで採用していた4-3-3と、プレッシングサッカーの定番である4-4-2を足して2で割った布陣」となる。

 4-2-3-1は、その数年後には、攻撃的サッカーを代表する布陣として世界中に浸透することになるが、4-4-2との最大の違いは1トップか2トップかという点である。4-2-3-1の流行は、つまり1トップサッカーの流行と同義語だった。

 一方、3-4-1-2に代表される5バックになりやすい守備的な布陣は、4-2-3-1の台頭とともにシェア率を減らしていく。1トップ対3バック。この関係で1トップ(4-2-3-1)が勝ったことがその大きな理由だ。

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スポーツライター

スポーツライター、スタジアム評論家。静岡県出身。大学卒業後、取材活動をスタート。得意分野はサッカーで、FIFAW杯取材は、プレスパス所有者として2022年カタール大会で11回連続となる。五輪も夏冬併せ9度取材。モットーは「サッカーらしさ」の追求。著書に「ドーハ以後」(文藝春秋)、「4−2−3−1」「バルサ対マンU」(光文社)、「3−4−3」(集英社)、日本サッカー偏差値52(じっぴコンパクト新書)、「『負け』に向き合う勇気」(星海社新書)、「監督図鑑」(廣済堂出版)など。最新刊は、SOCCER GAME EVIDENCE 「36.4%のゴールはサイドから生まれる」(実業之日本社)

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