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W杯予選。死の組、アジアのレベルアップを口実に?引いて構える5バックを森保監督はどれほど採用するか

杉山茂樹スポーツライター
(写真:ムツ・カワモリ/アフロ)

 9月5日の中国戦を皮切りにスタートする2024年W杯アジア最終予選。抽選の結果を受け、メディアは一斉に日本が所属するC組を“死の組”だと報じた。3グループ(A、B、C)の中で最も厳しそうなグループであることは確かで、たとえば韓国が戦うB組と比較すれば一目瞭然だ。無風区。韓国は張り合いがないくらい緩い組に振り分けられた。

 しかし今回のアジア枠は8.5だ。各組で3位、4位になった計6チームにも、4次予選という次なるチャンスが用意されている。3チームずつ2つのグループに分かれて戦い、各組の首位チームが本選出場権を得る。

 さらに、だ。4次予選で各組の2位になってもまだ先がある。2位チーム同士が対戦する5次予選だ。ここで勝ったチームが大陸間プレーオフに回る仕組みである。アジアで9番になってもなおチャンスがある。枠はほぼ倍増。今回のアジア予選が、これ以上は望めない楽な環境で行われることを忘れてはならない。

 サウジアラビア、オーストラリアと同組になるという死の組を戦う大変さと、8.5枠もある緩さとを天秤にかけたとき、特筆すべきはやはり後者になる。4.5枠だったこれまでから8.5枠に増えたことで、日本の本大会出場の可能性はいっそう高まっている。

 楽勝ムードを煽るより、死の組に振り分けられた危機感を煽った方が、プレビュー記事として生産性は上がる。商売の事情はよく分かる。だが客観的に見ればその必要はない。騒げば騒ぐほど商売っ気は透けて見える。

 日本はW杯のアジア予選を7回連続突破している実力国だ。初回の1998年フランスW杯と予選を免除された2002年日韓共催W杯を除けば、終わってみれば楽に予選を突破してきた。死の組だと言って必要以上に大変がるのは格好悪くもある。実力と枠の関係で言えば、世界で日本が最も楽な立場にいることを忘れてはならない。

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スポーツライター

スポーツライター、スタジアム評論家。静岡県出身。大学卒業後、取材活動をスタート。得意分野はサッカーで、FIFAW杯取材は、プレスパス所有者として2022年カタール大会で11回連続となる。五輪も夏冬併せ9度取材。モットーは「サッカーらしさ」の追求。著書に「ドーハ以後」(文藝春秋)、「4−2−3−1」「バルサ対マンU」(光文社)、「3−4−3」(集英社)、日本サッカー偏差値52(じっぴコンパクト新書)、「『負け』に向き合う勇気」(星海社新書)、「監督図鑑」(廣済堂出版)など。最新刊は、SOCCER GAME EVIDENCE 「36.4%のゴールはサイドから生まれる」(実業之日本社)

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