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拍手と手拍子しか聞こえてこないJリーグのスタンド風景に違和感を覚えるわけ

杉山茂樹スポーツライター
(写真:長田洋平/アフロスポーツ)

 ガンバ大阪の宮本恒靖監督が解任された。電撃解任という言い方もされているほどなので、突然の出来事と言えるだろう。自動降格圏内の18位。G大阪は新型コロナの感染者を出した影響で、消化試合数が他のクラブより数試合少ない。この低位置はある程度、やむを得ない気がする。

 とはいえ、昨季の成績(2位)との落差はあまりにも大きい。高まった期待値を裏切ったことは確かだ。宮本監督には評価が他の監督より厳しくなる、不運と言いたくなる巡り合わせがあった。

 下平隆宏(横浜FC)、ザーゴ(鹿島アントラーズ)に続く、今季3人目の解任劇だ。今季は4チームが自動降格する。降格率20%という厳しい設定だ。クラブ首脳は、問題があれば通常のシーズンより早く手を打とうと考える。全日程のおよそ3分の1を消化した段階で20チーム中3人の監督の首が飛ぶ現在の姿は、その緊張感、切迫感の表れに他ならない。

 だが、試合の現場は静かだ。舞台となるスタジアムは、無観客あるいは、人数制限が敷かれた中で行われているので、緊張感、切迫感、さらに言うならば殺気を発露させることがない。

 そもそも声を出した応援が禁じられている。応援の手段はもっぱら拍手。観客は満足度をその強弱で表現しているが、その一方で不満足度を表現する術がない。ブーイングは声を出す行為に値するので禁止行為となる。スタンドにこだまするのは拍手のみ。スタジアムは常にニコニコ、微笑んだ状態にある。試合現場にいると、降格率20%、いつ新たに監督の首が飛んでもおかしくない今季の厳しさを、思わず失念しそうな甘いムードに包まれている。

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スポーツライター

スポーツライター、スタジアム評論家。静岡県出身。大学卒業後、取材活動をスタート。得意分野はサッカーで、FIFAW杯取材は、プレスパス所有者として2022年カタール大会で11回連続となる。五輪も夏冬併せ9度取材。モットーは「サッカーらしさ」の追求。著書に「ドーハ以後」(文藝春秋)、「4−2−3−1」「バルサ対マンU」(光文社)、「3−4−3」(集英社)、日本サッカー偏差値52(じっぴコンパクト新書)、「『負け』に向き合う勇気」(星海社新書)、「監督図鑑」(廣済堂出版)など。最新刊は、SOCCER GAME EVIDENCE 「36.4%のゴールはサイドから生まれる」(実業之日本社)

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