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低年齢化する欧州組と現実的ではない五輪候補選手の強化策

杉山茂樹スポーツライター
(写真:西村尚己/アフロスポーツ)

 開催するのかしないのか。世の中が気を揉む中、サッカー界は慌てず落ち着いて構えているように見える。一番の原因は何かといえば、五輪サッカーの価値の低さにある。

 サッカー関連のニュースは、国内国外を問わず連日、ネット上を賑わせている。日本人が特別知らなくてもいい、海外発の現地向けニュースもその中に含まれている。巷には他の競技の追随を許さない、膨大な情報が飛び交っている。

 そうした中に身を委ねていると、五輪サッカーにおける金メダルの価値は必然的に浮き彫りになる。ファンは自ずとスタンダードを上げる。森保一監督が「目標は金メダルだ」とアドバルーンを上げても、それに釣られ、わーっと高揚した気持ちになる人は少ない。もし金メダルに輝いても、日本の世界的な地位が向上しないことを知っている。

 メンバーは24歳以下(通常は23歳以下)の選手と、最大3選手のオーバーエイジの計18人。五輪の登録選手は、W杯(23人)より5人少ないにもかかわらず、W杯よりはるかに厳しい強行日程で行われる。

 さらには、強国揃いの欧州、南米に出場枠が16分の6しか割り振られないなど、五輪サッカーの大会規定には、共感できない点が多々ある。それが五輪のステイタスに大きな影響を与えている。

 というわけで、サッカーの金メダルの価値は、残念ながらどの競技より軽い。陸上、水泳、体操等々とは比較してはいけない。チャンピオンシップにはほど遠いイベントなので、もし中止が宣言されたとしても、さほどショックはない。

 日本サッカー界は、1968年のメキシコ五輪で銅メダルに輝いて以来、「五輪でメダルをもう一度」を合い言葉に掲げ、あるときまで強化に励んできた。だが、予選敗退をくり返している間に、ハードルはいつしか「五輪出場」に下がっていく。悲願達成は、メキシコ五輪のなんと28年後。西野監督率いる日本はアトランタ五輪の予選を突破。晴れて1996年アトランタ五輪に出場を果たした。

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スポーツライター

スポーツライター、スタジアム評論家。静岡県出身。大学卒業後、取材活動をスタート。得意分野はサッカーで、FIFAW杯取材は、プレスパス所有者として2022年カタール大会で11回連続となる。五輪も夏冬併せ9度取材。モットーは「サッカーらしさ」の追求。著書に「ドーハ以後」(文藝春秋)、「4−2−3−1」「バルサ対マンU」(光文社)、「3−4−3」(集英社)、日本サッカー偏差値52(じっぴコンパクト新書)、「『負け』に向き合う勇気」(星海社新書)、「監督図鑑」(廣済堂出版)など。最新刊は、SOCCER GAME EVIDENCE 「36.4%のゴールはサイドから生まれる」(実業之日本社)

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