「血圧が高め」ならコーラは我慢したほうが良いかも。脳出血の危険性が高まる可能性【最新情報】
春も終わり、梅雨から夏へと暑苦しい季節が始まります。そんな時に嬉しいのが清涼飲料水。身体は冷えるし、気分も爽快。思わず手が出てしまいます。でも血圧が高めだったら「コーラ」には手を出さない方が良いかもしれません。「脳出血」を引き起こす確率が跳ね上がる可能性があるからです。
そんな驚きの研究結果が5月8日 (2023年)、「欧州脳卒中雑誌」に掲載されました [文末文献1] 。著者は中南大学(中国)のJunyu Liu氏たちです(Liu氏は京都大学にも籍を置いています)。この学術誌は「欧州脳卒中学会」という由緒正しい医学会の公式論文誌ですから、信憑性も高いと考えて良いでしょう。簡単にご紹介します。
そもそも脳出血とは?そしてその危険因子は?
その前に簡単な復習です。
「脳出血」とは、脳の中を通っている血管が破れる病気です。その結果、血管が破れた先には血液が送れなくなるので、血液から酸素や栄養を受けっとっていた脳細胞は死んでしまいます。また血管から破れ出た血液が脳を圧迫し(頭蓋骨の中にはあまり無駄なスペースがない)、死んでいない脳細胞も障害を受けます。想像するだけでも怖くありませんか?
そしてこの「脳出血」の危険性を上げる最大の要因は、何よりも「高い血圧」です。図は40歳以上の日本人920人を10年間観察した結果です。上の血圧(収縮期血圧)が高くなるほど、脳出血になる人の数は増えていました [文末文献2] 。「血圧上昇は加齢に合わせた自然現象」などと、呑気に構えている場合ではありません。
このように血圧が高いと脳出血になりやすいのですが、血圧の高い人すべてが脳出血を起こすわけではありません。血圧以外の危険因子、あるいは脳出血を引き起こす何らかの「引き金」があるはずです。
コーラを飲んだ直後は脳出血リスクが著増
では脳出血の「引き金」は何——?これが今回、Liu氏たちが取り組んだ課題でした。そこで脳出血を起こした人たちが発症前に何をしていたかを、脳出血を起こさなかった人たちと比較した論文を探しました。発症前にしていていた「何か」が「引き金」なっていたと考えられます。39本もの論文が見つかり、解析対象となりました。
その結果明らかになった脳出血の「引き金」には、「血液をサラサラにする薬」(出血しやすくなります)や、「怒り」「トイレ(大)」「性行為」(どれも血圧が上がるので血管が切れやすくなる)などに混じって「コーラ摂取」が入っていました。
脳出血を起こした人では起こさなかった人に比べ、直前1時間にコーラを飲んでいた確率が5倍以上も高かったのです(!)。
血圧上昇が媒介?
なぜコーラを飲むと脳出血リスクが増えるのか、Liu氏たちは明言していません。しかし行間を読むと血圧上昇が媒介していると考えているようです。
ただしこの研究からは「コーラ」と「脳出血」の間に因果関係があるかどうか、断言はできません。コーラを飲みたくなるような人では偶然、脳出血を起こす確率が上がっている可能性も否定できないためです。
しかしいずれにせよ、脳出血を発症した人では直前にコーラを飲んでいた人が多かったのは事実。血圧が高め(脳出血のリスクが高め)の人はコーラを我慢して損はないでしょう。
血圧については次のような論文紹介記事も書いています。こちらも是非ぜひ、お読みください。ではまた!
- こっちが本当。「高血圧を下げると認知症は減り、ボケも抑制」最新論文
- たまには逆の腕でも測りませんか?「片腕だけではちょっと足りない」家庭血圧測定
- 「しっかり歯磨き」で血圧低下?降圧薬を飲み始める前にぜひ一読を!
今回ご紹介した論文
- コーラを飲んだ直後は脳出血を起こしやすい [英語]
- 血圧が上がると脳出血の危険性も上がる [英語]
【注意】本記事は最新の医学論文についての紹介あり、研究結果の内容はあくまでも「論文筆者」によるものです。また論文の解釈は論者により異なる可能性もあります。あくまでもご自身の見解形成の参考としてお読みください。