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「緑茶にダークチョコ」で認知症予防?12万人10年観察データが教えてくれたこと【最新情報】

黒澤恵(Kei Kurosawa)医学情報レポーター
作者: ringonome

未曾有の高齢化が進む現在の日本、「認知症」を患う人も増えていきそうです。

現在、「認知症予備群」とされる「軽度認知機能障害」(MCI)まで含めると、65歳以上の28%は認知機能に問題があると推計されています。人数にするとおよそ1,000万人です [厚生労働省資料] 。

万国著作権条約にのっとり引用
万国著作権条約にのっとり引用

日本の人口が1億2千万強ですから、国民の12人に1人は認知症(予備群)という計算になります。そしてこの数字は、このままだと今後も増加を続けると考えられています [厚生労働科学特別研究事業報告書、5頁] 。

「認知症」になるリスクは下げられる

そのため、認知症をこれ以上増やさないよう、予防が重要になります。

認知症を減らしうる生活中の工夫についてはこれまでも、何本かの論文をご紹介してきました [記事末参照] 。

今回はそれに加え「フラボノイドが豊富な食事で認知症リスクが下がる」可能性を報告した、最新の論文をご紹介します [文末文献1] 。

フラボノイドはご存知の通り、ポリフェノールの一種です。

書いたのは、クィーンズ大学ベルファスト(英国)のエイミー・ジェニング博士たち。「米国医師会雑誌(JAMA)ネットワーク・オープン」という国際学術誌に掲載されました。掲載日は2024年9月18日です。

英国で「食事」と「その後の認知症発症」に関係があるか調査

今回ジェニング博士たちが調べたのは、英国在住の、40歳以上で認知症のない約12万人です(平均56歳)。観察開始時に質問票を使って飲食内容を調べ、その後に認知症を発症リスクとの関係を分析しました。

その結果、約10年間に認知症を発症した人は幸いなことに1%弱のみでした。

そして食事との関係を調べると、フラボノイド摂取の指標である「フラボダイエット・スコア」(高いほど摂取量は大)が増えるほど、認知症になる危険性は減っていたのです。

万国著作権条約にのっとり引用
万国著作権条約にのっとり引用

例えば、フラボダイエット・スコア別に各群同じ数になるよう5群に分けると、フラボダイエットスコアが最も高い群では最も低い群に比べ、認知症になるリスクは相対的に28%減少していました(0.72倍)。

さらに遺伝的に認知症になりやすい人たちだけで比べると、相対リスクは43%も減っていました。ほぼ半減です。

日本なら「日本茶にダークチョコ」?

またフラボノイドの種類によって、摂取増加に伴う認知症リスク減少率は異なっていることも分かりました。

認知症発症リスクの減少率が相対的に大きかったのは「フラボン」と「フラバノール」

前者は「セロリ、パセリ、ピーマン」、後者は「緑茶、果実類、カカオ」に多く含まれているとされています [公益財団法人長寿科学振興財団「健康長寿ネット」] 。

逆に、摂取量が増えても認知症リスクの低下が見られなかったのが「フラバノン」でした。果実の皮に多く含まれている成分なので、あまり食べる機会はなさそうですね。

ここから認知症になりにくい生活を日本人で考えるなら、日中は緑茶を飲んでおやつはダークチョコか果実晩ごはんにはセロリ(最近は粉末が売られています)やパセリを添える(時にはピーマンも)、といった感じでしょうか。

あまりハードルは高くなさそうですね。

残念ながらジェニング博士たちは、フラボノイドの豊富な飲食で認知症リスクが減ったのか、その仕組みには言及していません。しかし論文の最後で「フラボノイドに富んだ食事に変えれば認知症リスクが低下する可能性がある」と結論していますから、因果関係はあると考えているのでしょう。

認知症については次のような論文紹介記事も書いています。こちらもぜひ、ご覧ください。

またフラボノールについては次の記事もどうぞ。

今回も最後までお付き合いいただきありがとうございました。ではまた!

今回ご紹介した論文

  1. フラボノイドに富んだ飲食をする人は認知症になりにくい

本記事は医学論文の紹介です。データの解釈は論者により異なる場合もあります。またこの論文の内容を否定する論文が存在する可能性も皆無ではありません。あくまでも「参考」としてご覧ください。

医学情報レポーター

医療従事者向け書籍の編集者、医師向け新聞の記者を経てフリーランスに。15年以上にわたり新聞社系媒体や医師向け専門誌、医療業界誌、会員向け情報誌などに寄稿。近年では医師向け書籍も共著で執筆。国会図書館収録記事数は3桁(含筆名)。日本医学ジャーナリスト協会会員。

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