豚骨一筋のラーメン職人が 本気で挑んだ「町中華」とは?
自分の生まれ育った町に恩返しがしたい
豚骨ラーメンの聖地、福岡博多で連日行列を作る人気豚骨ラーメン店『博多一双』(本店:福岡県福岡市博多区博多駅東3-1-6/運営:株式会社EVORISE/代表取締役:山田晶仁)が、9月10日に新ブランド『味の喜び 福はこび 姪浜本店』(福岡県福岡市西区姪の浜4-11-23)をオープンした。
『博多一双』は2012年に創業するや否や、人気豚骨ラーメン店がひしめく博多で一躍人気店の仲間入りを果たしたラーメン店。熟成した豚骨スープの上に出来る「脂泡」を福岡で最初にラーメンに浮かべた先駆者。スープの上の泡によって旨味が広がり口あたりがマイルドになる、今までになかった豚骨ラーメンは「豚骨カプチーノ」と呼ばれて人気を集めている。現在は福岡市内に3店舗を展開し、今回4店舗目にして新たなブランドを立ち上げた。
これまで博多や中洲など市街地に出店していたが、今回出店する姪浜という場所は、店主の山田晶仁さんが育った「地元」。そんな地元の町に「恩返し」がしたいという思いから、姪浜での出店を決めたという。
「今回出店する姪浜は僕が育った地元で、小中学校と青春時代を過ごした思い入れのある大好きな町なんです。この店がある通りが店も少なくちょっと寂しいので、僕がお店を出すことでこの町が元気になって、地元の方にも喜んで頂けたら良いなと思って出店を決めました」(福はこび 店主 山田晶仁さん)
慣れ親しんだ豚骨を封印した理由とは?
18歳の時から豚骨ラーメン店で修業を重ね、自身の店『博多一双』でも豚骨ラーメンを作り続けてきた山田さんだが、今回の新ブランド『福はこび』では、豚骨ラーメンは出さずに醤油ラーメンと塩ラーメンを提供する。なぜ得意な豚骨ラーメンを封印したのだろうか。
「まずは自分の創作意欲です。自分が食べたい、自分が作りたいと思う醤油ラーメンと塩ラーメンで勝負がしたかったというのがあります。また、今のコロナ禍の中でお持ち帰りやデリバリーなど、家でラーメンを食べたいという需要の高まりを感じていましたが、一双の豚骨ラーメンだとお店と同じ味や品質を保つのが難しいことがありました。今回の醤油と塩は、家で食べて頂いてもお店のクオリティに負けない美味しいラーメンになっていると思います」(山田さん)
コンセプトは地域密着型の「町中華」
今回の『福はこび』のコンセプトは、地域密着型の古き良き「町中華」。懐かしいのに新しい、ネオノスタルジックなラーメン食堂を目指した。これまでの『博多一双』は、ラーメン職人が気合を入れて作っているイメージの店だったが、今回の『福はこび』は、地元で長年愛されていた老舗の町中華の店舗を改装し、懐かしさと温かみのあるアットホームな雰囲気が感じられる。
ラーメンは醤油と塩の2種類。看板メニューの「醤油ラーメン」は「誰もが懐かしさを感じる今までにない醤油ラーメン」を目指して作り上げたもの。鶏と豚、野菜をふんだんに使用した旨味と香りあふれるスープに、明治29(1896)年創業の老舗醤油蔵『ヤマタカ醤油』の「本醸造濃口 再仕込み」を使った、濃厚で熟成感のあるオリジナル醤油ダレを合わせた。麺は福岡の人気製麺所『製麺屋慶史』に特注したオリジナル中太麺。12日間熟成させることで、歯切れの良さとモチモチ感を併せ持った、存在感のある力強い麺が完成した。
「強いスープに強い麺を合わせたインパクトのある一杯」を目指したという『福はこび』のラーメンで、特徴的なのはその製法だ。通常の醤油ラーメンは、丼の中にタレを入れてそこにスープを注ぐが、『福はこび』では注文を受けるごとに一杯ずつ中華鍋でスープとタレを合わせて仕上げることにより、スープとタレの一体感が増し、熱々で今までにない奥深さのある一杯になった。この製法は塩ラーメンでも同様だ。
他にも卵をたっぷり使い、強力な火力と特製のタレで仕上げた「焼飯」や、毎日店で手包みして、野菜の甘さと肉の旨味が口いっぱいに広がる「餃子」。さらに鹿児島産の鶏ムネ肉を使ったオリジナルの「唐揚げ」など、親しみやすいメニューが揃う。そしてどれもテイクアウトやデリバリーに対応している。
豚骨ラーメンの人気店が挑む「町中華」。手間暇をかけて丁寧に作るラーメンや焼飯など。それはどこか懐かしくもあり、他にはないオリジナリティある新しさもあった。福岡の豚骨にいち早く「泡」を浮かべたように、また福岡のラーメン界に新たな流れを作るラーメン店を生み出した山田さん。今後は『博多一双』同様に『福はこび』の店舗展開も視野に入れている。
「地元姪浜の皆様にはもちろんのこと、ラーメンを愛するすべての人たちに食べて頂きたい渾身の一杯が出来ました。テイクアウトやデリバリーもかなり意識して商品を作りましたので、お店だけではなくご自宅でもお楽しみ頂けるかと思います。ぜひ一度足をお運びください」(山田さん)
※写真は筆者によるものです。
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