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コーヒー「1日4杯超」で脳卒中リスクが36%上昇。2万7千人データで明らかに【最新情報】

黒澤恵(Kei Kurosawa)医学情報レポーター

コーヒーを飲み過ぎると脳卒中のリスクが上がる?

日本にもいつの間にかコーヒーショップが増え、手軽に美味しいコーヒーを飲めるようになりました。コンビニでも買えますね。仕事をしながら飲まれている方も多いでしょう。

でもご用心。飲み過ぎると「脳卒中」を起こすリスクが上がるかもしれません。

今回はそんな最新論文をご紹介します。

書いたのはゴールウェイ大学(アイルランド)のアンドリュー・スミス氏たち。「国際脳卒中雑誌」という学術誌で6月18日、オンラインで公開されました [文末文献1] 。

日本における「寝たきり」の4人に1人は「脳卒中」が原因

その前に簡単に、「脳卒中」のおさらいをしておきましょう(面倒な人は次項に飛んでください)。

脳卒中とは、脳に血液を送っている血管が「詰まった」、あるいは「破れた」結果、脳の細胞が血液(酸素や栄養)を受け取れずに死んでしまう病態です(基本的に血管の病気)。

死んでしまった脳細胞は生き返らないので、その分、脳の機能も低下します。生存に欠かせない働きを担っている部分がダメになれば患者さんは死亡してしまいますし、生き残っても脳の機能低下に応じた「障害」が残る場合が少なくありません。

残念なことに日本では、現在「寝たきり」になってしまった方の4人に1人は、脳卒中が原因です(厚生労働省「2022(令和4)年 国民生活基礎調査の概況」)。

非常に残酷な病気だと言えるでしょう。

「1日4杯超」のコーヒーで脳卒中リスクが約1.4倍

さて、そこで本題です。

先に挙げたスミス氏たちは、初めて脳卒中を発症した患者さん1万4千人弱と、ほぼ同数の脳卒中未発症者の間で、コーヒーを飲む頻度を比べました。この人たちはアジアを含む世界32カ国からピックアップされています。

するとコーヒーを「1日4杯超飲む」と「飲まない」場合に比べ、脳卒中を起こすリスクが相対的に37%高くなっていたのです(1.37倍)。

一方、それ以下の杯数ならば、脳卒中リスクに影響はありませんでした。

この結果は、「コーヒーの杯数」以外の要因(タバコなどなどの生活習慣等)が脳卒中発症に与える影響を、統計学的に取り除いた後の数字です。

もちろん、「コーヒーを多飲する人に共通する何かが脳卒中になる危険性を上げている」可能性も考えられます。しかしスミス氏たちは「コーヒー多飲」そのものが脳卒中リスクだと考えているようです。

「適量のコーヒーは脳卒中リスクを減らす」という報告も

似たような数字は、英国在住の約36万人を観察した研究からも報告されています(2021年) [文末文献2]

そちらではコーヒー「1日7杯以上」で脳卒中の危険性が上がるという結果でした。

しかしこの観察からは、コーヒー好きには嬉しい逆のデータも。

それはコーヒー「1日5杯くらい」までなら「飲まない」に比べ脳卒中のリスクは低い——というものです。

(本題とは関係ありませんが、紅茶の国である英国でこれほどコーヒーが飲まれているのは驚きでした)

さて日本人でも、同じようなデータが報告されています。報告したのは国立循環器病研究センターの小久保喜弘氏たち。脳卒中研究では世界最高レベルである「脳卒中」という学術誌に、2013年、掲載されました [文末文献3]。

同氏らは8万人以上を平均13年間も観察し、コーヒーを飲む回数が「1週間に3〜6回」ならば飲まない場合に比べ、脳卒中を起こすリスクが低いことを見出しました。

まとめ

いかがでしたか?

過度のコーヒー摂取は脳卒中リスクを高めるかもしれないが、適度であれば逆にリスクは減るかもしれないという論文のご紹介でした。

3つの論文をあわせて考えると、やはり「多くても1日4杯、そしてたくさん飲んだ翌日は少し控えめ」くらいが正解かもしれません。

嗜好品と健康については次のような論文紹介記事も書いています。こちらもぜひ、お読みください。

今回も最後までお付き合いいただきありがとうございました。ではまた!

今回ご紹介した論文

1日コーヒ摂取量が4杯を超えると脳卒中リスクが約1.4倍に

1日5杯くらいまでのコーヒーなら脳卒中リスクは低下

日本人は1週間「3〜6杯」のコーヒーで脳卒中リスク低

本記事は医学論文の紹介です。データの解釈は論者により異なる場合もあります。またこの論文の内容を否定する論文が存在する可能性もゼロではありません。あくまでも「参考」としてご覧ください。

医学情報レポーター

医療従事者向け書籍の編集者、医師向け新聞の記者を経てフリーランスに。15年以上にわたり、新聞社系媒体や医師向け専門誌、医療業界誌、会員向け情報誌などに寄稿。近年では医師向け書籍も共著で執筆。国会図書館収録記事数は3桁。日本医学ジャーナリスト協会会員(含筆名)。

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