女優がセルフで自らのヌードを撮る。その集大成となった写真集と写真展を経て気づかされた自分
女優、ナレーターとして活躍する花澄(かずみ)。
映画、舞台、テレビ、ラジオなど幅広いフィールドを活動の場にする彼女だが、実はもうひとつ、写真家という顔がある。
ある日、カメラを手にしてファインダーを覗いた瞬間から「見える世界がかわった」と語る彼女。
そこから「撮られる側」から「撮る側」へ。写真家としての歩みを始めた。
そして、2年間撮り続けたセルフポートレートから厳選した作品をまとめた写真集「Scent of a...」(セント・オブ・ア...)が完成。これは、女優自らが写真家として、自らのヌードを撮り、ひとつの作品にまとめた、これまで例のないかもしれない写真集になる。
この写真集の完成とともに現在写真展を開催中。さらに初の主演映画「百合の雨音」も公開がスタートした。
これまで今回の写真集発表と写真展開催までの過程を訊くインタビューを連載したが、今回からは裏エピソードをまとめた番外編。
セルフでの自身のヌード撮影と同じように、実はこちらも1人でなにからなにまで手掛けた写真集と写真展の舞台裏について訊く。(番外編全二回)
『えっ? デビュー戦なのに、あそこで1カ月もやれるの?』と
前回(番外編第一回はこちら)の話の中では、写真集と写真展をひとりで手掛けることになった経緯が明かされた。
写真集に関しては、編集者にどういう実務作業がアドバイスを受け、『自分でもできるかも』と思ったとのこと。
一方で、写真展はどうだったのだろうか。会場を含めこちらも大変だったと思うが?
「これもほんとうにありがたいことなんですけど、まずハービー(山口)さんがいくつか会場をご紹介してくださいました。
その中で、北村写真機店さんがとりわけ興味を示してくださったといいますか。
北村写真機店さんはオールドレンズに注力していて、ライカのビンテージのオールドレンズもいっぱい取り扱っている。
で、今回のわたしの写真というのはライカのオールドレンズを使ってのもの。
ということで『作品としてはもとより、(オールドレンズでは)こんな写真が撮れるというデモンストレーションとしてもすごいいい展示になりそう。ぜひうちでやってください』と申し出てくださったんです。
時期も初主演映画の『百合の雨音』の公開に合わせてで『いいですよ』とおっしゃってくださって、ほんとうにありがたかったです。
いや、あとになってわかるんですけど、デビュー戦ともいえる写真展を、北村写真機店さんでしかも1カ月にわたってできるというのは異例で。
写真誌や写真界隈の人たちがびっくりしていました。『えっ? デビュー戦なのに、あそこで1カ月もやれるの?』と。
その声を聞いて、わたしとしては気を引き締めたというか。
きちんとした作品を展示できるようにベストを尽くさないといけないと思いました」
その写真展は10月23日をもって会期終了。会場では、これもコロナ禍に制作した監督・主演、撮影、音楽、編集まですべてを手掛けた短編映画「夢一夜」も披露された。
「夏目漱石の『夢十夜』からの一編『第一夜』を映像作品にしました。
ファンタジックな作品なので、オーガンジーの布を重ねて、そこに投影するかたちで会場に繰り返し映し出すようにしました。
実は、この映像作品もセルフでの撮影にもつながっているんです。
この短編作品を撮るときに、たとえばカラーフィルムといった美術の材料や小道具をけっこう入手したんです。おもちゃのプラネタリウムやペンライトなどはとても役立ちました。
それから照明もあっちから照らすとこうなるとか、けっこう実践しながら体得していたんですね。
それで、『こういう写真を撮りたいな』となんとなくアイデアが出てきたら、『あの道具とあの道具を使えばそれいけるかも!』となることがあって。
だから『夢一夜』の撮影時に入手したものをけっこう写真撮影のときに使っているんです。
それから照明も検証していたので、『この角度ならこの照明の当て方かな』とか想像できるところがあった。
そういうこともあったので、今回の写真展ではこの短編も上映することにしました」
わたしは能動的な性格なんだと気づかされた
いま写真集と写真展を手掛けてみて、こう振り返る。
「内容的にも個人としても、おそらく誰かにコントロールされる類の作品ではないなと、自分でも感じたから、なにからなにまで『ひとりで』となったんですけど、自分にとって大きな体験になったことは間違いないです。
もちろん、大変でないといったら嘘になる(苦笑)。
でも、大変なんですけど、うまくいかなくて悩むことはあっても『投げ出したい』とか『もう無理』と思うことは一度もなかった。
それはやはり、『やらされている』からではなく、『自分でやりたくてやっている』からというのが大きかった気がします。
わたしの気持ちが受動的ではなく、能動的だった。
そこで改めてわたしは能動的な性格なんだと気づかされたというか。
俳優ってどちらかというと受動的になりがちなんです。求められたことに応えようしてしまうことが多い。
もちろん求められた期待に応えることは大切だとわたしも思います。
ただ、そういう中でも、能動的に役に取り組むことはできるし、誰かに言われて動くのではなくて、自分から率先して提示できることもある。
そういうトライをもっともっとしてもいいのではないか。
今回の写真集や写真展のように、ほかのお仕事でも自分を信じて思い切ったチャレンジをしてもいいかもしれないと、今回の経験は教えてくれたところがあった。
それで、そういう気持ちをもって、ロマンポルノの初主演映画『百合の雨音』のも臨めたところがありました。
もちろんデリケートなところはあるんですけど、気持ちとして積極的に取り組むことができた。
それはこの写真での経験があったからだと思います。
邪でないならば、きちんとアートまで昇華させようとやってきていたので、カメラと写真との出合いに感謝しています。
これからも『美』というところにはフォーカスして撮っていきたいです。
ライフイズビューティフルという考えが根っこにはあるので、もっと広い、いろんな角度からの美しさを、わたしというフィルターを通して伝えていけたらなと思っています」
(※写真集と写真展についてのインタビューは終了。次回から映画『百合の雨音』についてのインタビューを続けます)
写真集「Scent of a...」(セント・オブ・ア...)
A4変形ハードカバー64頁
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写真集に関する最新情報はこちら
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「百合の雨音」
監督:金子修介
出演:小宮一葉、花澄 / 百合沙、行平あい佳、大宮二郎 / 宮崎吐夢
ヒューマントラストシネマ渋谷ほか全国順次公開中!