セルフで臨んだ自らのヌード撮影。「最初は自分の裸体で目指す写真が撮れると想像できなかった」
女優、ナレーターとして活躍する花澄(かずみ)。
映画、舞台、テレビ、ラジオなど幅広いフィールドを活動の場にする彼女だが、実はもうひとつ、写真家という顔がある。
ある日、カメラを手にしてファインダーを覗いた瞬間から「見える世界がかわった」と語る彼女。
そこから「撮られる側」から「撮る側」へ。写真家としての歩みを始めた。
そして、先日、2年間撮り続けたセルフポートレートから厳選した作品をまとめた写真集「Scent of a...」(セント・オブ・ア...)が完成。これは、女優自らが写真家として、自らのヌードを撮り、ひとつの作品にまとめた、これまで例のないかもしれない写真集になる。
この写真集の完成とともに先月23日(金)からは、こちらも自身で手掛ける写真展<「Scent of a...」(セント・オブ・ア...)>の開催がスタート。10月には初の主演映画「百合の雨音」の公開も控える花澄に、カメラを手にしたきっかけから、今回の写真集発表と写真展開催までを訊く。(全五回)
自分で自分のヌードを撮るという好奇心と、
写真への探求心が自分の心の中に湧き上がってきた
前回(第二回)の最後で2019年に<ソール・ライター写真展 “SAUL LEITER – NUDE”>をきっかけに、自身のヌード撮影に初めて取り組んだことを明かした花澄。ソール・ライターのヌード写真をみたときに「こういう写真を自分も撮りたい」と思うと同時に「こういうヌードならばわたしも撮れるのではないか」と思ったと語った彼女だが、そのときの衝撃は「創作への衝動」に直結したと明かす。
「ソール・ライターの写真は以前から好きで、ほかの写真展にも行っているんです。
ただ、これまでみてきた彼の写真と、<ソール・ライター写真展 “SAUL LEITER – NUDE”>のヌード写真はまったく違う世界を見せてくれたというか。
いい意味で、素朴でシンプル。装飾がない。それこそ手の込んだ装飾を施したセットを組んで、ガチガチに構図を決めて、というヌード写真がよくありますけど、そういうものとはまったく違う。
ひとつの風景の中にひとりの人間が佇んでいて、前回お話しした通り、一枚の絵画のようで。
ヌード写真にふつうならばつきまとういやらしさがない。
ひとつの美しいものをみたときと同じ感動を覚えたんです。
で、『これならば自分でも撮れるかもしれない』と僭越ながら思った(苦笑)わけですけど、そう思ったのには理由があって。
わたし自身が写真で切り取ろうとする『世界』や『美』と、遠くない感覚があったんです。
それで『あれ? これならば撮れるかもしれない』という気持ちが自分の中に生まれた。
それは同時に自分の創作意欲を直接的に大いに刺激するものでもあって。
いまカメラが手元にある。いままで自分にカメラをむけたことはない。その未知の領域へトライしてみて、『ソール・ライターのようなヌード写真が撮れないか?』といったことが頭を巡って、自分で自分のヌードを撮るという好奇心と、写真への探求心が自分の心の中に湧き上がってきた。
それで、ホテルに戻ってすぐヌード撮影に取り組むに至ったんです。それぐらい創作意欲へとつながる衝撃を受けました」
自分の裸体で自分の目指す写真が成立するとは想像できなかった
そのとき、『けっこう納得のいく写真が撮れた』と前回明かしているが、そのときの心境をこう明かす。
「もう見よう見まねでしたけど、自分でも不思議なぐらい手ごたえのある写真になったんです。で『意外と成立するもんだな』と(苦笑)。
正直なことを言うと、自分の体についてはコンプレックスだらけで。当初は、自分の裸体で自分の目指す写真が成立するとは想像できなかった。
ただ、ヌード写真ではなく一枚の絵として見ると、『意外と成立してんじゃん』と素直に思えたんです。
これは自分でもびっくりしたし、ひとつ自分の写真の領域が広がったところもありました。
新たな発見があって自分の好奇心もみたす撮影になって、『これはおもしろい!』と思いました。
けど、撮影のすべてをなにからなにまで自分でやらないといけない、根気のいる作業でもある。
なにしろわたしが愛用しているLeica M10-P は、オートフォーカスがついてないので、ピントを合わせるだけでも、一苦労どころの話じゃないんです。さらにふわっと写るオールドレンズなので、本当に合っているかも分かりづらい。
ですから、そうそうできるものでもないなとも思いました」
2年間も、ヌードも含めてわたし自身を撮り続けることになるとは
ゆえに、その時点では、このあと自身の手で自らのヌードを撮影し続けていくことは考えていなかったという。
「ここから2年間も、ヌードも含めてわたし自身を撮り続けることになるとは思っていませんでしたね。
ただ、ここからわたしが(カメラで)切り取る世界に、わたし自身も含められたらとの思いが芽生え始めたのもまた確かでした」
その後、自身にカメラを向け続ける大きなきっかけになったのは、コロナ禍だという。
「<ソール・ライター写真展 “SAUL LEITER – NUDE”>に足を運んだのが2019年の年末でしたから、そこから数カ月後、コロナ禍に入って、当時、役者はみなさんそうだったと思いますけど、わたしもほとんどの仕事がいったん白紙になってしまいました。
決まっていた映画の撮影は延期の連続で、舞台も4作品ぐらいとんでしまいました。
人と自由に会うこともできず、ひとり部屋にこもるような日々が続いていく。
悶々とした時間が過ぎていく中で、わたしにひとつの光を与えてくれたのが『カメラ』でした。
カメラがあって、自分という人間は存在している。『じゃあ、自分で自分を撮って、わたしの世界を創造すればいい』と前を向けた。
そこから、自分自身という人間と対峙して、ヌードも含めて、自分を撮り続けることになりました」
(※第四回に続く)
写真集「Scent of a...」(セント・オブ・ア...)
A4変形ハードカバー64頁
価格:5500円(税込)
写真展会場とオンラインショップで販売
オンラインショップはこちら → https://kazumiphoto.base.shop/
写真集や写真展に関する最新情報はこちら
→ https://kazumi-photo.com/news/
<花澄写真展「Scent of a…」(セント・オブ・ア)
〜わたしが、わたしを、うつす〜>
期間:10月23日(日)まで
時間:10:00~21:00(※店舗営業時間に準ずる)
入場無料
場所:新宿 北村写真機店 6F Space Lucida
写真はすべて(C)2022 KAZUMI PHOTOGRAPHY. All Rights Reserved.