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自身で自らのヌードも撮り、ひとつの作品に。女優で写真家、花澄が写真集発表&写真展開催へ

水上賢治映画ライター
写真集「Scent of a...」(セント・オブ・ア...)より

 女優、ナレーターとして活躍する花澄(かずみ)。

 映画、舞台、テレビ、ラジオなど幅広いフィールドを活動の場にする彼女だが、実はもうひとつ、写真家という顔がある。

 ある日、カメラを手にしてファインダーを覗いた瞬間から「見える世界がかわった」と語る彼女。

 そこから「撮られる側」から「撮る側」へ。写真家としての歩みを始めた。

 そして、先日、2年間撮り続けたセルフポートレートから厳選した作品をまとめた写真集「Scent of a...」(セント・オブ・ア...)が完成。これは、女優自らが写真家として、自らのヌードを撮り、ひとつの作品にまとめた、これまで例のないかもしれない写真集になる。

 この写真集の完成とともに23日(金)からは、こちらも自身で手掛ける写真展<「Scent of a...」(セント・オブ・ア...)>の開催がスタート。10月には初の主演映画「百合の雨音」の公開も控える花澄に、カメラを手にしたきっかけから、今回の写真集発表と写真展開催までを訊く。(全五回)

写真集を完成させるとともに写真展を開催する花澄
写真集を完成させるとともに写真展を開催する花澄

舞台公演千秋楽後、襲われる大きな喪失感

そこから立ち上がろうとカメラを手に

 はじめに本人に訊くと、カメラを最初に手にしたときのことをこう振り返る。

「自分でも『芝居バカなのではないか?』と思うぐらい、毎回、舞台の千秋楽を終えると燃え尽きてしまう(笑)。

 すべて出し切って空っぽになってしまうんです。

 舞台って映画やドラマとは違って細切れではないというか。

 映画やドラマはたとえば、撮影期間のうち役によっては1日だけの撮影ということもある。

 撮影自体も当然ですけど、その物語を構成する場面をひとつひとつ撮っていく。

 対して舞台は稽古からゲネプロ、そして本公演と、ある一定の期間、スタッフも出演者も一緒で大所帯で濃密な時間を共有するところがある。

 濃密な体験であるがゆえに、終わると抜け殻のようになって、明日から『わたしは何をすればいいの?』みたいな状態になるんです。

 中でもとりわけ大きな喪失感に襲われたのが、2015年に俳優座劇場での『四谷怪談』のときで。

 この舞台というの稽古から本番、千秋楽に至るまで多幸感に包まれていた。

 ほんとうにずっと幸せを感じていたので、終わったとき、昨日までみんな一緒に同じ道を歩んでいたのに、急にひとりになってその先がすとんとなくなってしまっているような気持ちになりました。

 誰もいない部屋にひとりいると、気が滅入る。どうにか自分を奮い立たせようとするんですけど、どうしていいかわからない。

 そこで、なにかしないと、自分がダメになるなと思って。ちょうど誕生日が近かったので、自分へのご褒美じゃないですけどカメラを買ってみようとふと思ったんです。

 これが初めてカメラを手にするきっかけでした」

写真集を完成させるとともに写真展を開催する花澄
写真集を完成させるとともに写真展を開催する花澄

カメラを買おうと思ったのは、写メがきっかけかも

 でも、なぜカメラを買おうと思ったのだろうか?

「もうその昔になってしまいますけど、スマホの前ですけど、携帯電話で写メを撮るのが大好きだったんですよ。

 ちょうどそのころブログが全盛期で。写メをとって文章を書いてブログにあげていたんです。あるブログランキングで1位をとったこともあるんですよ(笑)。

 それぐらいやっていたんですけど、その写メをほめられることが多くて。お世辞もあったと思うんですけど、けっこういろいろな人に『写真をやってみたら』と言われたことがあるんですよ。

 そのときは、自分が写真を撮るようになるなんてまったく考えていなかったんですけど、振り返ってみると、写メのときからたとえば光の当たり具合とか構図とかすごく考えることが好きだったんですよね。

 だから、このときから『カメラ』が視野には入っていた。

 それがあって、その誕生日のときに『カメラを買ってみようかな』となった気がします」

カメラを手にした瞬間、色褪せた世界が色鮮やかに

 カメラを手にしたときから、その虜になったという。

「(カメラの)スイッチの入れ方さえ、最初はわからなかったんですよ(苦笑)。

 いろいろと調べて検討の末に、あるカメラを入手して帰ったんですけど、ファインダーをのぞいてみると、その帰り道、駅から自宅まで向かう道がまったく違った風景に見える。

 さきほど話したように、当時、舞台で燃え尽きていたわたしは、ほとんど見えるものがすべて色褪せていてモノクロに見えていた。

 でも、カメラ越しにみたら、すべてが輝いてみえるというか。ありふれた日常がすごい華やいだものであふれていることに気づいた。

 そこかしこに写したいものがあるんです。ちょっと道端に咲いている一輪の花をみてもうれしくなるし、ちょっとかわった形の雲があってもうれしいし、子どもの背中をみててもうれしい。

 色褪せた世界に見えていたものが色鮮やかな世界に見えるようになりました。カメラがわたしの色のなくなった世界に彩りを取り戻してくれたんです。

 そこからもうカメラはわたしにとって最高の相棒で、どこにいくにも持ち歩いて、写真を撮るようになりました」

(※第二回に続く)

写真集「Scent of a...」(セント・オブ・ア...)表紙
写真集「Scent of a...」(セント・オブ・ア...)表紙

写真集「Scent of a...」(セント・オブ・ア...)

A4変形ハードカバー64頁

価格:5500円(税込)

写真展会場で販売

<花澄写真展「Scent of a…」(セント・オブ・ア)〜わたしが、わたしを、うつす〜>より
<花澄写真展「Scent of a…」(セント・オブ・ア)〜わたしが、わたしを、うつす〜>より

<花澄写真展「Scent of a…」(セント・オブ・ア)

〜わたしが、わたしを、うつす〜>

期間:9月23日(金・祝)~10月23日(日)

時間:10:00~21:00(※店舗営業時間に準ずる)

入場無料

場所:新宿 北村写真機店 6F Space Lucida

「Scent of a…」写真展&写真集刊行 スペシャルトークショー>ビジュアル
「Scent of a…」写真展&写真集刊行 スペシャルトークショー>ビジュアル

<「Scent of a…」写真展&写真集刊行 スペシャルトークショー開催決定!>

登壇:花澄/ハービー・山口

9/24 14:00~@新宿 北村写真機店 6F Space Lucida

定員15名、先着整理券制 

※当日13時より整理券配布

北村写真機店YouTubeアカウントより配信あり

写真はすべて(C)2022 KAZUMI PHOTOGRAPHY. All Rights Reserved.

映画ライター

レコード会社、雑誌編集などを経てフリーのライターに。 現在、テレビ雑誌やウェブ媒体で、監督や俳優などのインタビューおよび作品レビュー記事を執筆中。2010~13年、<PFF(ぴあフィルムフェスティバル)>のセレクション・メンバー、2015、2017年には<山形国際ドキュメンタリー映画祭>コンペティション部門の予備選考委員、2018年、2019年と<SSFF&ASIA>のノンフィクション部門の審査委員を務めた。

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