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「男は男らしくあるべき」という意識の有無で恋愛できる割合は3倍も差がある

荒川和久独身研究家/コラムニスト/マーケティングディレクター
(写真:アフロ)

国際男性デーに寄せて

11月19日は、毎年「国際男性デー(IMD; International Men's Day)なのだそうである。だからというわけではないのだが、丁度1年前もこういう記事を出している。

「男は男らしくあるべき」という規範と「生きづらさ」と「結婚」の行方

今回はそれの1年越しの続編である。

前回は、「男は男らしく、女は女らしくすべきだ」という男女性別規範の有無で、配偶関係が変わるかどうかというデータを出した。結果からいえば、「男らしくすべき・女らしくすべき」という意識が強いほど未婚率は低い、つまり、結婚している割合が高いことを述べた。

今回は、結婚ではなく、恋愛においてこの「男らしさ・女らしさ」の意識はどう影響を与えているだろうか、についてである。

「男らしく・女らしく」別の恋愛率

私のラボで継続的に調査している「恋愛未経験者率=未恋率」の2020年のデータをご紹介したい。「男は男らしく、女は女らしくすべきである」という質問に対して、その賛否を5段階別に分けて、それぞれの「今まで一度も恋愛をしたことがない割合」を出した。何を「男らしさ」「女らしさ」と定義するのかは回答者の自由である。

結果は御覧の通りである。

男性に関していえば、「男らしくあるべきだ」という意識が強ければ強いほど、恋愛未経験率は低い。つまり、恋愛をしている割合が多いということになる。

40-50代はそれほど大きな変化はないが、20-30代、特に20代に関しては、「男らしくあるべきだ」という男の未恋率が12%であるのに対し、「男らしくなくていい」という男の未恋率が40%を超えているという大きな格差がある。単純に3.3倍差だ。男の恋愛に関して、この「男らしくある」という意識はこれほど大きな違いを生むのである。

この未恋率の差が、1年前の記事でもご紹介した未婚率の差としてそのまま踏襲されていくのだろう。

一方で、女性の方は、「女らしくあるべきだ」という意識の違いで、10%→20%と2倍の開きはあるものの、男性ほどの大きな格差ではない。何より、女性の方は、年代別での違いもほぼない。

しかし、男女で共通しているのは、「男らしく・女らしくあるべき」と強く思う層は、男女とも10%しか未恋率がない。つまり、9割は恋愛しているということになる。

写真:アフロ

有害な男らしさ?

とかく「男らしさ」とか「女らしさ」みたいな規範を、有害であるとか古臭いとかいう論説もあるが、誰にとっての有害なのか、によっても判断は変わる。有害と感じる人もいればそうではない人もいるだろう。有害どころかそれを必要とする人もいる。また、場面によっても変わる。ましてや、国や民族や時代によっても当然違う。普遍的な有害さなど存在するのだろうかと思うわけである。

何をもって「男らしい」「女らしい」とするのかについては、時代環境によっても、それぞれの人の価値観によっても違いはあるだろう。

が、少なくとも、「男らしさ」を強くアピールできない男性は恋愛相手を見つけることはできていないようであるし、女性側からすれば「男らしくない」男はパートナーとして選びたくないということの表れかもしれないことも事実である。

狩猟社会においては、大きな獲物を獲得できる体力が求められたかもしれないし、戦乱の時代においては、戦闘能力を求められたかもしれない。現代における戦闘能力という観点でいえば、それは「お金を稼ぐ能力」と言えるかもしれない。

いずれにしても、動物の世界を見てもわかるように、大抵雄は雌に選ばれる存在である。選ばれるために、必死にアピールする側が雄である。オーディションされるのはいつも雄のほうなのである。それでなくても日本では未婚男性は430万人も余っているのだから

未婚男性の「男余り430万人」の実態~もはや若者ではなくおじさん余りへ

ダチョウの「男らしさ」

ダチョウの話をしよう。

雄は群れに属さず、何百キロも歩いて、雌の群れを探すそうである。

さんざん探しても一向に出会えずにそのまま野垂れ死ぬ場合もある。出会えたとしても、群れの雌のリーダーの試験に合格しないといけない。

その試験とは、まずは走って雌を追いかけることだ。雄はすでに何百キロも歩いて、すでに体力も消耗しているが、それでも雄は懸命に走ってアピールする。これは雌にとっては体力テストだからだ。

それに合格すると今度はダンスのテストがある。ここでも雄は一生懸命にダンスをし、自分が健康であることをアピールする。徹底的に体力や健康面をチェックされるのは、雌にとっては雄そのものよりも、その遺伝子が大事だからである。

写真:イメージマート

それらの試験を経て、認められてはじめてようやく交尾ができるのだ。その場合、リーダーの雌だけではなく、その群れ全体の雌と交尾して複数の卵の父親となれる。一夫多妻である。

卵をあたためて育てるのは母親だが、外敵がきたときに守るために敵と戦うのは雄の役割だ。徹頭徹尾、体力を求められる。ダチョウにとっての「男らしさ」とは体力なのだろう。

ダチョウに限らず、動物の世界ではよくある光景である。人間もまた動物でもある。そもそも、恋愛など頭の中で理屈をこねまわすことではない。恋愛とは脳のバグであり、冷静に考えていられるようならそれは恋愛ではない。

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独身研究家/コラムニスト/マーケティングディレクター

広告会社において、数多くの企業のマーケティング戦略立案やクリエイティブ実務を担当した後、「ソロ経済・文化研究所」を立ち上げ独立。ソロ社会論および非婚化する独身生活者研究の第一人者としてメディアに多数出演。著書に『「居場所がない」人たち』『知らないとヤバい ソロ社会マーケティングの本質』『結婚滅亡』『ソロエコノミーの襲来』『超ソロ社会』『結婚しない男たち』『「一人で生きる」が当たり前になる社会』などがある。

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