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「加点方式」か「減点方式」か?男女で違う「人を好きになったり、嫌いになったりする方式」の差

荒川和久独身研究家/コラムニスト/マーケティングディレクター
(写真:アフロ)

人を判断するときの思考の癖

対人関係において、他人を「加点方式」で見る人と「減点方式」で見る人がいる。

「加点方式」とは、相手の良い面を見たらそれをプラスとして加点していく考え方で、「減点方式」とは、逆に相手の悪い面をみたらそのたびにマイナスしていこうという思考の癖である。

「加点方式」だと相手は常にプラスをされていくだけなので、最悪でも現状維持にとどまるが、「減点方式」は100点満点から始まって、常に減点され続けるので、持ち点が減ることはあっても増えることはない。やがては必ずだれもが0点になる。

いわば「減点方式」だけの人というのは、「人を嫌いになるために付き合っている人」のようなものだ。

勿論、人間は「加点か、減点か」どちらかしか判断できないというものではない。時と場合と相手によって「加点方式思考になったり」「減点方式思考になったり」と揺らぐものだが、どちらかの傾向に偏る強弱は存在する

加点方式思考の違い

さて、では、男女や配偶関係、年代において、この「加点方式思考」と「減点方式思考」に違いはあるのだろうか。男女年代別未既婚で調査してみた結果をご紹介したい。

まずは「加点方式思考」から。

未既婚の差より男女の差が顕著である。

男性より女性の方が全体的に「加点方式思考」割合が多い。が、女性も40代をすぎると男性と同等に下がり、50代ともなると男性を下回る。むしろ、男性は年代があがろうとも、その割合はほぼ一定である。

これは、女性に関しては若い20代の頃は、相手を「加点方式思考」のまなざしで見ていたものの、加齢とともに「減点方式思考」へと変換していくようにも見える。

加点というより、もしかして若いころは「恋愛感情によって、減点するという思考回路がバグった」からかもしれない。脳科学的には「恋愛は脳のバグ」だともいわれている。

未既婚問わず男性の「加点方式思考」が低いのは、別途調査で明らかになっている「男性の方が女性より人を褒めることが苦手」という傾向とも符合するかもしれない(その詳細については後日記事化する)。

ちなみに、未既婚で見ると、男女ともに中年以上で既婚の方が未婚より「加点方式思考」が高くなる。これは、子どもの有無にも関係するだろうか。

減点方式思考の違い

では、「減点方式思考」はどうだろう。

「加点方式思考」の結果から推論すれば、女性より男性の方が「減点方式思考」が多いのだろうか。

結果は以下の通りである。

予想に反して、「減点方式思考」も男性より女性の方が多くなった。

30代未婚女性が突出して「減点」意識が高いが、女性は未既婚問わず年代にもかかわらず一定して減点思考が多い。一方、男性は、20代未婚男性が高いものの、30代以降は未既婚とも20%以下で推移する。つまり、加点方式も減点方式も男性より女性の方が多いことになる。

写真:イメージマート

女性の見る目の方が厳しい

年代未既婚合わせて男女別に比較すると、「加点方式思考」は男21%に対して女27%、「減点方式思考」は男15%に対して女29%であった。加点・減点ともに女性の方が高いが、特に「減点方式思考」は女性が男性の2倍にもなる。女性の方が見る目が厳しい。

熱烈な恋愛の末に結婚して「幸せです」と周囲にSNSで笑顔をふりまいていた妻が、何年か後に一転して夫の悪口を言い始めたり、そのうち「顔を見るのも嫌」となって別居や離婚してしまうこともまた、この「減点方式思考」のなせる技かもしれない。

どんなに好きだった相手でも「減点方式」なら最終的に全員0点になってしまうからだ。減点方式の厳しいのは、たとえリカバリーしたところで減点もされないが加点もされないところだ。

そう考えると、家事育児をずっとやらなかった夫がたまにそれをやってドヤ顔したところで、妻からすれば「だからなんなの?」という話でしかないという、よくある夫婦の風景も納得がいく。

写真:イメージマート

目に入らないものは存在しない

人を好きになることも、嫌いになることも理屈ではない。加点してしまいたくなる気持ちも、減点してしまいたくなる気持ちもどうしようもないことでもある。

しかし、何をしても加点しかしない「恋愛のバグ」と同様、何に対しても減点しかしないという極端な思考もバグと言えるし、それに陥ると不幸である。加点もすれば減点もある。そうしたバランスが大事だろう。

とはいえ、男性が加点も減点もしないというのは、決して理性的なのでも、思考のバランスがよいわけでもなく、そもそも「他人の行動や言動をよく見ていないだけ」なのかもしれない。

街中には、看板など屋外広告にあふれているが、興味のない情報はたとえそこにあったとしても人の脳はないものとみなしてしまう。他の人にとって「存在する事実」も、興味のない人にとっては存在しないものになる。それと同じである。

男性諸君は、もっと近くにいる人をよく見て、敏感になった方がいいかもしれない。

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独身研究家/コラムニスト/マーケティングディレクター

広告会社において、数多くの企業のマーケティング戦略立案やクリエイティブ実務を担当した後、「ソロ経済・文化研究所」を立ち上げ独立。ソロ社会論および非婚化する独身生活者研究の第一人者としてメディアに多数出演。著書に『「居場所がない」人たち』『知らないとヤバい ソロ社会マーケティングの本質』『結婚滅亡』『ソロエコノミーの襲来』『超ソロ社会』『結婚しない男たち』『「一人で生きる」が当たり前になる社会』などがある。

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