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年収別男女の恋愛経験人数。「金がないから結婚できない」というが「金がないと恋愛もできないのか?」

荒川和久独身研究家/コラムニスト/マーケティングディレクター
(写真:イメージマート)

「金がないから…」というが

「最近の若者は、恋愛に消極的である。草食化どころか絶食化している」

油断するとすぐこうした「最近の若い者は…」と言いたがる人がいる。こうした中高年がいつの時代も出てくるのもまた変わらないのだが、恋愛に消極的なのは別に現代に限らず、昔も変わらない。

それはこの連載でも繰り返し、しつこいように述べていることだが、恋愛強者率は大体3割で一定だし、結婚に前向きな若者の割合も「男4割・女5割」で、少なくとも厚労省の統計の残る1980年代からまったくといっていいほど変わっていない。

未婚率が上昇したからといって、今の若者が恋愛離れしているわけではないし、昔の男女が必ずしも全員恋愛をしていたわけでもない。恋愛する割合は不思議と昔も今も変わらない。

デマではないが正しくない。「結婚したいが9割」という説のカラクリ

前回の記事で、「生涯未婚率」ならぬ、生涯一度も恋愛経験のない「生涯未恋率」を出した。男女とも生涯未婚者のうちの約8割が生涯一度も恋愛経験のない者であるという結果である。

生まれてから一度も恋愛相手がいたことのない「生涯未恋率」は男女それぞれ何%か?

こうした話をすると、必ず「高度経済成長期やバブル時代と今とでは経済環境が違う。給料が毎年右肩上がりに増えていた頃と30年間も平均給料が変わらない今とでは、若者が置かれた経済環境が違う」と言う人が出てくる。

写真:アフロ

確かに、経済環境は大きく変わった。若者に突き付けられた経済環境は以前と比べて厳しいものであることには異論はない。それだけではなく、今の40代の中年世代が直面する「45歳定年制」や「40代での早期退職」などのニュースなどが続くと、今の若者にしてみたら「今だけじゃないのか。あと20年も30年も同じ苦しみを味わうのか」と未来に対する絶望しか抱けなくなるのも無理はない。

「金がないから恋愛できない」ことはない

そんな経済環境の中では「とてもとても結婚なんて…」と思うのも致し方ない話である。結婚とは経済生活であり、「お金」の話を抜きにしては考えられないのも道理だ。

「金がないから結婚できない」という未婚男性たちの嘆きも、ある一面から見れば間違ってはいない。しかし、それは、あくまで結婚の話であって、恋愛とは関係ない。恋愛経験ができるかできないかには「お金」は関係ないのである。

年収別に平均恋愛経験人数を調査したデータがある。対象は一都三県の20代限定とした。「恋愛経験の有無関係なく全体の未婚」と「恋愛経験のない未恋者を除いた未婚」と「既婚者」の3者で比較したものが以下である。

(c)ソロ経済・文化研究所・荒川和久
(c)ソロ経済・文化研究所・荒川和久

恋愛経験ゼロを含む未婚者全体がもっとも恋愛経験人数が少ないのは当然だが、未婚者は、年収があがるほど恋愛経験人数が増えるという正の相関がみられる。未婚も既婚も年収700万円以上では恋愛経験人数はほぼ変わらなくなる。

恋愛力も「金次第」なのか?

20代で年収700万以上はなかなかの高収入である。絶対数は少ないが、700万も稼ぐ男であれば、未婚も既婚も5人程度の交際相手を得ることができるという見方もできる。

やはり、「恋愛だって金次第じゃないか」と思われるかもしれないが、既婚者の推移をみていただきたい。

既婚者は年収の多寡に関係なく(貧困者にあたる年収200万未満は別にして)、恋愛経験人数は常に一定であることがわかる。むしろ、200万円台の低所得者の方が恋愛経験人数は若干多いくらいだ。

2015年の実績ベースでいえば、結婚相談所を含む「お見合い結婚」比率は5%程度しかない。裏返せば、95%が「恋愛結婚」なのである。もちろん、この95%がすべて3割しかいない恋愛強者によって構成されているわけではない。恋愛強者と弱者との夫婦組み合わせも多いからだ(夫婦による強者と弱種の組み合わせパターンも調査済みなので、後日公開したい)。

話を戻せば、20代の既婚者である以上、なんらかの恋愛を経たうえでの結婚が多いはずである。これはつまり、結婚するような男性は、自分の年収とは関係なく、恋愛してしまうものなのである。年収など関係なく恋愛できてしまうのが「恋愛強者」なのだ。

未婚者が年収と比例して恋愛人数が増えていくのは、悲しいかな、それはあなたがモテているのではなく、あなたの年収がモテているだけなのかもしれない。

写真:イメージマート

女性の恋愛力も金は関係ない

もちろん、恋愛強者を礼賛するつもりもない。恋愛力の有無で人間の優劣が決まるものでもない。足の早い人がいれば遅い人がいる程度の差でしかない。

また、恋愛強者でありながら、稼ぐ力のない男もいる。そうした層は、いざ結婚となると破談になる場合もあれば、結婚したとしても「経済力不足を理由とした離婚」になるのかもしれない。結婚した途端、真面目に働き稼ぐようになるのかもしれない。それは個体差である。

ちなみに、女性の場合のデータも掲載しておく。

(c)ソロ経済・文化研究所・荒川和久
(c)ソロ経済・文化研究所・荒川和久

女性の場合は、男性より未既婚や年収に関係なく、ほぼ一定の恋愛経験人数があることがわかる。むしろ、800万以上稼ぐ20代女性だと年愛経験が少なくなる傾向がある。年収が高いほど恋愛できる男とは正反対の傾向である。

このように、結婚とは違って「金がないから恋愛できない」ということだけはないということである。

若いうちに「経験値」を積む

恋愛は年齢関係なくできるというかもしれないが、通常恋愛経験ができるのは男女とも若いうちだけである。出生動向基本調査によれば、恋愛結婚に至るカップルは25歳までに相手に出会っている。つまり、25歳までには、配偶者となる相手を含めて4~5人との恋愛経験があるということだ。「30歳から本気出す」では手遅れなのだと認識したほうがいいだろう。

「恋愛経験人数が多ければよいのか?」と疑問に思う人もいるかもしれないが、恋愛に限らず、何事も経験値が重要である。恋愛強者ほど恋愛に失敗した回数も多いものだ。

野球にたとえれば、彼らは三振の数は膨大なのだ。そのたびに恥もかくし、罵声も浴びるだろう。が、めげずに何度でも打席に立ち続ける。打席に立つ回数が多いため、結果としてヒットの数が多くなる。渾身の一打席を狙って、「あーでもない、こーでもない」とベンチ裏で悩んでいる恋愛弱者と違うのはそこだろう。

写真:アフロ

行動したって結果は見えているというかもしれないが、そういう人に限って、いきなり最初から150キロの球を打とうとしている。それは無謀だ。最初は70キロくらいの球を打ってからにしたい。

少なくとも行動しなきゃ何も始まらない。皆婚時代のように、もはや社会はお膳立てしてくれないのだから。

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独身研究家/コラムニスト/マーケティングディレクター

広告会社において、数多くの企業のマーケティング戦略立案やクリエイティブ実務を担当した後、「ソロ経済・文化研究所」を立ち上げ独立。ソロ社会論および非婚化する独身生活者研究の第一人者としてメディアに多数出演。著書に『「居場所がない」人たち』『知らないとヤバい ソロ社会マーケティングの本質』『結婚滅亡』『ソロエコノミーの襲来』『超ソロ社会』『結婚しない男たち』『「一人で生きる」が当たり前になる社会』などがある。

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