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この夏ラニーニャ現象発生へ 日本の猛暑、台風は?

片山由紀子気象予報士/ウェザーマップ所属
ラニーニャ現象が発生すると日本は猛暑になりやすい(提供:イメージマート)

 気象庁は10日、夏から秋にかけてラニーニャ現象が発生する可能性が高まったとして、日本への影響に注意を呼びかけました。

 ラニーニャ現象が発生すると、日本では太平洋高気圧の北への張り出しが強まり、夏は猛暑になりやすいことが知られています。

 また、台風にも影響します。発生する位置が平常時よりも北西にずれて、日本に近い海域で発生する傾向があります。

エルニーニョからラニーニャへ

 4月のエルニーニョ監視海域の海面水温の基準値との差はプラス0.8度と先月よりも大幅に下がり、一年ぶりに1.0度を下回りました。エルニーニョ現象は5月で終息する見込みです。

海面水温の平年偏差図(上図は2024年1月、下図は2024年4月)、気象庁エルニーニョ監視速報より、筆者加工
海面水温の平年偏差図(上図は2024年1月、下図は2024年4月)、気象庁エルニーニョ監視速報より、筆者加工

 今後、冷水の東進や貿易風の強まりにより、海面水温はさらに低下するでしょう。7月以降は徐々にラニーニャ現象に移行し、夏から秋にかけてはラニーニャ現象が発生する可能性が60%と高くなっています。

エルニーニョ/ラニーニャ現象の発生確率(2024年3月~9月)、気象庁エルニーニョ監視速報(No.380)より
エルニーニョ/ラニーニャ現象の発生確率(2024年3月~9月)、気象庁エルニーニョ監視速報(No.380)より

ラニーニャ現象が発生するもう一つの理由

 この冬(2023年12月~2024年2月)は非常に強いエルニーニョ現象(スーパーエルニーニョ)が発生しました。

 大規模なエルニーニョ現象が終わった後はラニーニャ現象へ、短い期間で移行する傾向がみられます。1949年以降の4例中3例で、一年以内にラニーニャ現象が発生しました。

非常に強いエルニーニョ現象が終息した後、一年以内にラニーニャ現象が発生する可能性を調べた表、筆者作成
非常に強いエルニーニョ現象が終息した後、一年以内にラニーニャ現象が発生する可能性を調べた表、筆者作成

ラニーニャ現象で猛暑の可能性

 今後、ラニーニャ現象が発生するとしても、夏の前半はインド洋を介してエルニーニョ現象の影響が残るでしょう。

 4月の日本の平均気温は基準値を2.76度上回り、観測史上最も高くなりました。これはエルニーニョ現象の影響とみられ、気温の上昇に歯止めがかからない状態が続いています。

日本の月平均気温の偏差をグラフにしたもの(1898年~2024年4月)、筆者作成
日本の月平均気温の偏差をグラフにしたもの(1898年~2024年4月)、筆者作成

 ラニーニャ現象の影響は夏の後半(8月頃~)以降とみられています。太平洋高気圧の北への張り出しが強まるため、日本列島全体が暖かい空気に覆われ、一段と気温が高くなる可能性があります。

台風1号の発生が遅れる?

 エルニーニョ/ラニーニャ現象の影響は気温だけではありません。熱帯の海面水温が大きく変動するため、台風の発生にも影響します。

 台風1号の発生は平均すると3月ですが、今年はまだ台風が発生していません。最も遅い台風1号の発生は1998年7月9日です。大規模なエルニーニョが終わった年は台風1号の発生が遅れる傾向があります。

【参考資料】

気象庁:エルニーニョ監視速報(No.380)、2024年5月10日

気象庁ホームページ:一般的なエルニーニョ現象やラニーニャ現象発生時の天候の特徴

気象庁ホームページ:気温・降水量の長期変化傾向

米海洋大気庁(NOAA):EL NINO/SOUTHERN OSCILLATION (ENSO) DIAGNOSTIC DISCUSSION、9 May 2024

米海洋大気庁(NOAA):ENSO BLOG、May 2024 ENSO update: we’re 10!、MAY 9, 2024

気象予報士/ウェザーマップ所属

民放キー局で、異常気象の解説から天気予報の原稿まで幅広く天気情報を担当する。一日一日、天気の出来事を書き留めた天気ノートは128冊になる。365日の天気の足あとから見えるもの、日常の天気から世界の気象情報まで、天気を知って、活用する楽しみを伝えたい。著作に『わたしたちも受験生だった 気象予報士この仕事で生きていく』(遊タイム出版/共著)など。

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