『妖怪ウォッチ』主題歌の男子メンバーだった高野洸。10年を経て主演など連ドラ4本の躍進
10年前、アニメ『妖怪ウォッチ』のエンディングテーマ『ようかい体操第一』が大ヒットして、紅白歌合戦にも出場したDream5。活動終了後、唯一の男子メンバーだった高野洸は2.5次元作品など舞台を中心に活躍してきた。今クールでは23日スタートの『過保護な若旦那様の甘やかし婚』で主演など、連続ドラマ4本にレギュラー出演。「まだ『妖怪ウォッチ』の子と言われます」と話しつつ、イケメンぶりにも磨きがかかった彼に、当時の思い出も交えつつ26歳の現在地を聞いた。
朝ドラを観て学校に行く生活をしてました
――『刀剣乱舞』、『ヒプノシスマイク』、『キングダム』など多くの2.5次元舞台で主役を張ってきた高野さんですが、現在は連続ドラマの出演が相次いでいます。高野さん自身の希望でもあったんですか?
高野 ドラマはもともとの夢でした。母が朝ドラを毎日観ていて、僕もそのあと学校に行く生活をしていたんです。『ゲゲゲの女房』とか『あまちゃん』とか。
――中学生から高校生の頃ですか。
高野 ここに出られたらいいな、と思っていました。もちろん舞台もありがたいですけど、映像のお仕事をやらせていただけるのは、すごく嬉しいです。
――櫻井翔さんが主演した『家族ゲーム』にも影響を受けたとか。
高野 めちゃめちゃ面白くて、連続ドラマを毎週楽しみにしたのは初めての経験でした。演技で人の心を動かすことはすごく素敵だと思って、役者という職業に憧れを持ちました。
作品ごとに成長して気づけば年月を重ねて
――2016年にDream5が活動終了してから、本格的に俳優活動を始めて、ここまで順調に来た感覚ですか?
高野 気づけば年月を重ねてきた、という感じです。ありがたいことに良い仲間や指導してくださる方との出会いを繰り返して、作品ごとに成長してこられたと思います。厳しい方もやさしい方もいらっしゃいますけど、寄り添ってくださる方が多くて、身になったことはたくさんあります。
――演技に対するポリシーができたりも?
高野 それは特になくて、作品によって……ですね。自分の立ち位置は考えます。目立ちたいわけでなく、爪あとを残そうとも考えず、ちゃんと作品に溶け込みたい。そういう気持ちで毎回挑んでいます。
――舞台と映像では、演じ方はどう違いますか?
高野 同じ部分もたくさんありますけど、日常を切り取って、隠しカメラで撮られているくらいで演じるのが映像。舞台はお客さんが生で体感してくれるので、こちらも熱量を思い切りぶつけて見せにいく。どちらにも良さがあると思います。
近藤勇を演じさせてもらって光栄です
――現在ご出演中のドラマについて、うかがっていきます。『君とゆきて咲く~新選組青春録~』では近藤勇役。原作は手塚治虫さんの隠れた名作で、主人公2人はオリジナルキャラクターですが、歴史上の新選組には興味ありました?
高野 高校の芸能コースの演劇部で、新選組の話をやったんですけど、そのときは何もわかってなくて、自分が誰の役だったかも覚えていません(笑)。確か2~3日稽古して、パッとやる感じでした。今回改めて学んでいくと、1人1人の隊士の正義感がわかってきて。歴史の中でなかなか見えない部分だと思いますけど、カッコ良くて、みんなが憧れるのはわかりました。
――局長の近藤勇には、どんなイメージがありました?
高野 生真面目なくらい誠実で仲間思い。勇ましく荒々しいけど潔さもある。THE男、というイメージでした。知り合いに「新選組のドラマを撮っていて近藤勇役」と話すと、「すごいね」と言ってもらいます。そんな誰もが知っている人物を演じさせてもらうのは、光栄なことです。
バシバシと時代劇らしい威厳を出して
――1話での長州藩士を斬り捨てる登場から威厳がありました。局長としてのリーダーシップは、高野さんにもあるものですか?
高野 リーダーっぽいことはできないタイプです。まとめるように任されても、引っ張っていくことをわざわざ言ったりはしません。近藤役ではバシバシ言うように意識してますけど、登場シーンはみんなが立ててくれて、威厳があるように見えて助かりました。
――台詞の言い方や振る舞いで、気をつけていることも?
高野 『君とゆきて咲く』は「シン・時代劇」ということで、令和の新しいスタイルです。とは言え、セットも衣装も江戸時代のもの。近藤は一番、時代劇らしくていいのかなと思っています。そうしないと、威厳も出ないので。
――公式サイトの人物紹介では「実は小心者で用心深く、目的のためには手段を選ばない男」ともあります。そういうシーンも出てくるんですか?
高野 仲間のために心が揺さぶられるところも、描かれると思います。それでも隊士たちの前では堂々としています。
刀を持つ踊りではアドバイスをしました
――現場で局長っぽいこともしていますか?
高野 ほぼないですけど、オープニングで刀を持って踊るところは、アドバイスを1コか2コ、恐縮しながらしました(笑)。
――そこは高野さんはお手のものですよね。
高野 そんなこともないですけど、『刀剣乱舞』の舞台ではめちゃめちゃ刀を持って歌って踊ったので。剣舞での刀のよけ方や危なくない持ち方は伝えました。あそこは砂埃の中で踊るのがキツかったんですけど、そこが見せ場でもあって。みんなで頑張って練習していたのを見て、刺激も受けました。
非現実的な悪役で舞台で学んだことが活かせて
――『ゴーストヤンキー』では幽霊たちのドラマの中で、悪霊のボスの林田狼牙役。恐ろしさを漂わせていますが、2.5次元舞台での経験が役立っているのでは?
高野 そうですね。悪役を何度もやっているわけではないですけど、非現実的な役だからこそ、舞台で学んだことが活かせているかもしれません。林田がなんでこんなに悪いことをしているのか、劇中ではあまり描かれてなくても、そこの裏付けは自分でしっかり考えて臨みました。これをやって林田はどう思うのか。どういう感情でひき殺した人を見ているのか。自分の感覚とは違うところを探して、繋いでいる感じです。
――怖さを醸し出すために、鋭い目つきだったり、意識していることもあります?
高野 林田に関しては、どういうテンションでいくべきか、練習してから現場に臨みました。台本を読んだうえで、最初は自分の顔や声がしっくりこなかったので。そこは調整しています。現実世界ではうまくいかなかったんだと勝手に想像しているので、そういう人に特有の雰囲気や話し方を考えて、コミュニケーションが取れないほうがいいんだろうなと思ったり。
――出来上がった映像では、イメージ通りになっていました?
高野 そうですね。赤いカラコンの違和感にインパクトがあって、スーツだからひと目でボスとわかって。そういうところにも助けられていました。
『くるり』ではフランクな先輩に見えるように
――『くるり~誰が私と恋をした?~』でのリングショップのスタッフの早瀬類役は、逆にナチュラルな感じですね。
高野 立ち位置はどういうところか、ちょっと悩みつつ、現場に行くと「もっとふざけていい」ということだったので、そこを意識しながら演じさせてもらっています。口調も重くないほうがいい。仕草やもろもろ、楽しくて明るいヤツというのは、現場で付け足されました。逆に、厳しくてイヤな先輩ということでも、行ける脚本ではあるんですけど。
――自分が尊敬するリング職人の立川杏璃(ともさかりえ)が、いきなり緒方まこと(生見愛瑠)を見習いとして雇って、面白くなくて冷たく当たる……という形もありえますよね。実際、最初は厳しそうに見えました。
高野 そうですね。でも、そういう方向でなく、緒方にとって居心地のいい職場になるような良い先輩、と監督に教わりました。
――まことが記憶喪失になる前に、杏璃に作ってもらったらしい指輪を、サイズが合うかと無理やりはめられたり。
高野 緒方がそういうことをできるくらい、フランクな先輩なんです。杏璃さんより親しみやすく見えたらいいなと思っています。
リングを作る練習もしました
――杏璃がまことに話した、自分の作ったリングを商品として売れるまで6年掛かった職人というのは、実は杏璃自身のことだと、まことに伝えたのも早瀬でした。杏璃との師弟関係の経緯についても想像しました?
高野 そうですね。どれくらいの親密度でいけばいいのか。実際にともさかさんとやり取りをしながら、感じた部分もあります。
――ドラマの公式Xでは「早瀬がリングをサクッとお作りします」と紹介されていました。実際、高野さんも作れるんですか?
高野 サクッとはいきません(笑)。何回か練習させてもらって、基礎は学びました。先生に隣りに付いてもらって覚えましたけど、工程が多くて。1人では全然作れませんし、あっという間に作り方を忘れてしまいそうです。職人の方はすごいことをこなされていると思いました。
――高野さんも手先は器用なんですか?
高野 いまだにわかりません。リング作りの練習をしていて、ケガはしませんでしたけど、自分の指を打ちそうで、軽く「危ない!」ということはありました。
テレくさい台詞も成立させる必要があって
――そして、主演する『過保護な若旦那様の甘やかし婚』が始まります。老舗旅館の若旦那の染谷雪斗役で、「ハードルが高い」とコメントされていました。確かに原作マンガではひたすらカッコいいキャラクターで、高野さん自身もカッコいいとは言え、再現率を高めるのは大変でしたか?
高野 本当にそうでしたね。結婚相手の依音(井頭愛海)だけでなく、旅館の仲居さんたちにも「カッコいい」と言われていて。そう言わせるものって何なんだろう? と思いながら、自分にできる限りのことを目指しました。無理ない範囲で最大にカッコ良く、かつ、若旦那としての空気でやれるのはどこか、探っていきました。
――どんな形で雪斗役にアプローチしたんですか?
高野 一番は依音のことが好きで、かわいがる。その感情を入れました。好きという想いの中には、テレくさい部分もあって。
――不意に依音にキスして、「俺以外の男とこんなことしちゃ絶対ダメだよ」と言ったり。
高野 僕は絶対そんなこと言わないし、言う男はなかなかいないと思いますけど(笑)、それを成立させてしまう若旦那になる必要があって。依音のために頑張っている。でも、それが表に見えたらいけない。自分で納得できるまで、かなり難しかった台詞がいくつかありました。
「キスシーンはアクション」と言われました
――依音を溺愛するシーンも、気持ちから入って?
高野 そうですね。依音のため、というのが一番。そこが雪斗の承認欲求というか、何より欲しいもので、観る方にはキュンキュンしてもらえれば。
――キスシーンとかで甘く見えるように、何か心掛けたりは?
高野 現場で三木(康一郎)監督が言ってくれたり、相談しながらでしたけど、プレイボーイみたいには見せたくなくて。一番大事なのは2人が幸せなこと。それで、観る方にも幸せな気持ちになってもらえたらいいなと、シンプルだったかもしれません。
――『植物図鑑 運命の恋、ひろいました』や『恋わずらいのエリー』などの恋愛ものを手掛けた三木監督から、そういうシーンで難しい演出があったりはしませんでした?
高野 結構あった気がします。でも、本番までにしっかり自分に落とし込んで、やっていました。監督は「キスシーンはアクション」とおっしゃっていて。
――顔や体の動きの見せ方が大事だと?
高野 ちゃんと計算が必要というか。「ここはしっかり間が欲しい」とか教えていただきました。
考えながら演じていたら頭が熱くなっていて
――「ハードルが高い」というのはありつつ、頭を抱えるほど悩むことはなかったですか?
高野 いやいや、パンクしそうになっていました。本番が終わったあとに「頭、熱っ!」くらいな(笑)。なかなかないことだと思います。考えることとやること、そして、考えているように見せない。そういうところを整理しながら演じていたら、頭が熱くなってしまいました(笑)。
――特にどんなシーンで熱くなりました?
高野 長めのシーンですね。やることが多くて、気をつけるポイントもたくさんあって。テストで「ここの間を延ばして」と言われたら、単純に延ばせばいいわけでなく、なぜ台詞が遅れるのか考えないといけない。考えながらも撮影はどんどん進んでいくので、混乱しながらやっているときもありました。本番直前に下を向いて、頭の中を急ピッチで整理していることが多かったです。
カッコいいと言われるために堂々と
――旅館の若旦那という部分で、気を配ったこともありました?
高野 老舗旅館で大旦那の圧に負けない熱量でやってきたのと、従業員からすごく信頼されている誠実な人ということで、ドシッと構えてハキハキしゃべる。そこは意識していました。あとは、羽織の脱ぎ着にもひとつひとつ所作があって。普通の服の着方とは全然違うし、依音に着せてあげるところはめちゃめちゃ難しかったです。
――外見的に意識したこともありました?
高野 大きく意識したわけではなく、普段からカッコいいと言われる若旦那なので、姿勢に気をつけたり、歩くときに堂々としている感じは出すようにしました。
――他に、このドラマの撮影で印象に残っていることはありますか?
高野 桜が咲いている時期に、1日か2日撮影を逃していたら散っていたところで、ちょうどきれいなときに撮れました。桜の花びらが舞っているのを、依音が喜んでいるところが素敵でしたね。
主題歌はキャッチーな曲を探しました
――エンディング主題歌の『君という奇跡』を歌うことも発表されました。
高野 主演で主題歌というのは目標でした。明るくてキャッチーな曲です。オシャレでメロディに特徴があって、たくさんの方に口ずさんでいただけるのではないかと。甘い感じで歌って作品にも合っていて、すごく幸せなラブソングになっています。
――これまでの高野さんのアーティスト活動の流れにも、沿っていますか?
高野 今回は特別な1曲です。音楽性として、僕は世の中の流行りと逆張りのほうが、たぶん好みなんです。でも、親しみやすい曲も好きなので、ドラマ主題歌にふさわしい楽曲をチームみんなで探して、見つけました。
まだ『ようかい体操第一』のイメージが強い気がします
――これだけ幅広く活躍が続いていると、もうDream5にいたことを驚かれるくらいですか?
高野 どうですかね。まだ全然、『ようかい体操第一』の人というイメージのほうが強い気がします。
――自分で当時の映像を観ることもありますか?
高野 たまにテレビで、昔のヒット曲ランキングとかで流れたりすると、嬉しくなります。観ると「若いなー」と思いますけど(笑)、今もそこまで変わってないようにも感じます。
――よく聞かれたかもしれませんが、女子4人に男子1人というのは、どんな居心地だったんですか?
高野 始めた頃は小学6年生で、特に何とも思っていませんでした。以前にダンスチームを組んでいたときも、女子3人に男1人だったので。中学生になると女子だけの話題もあって、僕は化粧品のこととか全然わからなかったので、「ここは会話に入らないでいい」と思うことはありました。でも、それが僕にとっては普通というか。男性だけのグループだとどんな会話をしているのか、気になったりはしましたけど。
――楽屋に居づらいようなことはなかったと。
高野 全然なかったです。女子が着替え始めたら外に出て、「終わった」という報告を忘れられたまま、ずっと廊下にいたことがあったくらいです(笑)。
いろいろ消化していくのが楽しいです
――今はアーティスト活動も含めて、やりたいことが全部できてる感じですか?
高野 はい。ありがたい環境です。いろいろやらせてもらっているからこそ、どの現場でも楽しくいられるように思います。ずっと同じことをやっているよりは、音楽をやったり、演技をやったりという環境が、自分に合っている気がします。
――体的には大変な面もないですか?
高野 たまにキャパシティから溢れてしまうときもありますけど、結局は大丈夫です。ひとつずつ消化していくのが楽しい感じです。
――さらに何かに手を広げたい気持ちもありますか?
高野 これから先、どれだけ映像の仕事をやっていけるか考えています。余裕があれば、作曲もやってみたいですね。
――主役をバンバンやっていきたい、とは?
高野 作品ごとに自分のベストの立ち位置でやりたいです。主役は本当に大変なので、続けてやってらっしゃる方はすごいなと思います。
――もっと売れたい、みたいな野心はないですか?
高野 いや、売れたいです(笑)。さっきも言ったように、まだ『妖怪ウォッチ』の子と言われることが多いので。今の活動で有名になれるまで、しっかり頑張りたいです。
Profile
高野洸(たかの・あきら)
1997年7月22日生まれ、福岡県出身。2009年にDream5でデビュー。2014年に『ようかい体操第一』で紅白歌合戦に出場。2016年に活動終了し、本格的に俳優活動を開始。舞台『ヒプノシスマイク』、『KING OF DANCE』、『タンブリング』、『キングダム』などに主演。ドラマ『美しい彼』、『明日、私は誰かのカノジョ』、『推しが上司になりまして』などに出演。ドラマ『君とゆきて咲く~新選組青春録~』(テレビ朝日・水曜24:15~)、『くるり~誰が私と恋をした?~』(TBS系・火曜22:00~)、『ゴーストヤンキー』(MBS・木曜24:59~ほか)に出演中。5月23日スタートの『過保護な若旦那様の甘やかし婚』(MBSほか)に主演。
ドラマ特区『過保護な若旦那様の甘やかし婚』
5月23日スタート MBS・木曜24:59~ほか