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2023年に注目すべき 福岡の豚骨ラーメン「新店」3軒

山路力也フードジャーナリスト
非豚骨がトレンドとなっている福岡だが、やはり福岡には豚骨ラーメンが欠かせない。

今福岡で食べておくべき豚骨ラーメンとは?

 毎年いくつもの新店が誕生し、同じ数だけの店が廃業するラーメン業界。飲食業界の中でもライバルが多い厳しい世界だが、長引くコロナ禍の中であっても数え切れないほどたくさんのラーメン店がオープンしている。

 その中で、2023年にますます人気が上がっていくであろう、注目すべき新進気鋭のニューカマーのラーメン店を実食した上で厳選。今回は豚骨ラーメンの聖地、福岡にオープンしたばかりの豚骨ラーメン店を選んでみた。

 ここ数年、福岡では「非豚骨」「脱豚骨」の流れが顕著で、一年間にオープンするラーメン店の半数以上が醤油や塩、豚骨醤油などの非豚骨ラーメン店になっている。豚骨ラーメンの街として知られる福岡では、これまでにはあり得なかった状況だ。

 福岡の豚骨ラーメンは古くから愛されている地元密着型の老舗や、行列を作る人気店が多くひしめき合い、なかなか新店が食い込んでいくことが難しい。そんな中で老舗や人気店に負けないクオリティの豚骨ラーメンも生まれている。いずれもさすが福岡と感じさせる完成度の豚骨ラーメンばかりだ。

骨味あふれるスープに自家製麺『FREE-MEN』(2021年12月創業)

老若男女幅広い層から受け入れられている『FREE-MEN』。
老若男女幅広い層から受け入れられている『FREE-MEN』。

 筑紫野市紫。天神から西鉄で30分程の場所に、2021年12月にオープンした『FREE-MEN』(福岡県筑紫野市紫1-28-3)は、一見お洒落なカフェのような佇まいのラーメン店。店主の河原慎治さんは長年にわたり『博多 一風堂』で店舗立ち上げをはじめ店舗の運営をしていたが、今までにない新しい豚骨ラーメンを自分の手で作り上げたいと独立した。

 全ての人が飲み干せる豚骨スープをと、塩気や油分に頼らず、豚骨本来の旨味を追求したスープは、豚の頭骨とゲンコツをじっくり丁寧に炊いたもので、骨の味がしっかりと感じられる。店内の製麺室で毎日作られる極細ストレート麺はサクサクとした食感が心地よい。豚肩ロースを低温でローストしたチャーシューはほのかな燻香が食欲を刺激する。万人向けの味わいでありながらも、個性がキラリと光る新たな豚骨ラーメンの誕生だ。

和食料理人が作る伝説の味が復活『拉麺處 丸八』(2022年1月開業)

日本料理店『油山山荘』の敷地内にある『拉麺處 丸八』。
日本料理店『油山山荘』の敷地内にある『拉麺處 丸八』。

 福岡市郊外にある標高597mの油山に佇む、1972(昭和47)年創業の割烹『油山山荘』。この店の敷地内に2022年オープンしたラーメン店が『拉麺處 丸八』(福岡県福岡市城南区大字東油山147)だ。店主の渡邉健さんはラーメン好きが高じて、割烹を営みながら独学でラーメン研究に勤しみ、1989年にラーメン店『丸八』を開業するも、体調不良や人手不足などで2006年に惜しまれつつ閉店。今回16年振りに常設の店舗として完全復活を果たした。

 仕込みも営業も割烹と並行して店主自らが行う。豚の頭骨と脛骨を3日かけて取ったスープは、冷凍ではなく生の豚骨を使うことで、肉の旨味もスープにしっかりと取り込む。一日寝かせたスープに古骨を入れてまた炊くことにより、さらに深みが増していく。和食の料理人としての技術も生かされた深みのある一杯は、今も日々改良が重ねられて味が進化し続けている。

洗練された美しい豚骨ラーメン『ラーメン ツミキ』(2022年10月創業)

スタイリッシュな外観が目を引く『ラーメン ツミキ』。
スタイリッシュな外観が目を引く『ラーメン ツミキ』。

 福岡市早良区次郎丸に2022年10月オープンした『ラーメン ツミキ』(福岡県福岡市早良区次郎丸3-24-1)は、「極上の普通」をコンセプトに据えた新店。豚骨ラーメンと醤油ラーメンの二枚看板で早くも人気を集めている。店主の土井勝博さんは、長年『博多 一風堂』で商品開発や海外立ち上げなどに従事していたが、念願の独立開業を果たした。

 豚頭をベースに半日以上かけて仕上げる豚骨スープは、臭みは全くなく豚骨の旨味だけを抽出したクリーミーなもの。外麦に硬質内麦「ミナミノカオリ」を配合した自家製細麺は、しっかりとした食感と歯応えが心地良い。「店が味を押し付けるのではなく、客がその日の気分で好きなように楽しんで欲しい」と、セルフで選ぶトッピングや味変アイテムを自由に組み合わせて、自分好みの味に仕上げていく楽しさもある。

 福岡には数多くの豚骨ラーメン店がある場所だが、今回ご紹介した3軒はいずれも新店ながらもその実力は折り紙付き。2023年の福岡のラーメンを語る上で、欠かすことの出来ない店ばかりだ。同じ豚骨ラーメンでありながらも個性は全く違うので、ぜひ3軒とも食べて自分好みの味を見つけて欲しい。

※写真は筆者によるものです。

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フードジャーナリスト

フードジャーナリスト/ラーメン評論家/かき氷評論家 著書『トーキョーノスタルジックラーメン』『ラーメンマップ千葉』他/連載『シティ情報Fukuoka』/テレビ『郷愁の街角ラーメン』(BS-TBS)『マツコ&有吉 かりそめ天国』(テレビ朝日)『ABEMA Prime』(ABEMA TV)他/オンラインサロン『山路力也の飲食店戦略ゼミ』(DMM.com)/音声メディア『美味しいラジオ』(Voicy)/ウェブ『トーキョーラーメン会議』『千葉拉麺通信』『福岡ラーメン通信』他/飲食店プロデュース・コンサルティング/「作り手の顔が見える料理」を愛し「その料理が美味しい理由」を考えながら様々な媒体で活動中。

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