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日本の人口は6000万人へ。まもなくやってくる「多死時代」の幕開け

荒川和久独身研究家/コラムニスト/マーケティングディレクター
(提供:matsu/イメージマート)

人口減少の危機感を煽ったところで…

日本の人口減少に対して「恐ろしい未来」だの「未曾有の危機」だのと仰々しい枕詞をつけて、ことさら危機感を煽るような論説が目立つが、今必要なのは、恐れることではなく、正確なファクトを知ることである。

日本の人口減少は不可避であるという現実を。

2020 年国勢調査では、日本の人口は1億2614 万人で、5年前から約95万人減少した。しかし、そんなことは既に毎年発表されている総務省統計局の「人口推計」を見れば予想つく話である。

すでに、日本の人口は2008年をピークに減少基調にあることは、こちらの記事の長期推移データでも紹介している。

2020年出生・死亡・婚姻・離婚の確定値。新型コロナとは関係ない大きな人口動態の流れを見る

人口減少を解決するためにも出生率をあげなければならないということを言う人もいるが、出生率があがらないこともわかりきった現実である(→日本の結婚は30年前にはすでに詰んでいた。失われた社会的システム)。出産する女性の絶対数が減っている以上、子どもの数は増えない。万が一、何かの間違いで、出生数が増えたところで、人口減少を補うことは確実に不可能である。

人口減少は少子化だけによるものではない

結論からいえば、2100年には日本の人口は6000万人程度になる。現在の半分だ。これは、国立社会保障・人口問題研究所の「将来推計人口(平成29年推計)報告書」の出生中位・死亡中位推計でも明示されている通り。ちょうど1925年(大正14年)の人口5974万人とほぼ同等ということになる。

勘違いをされている方も多いのだが、人口減少は少子化によってのみ引き起こされるのではない。人口減少とは、死亡数が出生数を上回る自然減によって生じる。

日本は世界1位の高齢化率で、長寿の国だが、なぜそうなったかというと、1951年から2011年まで60年間にもわたって人口千対死亡率がわずか10.0未満の状態が続いたことによるものである。「世界一死なない国」だからこそ、戦後わずかの間に、諸外国を一気に抜いて世界一の超高齢国家になったのだ。

しかし、人間は不老不死ではない。現在の高齢者たちがお亡くなりになる時が確実にやってくる。それが「日本の多死社会化」である。そして、それはもう間もなく始まる。

写真:GYRO_PHOTOGRAPHY/イメージマート

太平洋戦争時に匹敵する死者数

社人研の推計によれば、2024年から年間150万人以上死ぬ時代が到来する。これは、日本の統計史上最大の年間死亡者数を記録した1918年の149万人(スペイン風邪のパンデミックがあった年)を超え、統計が残らない太平洋戦争期間中の年間平均死亡者数に匹敵するといわれる。

戦争もしていないのに、戦争中と同等の人数が死ぬ国になる。しかも、それが約50年間継続する。

単純計算して、2022年から2100年まで合計1億1576万人が死亡し、生まれてくるのはわずか4728万人程度。差し引き約6850万人の人口が消滅する。冒頭述べた2100年人口約6000万人が決して誇張ではないとおわかりだろう。

人口学的には、人類は「多産多死→多産少死→少産少死→少産多死」というサイクルで流れていく。これは日本に限らず、世界のすべての国が同じ過程を進む。

その傾向は、先進国や高所得国から先に進むのだが、日本はその先駆けといえる。少子化も人口減少もマクロ視点でみれば、このような人口転換メカニズムの大きな流れの中で推移していくものなのである。

婚姻数や出生数が多少改善されたところで大きな流れは変わらない。人口学的には、人口構造の新陳代謝には少なくとも100年はかかると言われている。その間、人口は減少し続けるわけで、いつまでも「できもしないこと」を繰り返し言い続けるのは不毛だし、いたずらに恐怖を煽るだけの論説は無責任すぎる。

「恐ろしい未来」ではなく「当然やってくる未来」

そろそろ私たちは、その現実を直視し、「人口は減り続ける」という現実を前提に適応戦略を考えないといけないフェーズに来ている。人口が今の半分の6000万人になってしまう未来を「恐ろしい」「危機だ」と言っていれば未来が変わるものではない。「恐ろしい未来」ではなく「当然やってくる未来」としてとらえ、6000万人になってもやっていける道筋を構築する。そうした視点に考え方をシフトしていくべきだろう。

写真:アフロ

そのまま「少産多死時代」が延々と続けば日本人はやがて絶滅するのではないかと思うかもしれないが、決してそうはならない。大量の高齢者群が「多死時代」を経て縮小した段階で、多死時代は終わる。

そして、それは現在の中高年者偏重型のいびつな人口ピラミッドが、全年代均等型に補正されることを意味する。絶対人数は減るがバランスは補正されるのだ。

むしろ今の1億何千万の人口の方が異常だったのである。

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独身研究家/コラムニスト/マーケティングディレクター

広告会社において、数多くの企業のマーケティング戦略立案やクリエイティブ実務を担当した後、「ソロ経済・文化研究所」を立ち上げ独立。ソロ社会論および非婚化する独身生活者研究の第一人者としてメディアに多数出演。著書に『「居場所がない」人たち』『知らないとヤバい ソロ社会マーケティングの本質』『結婚滅亡』『ソロエコノミーの襲来』『超ソロ社会』『結婚しない男たち』『「一人で生きる」が当たり前になる社会』などがある。

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