中国海軍、原子力潜水艦からSLBM「巨浪2」を発射するビデオ初公開 米国務長官の訪中直前に核戦力誇示
中国海軍は4月22日、原子力潜水艦から潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)の巨浪2(JL-2)を発射するビデオを初めて公開した。
この動画は23日が中国海軍創設75周年の日に当たることを記念して公開されたもので、ブリンケン米国務長官が24~26日の日程で中国を訪問する直前に発表された。
香港英字紙サウスチャイナ・モーニング・ポストは23日、「中国がブリンケン国務長官の北京と上海訪問のわずか2日前に、核による第二撃能力(敵が最初の核攻撃を仕掛けた後に反撃する能力)を誇示した」と報じた。
動画ではミサイルや潜水艦の種類は説明されていないが、中国共産党機関紙・人民日報系の「環球時報」は、動画に映っているミサイルはJL-2と報じた。
JL‐2は2019年10月1日に開催された中華人民共和国成立70周年祝賀大会の閲兵式で初めて公開された。
日本の令和5(2023)年版防衛白書によると、JL-2は中国海軍の戦略核戦力とされるSLBMで最大射程は7200キロとなっている。中国は、戦略核戦力のさらなる強化のために射程を延伸したSLBMのJL-3(最大射程1万2000キロ~1万4000キロ)の開発・配備を進めている。
中国海軍の弾道ミサイル原子力潜水艦(SSBN)である094型原子力潜水艦(晋級)がJL-2あるいはJL-3を最大12発搭載できる。同原子力潜水艦は中国南部の海南島の亜龍湾の東端にある龍坡海軍基地に配備されている。
昨年10月発表された中国の軍事力に関する米国防総省の年次報告書によると、JL-2は太平洋中部で運用された場合、米国本土の西半分、ハワイ、アラスカの標的を脅かすことができ、ハワイの東に配備された場合は米国東海岸の標的を脅かすことができる。
その一方で、射程延伸型のJL-3は中国近海からでも米本土の大部分を射程に収めることになる。
同報告書によると、中国海軍は現在、6隻の晋級SSBNを運用している。そして、JL-2あるいはJL-3を搭載する晋級SSBN6隻が、中国に最初の信頼できる海上核抑止力をもたらしたと指摘している。
同報告書によると、中国海軍は過去15年間に12隻の原潜を建造してきた。内訳は093型商級攻撃型原子力潜水艦(SSN)2隻、093A型商級SSN4隻、094型晋級SSBN6隻となっている。次世代SSBNである096型は、2020年代後半から2030年代前半に就役する予定だ。
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