『ミシュランガイド東京2022』発表! 今食べておくべき「一つ星」厳選5店
今年15周年を迎えた『ミシュランガイド東京』
11月30日、グルメガイド『ミシュランガイド東京2022』(日本ミシュランタイヤ/12月3日発売)の掲載店が発表となった。2007年に創刊し、今年で15周年を迎える東京版の掲載店数は432店。最高評価である三つ星は12店、二つ星は41店、一つ星は150店、ビブグルマン(価格以上の満足感が得られる料理)は229店、ミシュラングリーンスター(持続可能なガストロノミーを実践するレストラン)は14店となった。
料理人にとって一つの憧れでもある『ミシュランガイド』への選出。そして私たち食べ手にとっては店選びの一つの指針となる。『ミシュランガイド』に掲載された店は、いずれも予約が困難となりなかなか足を運ぶことが難しいが、一度は訪れたい店ばかりだ。
味の評価は人それぞれ。『ミシュランガイド』の評価としては「一つ星」や「二つ星」だったとしても、自分の中では「三つ星」に匹敵すると感じる店もあるだろう。そしてガイドの評価に頼るだけではなく、自分なりの「三つ星レストラン」を探すことこそ食べ歩きの楽しさ、醍醐味であるとも言える。
今ミシュランで食べるべき店はズバリ「一つ星」だ
432店の掲載店の中でも注目すべきは、150店の「一つ星」レストランだ。「近くに訪れたら行く価値のある素晴らしい料理」と評価された料理。食材の質、料理の技術、味付けの完成度など、そのカテゴリーの模範となる料理と認められた料理が「一つ星」と評価される。
今回「一つ星」に選出された店を見てみると、新進気鋭の勢いを感じさせる店が多いことに気づく。そして次は「二つ星」いずれは「三つ星」と、上を見てさらに研鑽を積んでいこうという気概も感じられる。そして間違いなくこれから先、これらの店の料理は変化し、進化していく。
だから「一つ星」こそ、今このタイミングで食べておく意味がある。今回「一つ星」に新たに選出されたレストランは20店。今回はその中から個人的にも注目している5店を厳選した。
日本の魅力を料理で表現する『ラルジャン』(2020年創業/フランス料理)
銀座四丁目の交差点に面する『GINZA PLACE』に、2020年12月にオープンしたフレンチ『ラルジャン(L’ARGENT)』(東京都中央区銀座5-8-1 GINZA PLACE 7F)。今回の『ミシュランガイド東京2022』で「二つ星」を獲得したレストラン『Crony』が総合監修をしたことでも注目を集めている。
加藤順一シェフは東京、パリ、そしてコペンハーゲンで経験を積んだのちに帰国し、『sublime』のシェフを務めた人物。「東京発のモダンフレンチ」というコンセプトを掲げて、日本の食材や食文化をベースにフレンチの伝統とノルディックの革新を織り交ぜた世界観を表現している。
加藤シェフのスペシャリテである「マッシュルームの三段活用」は、フレッシュのマッシュルームとソテーしたマッシュルームを重ね合わせ、発酵させたマッシュルームのスープを注いだ一品。マッシュルームという食材を色々なアプローチとテクスチャーで立体的に表現した意欲作だ。
オールサステナブルフレンチ『ヌー. トウキョウ』(2020年創業/フランス料理)
永田町駅から徒歩1分の場所に、2020年7月オープンした『ヌー. トウキョウ(Nœud.TOKYO)』(東京都千代田区平河町2-5-7 ヒルクレスト平河町 B1F)は、サステナブルの世界観を体感出来るレストラン。コロナ禍の中で求められるレストランの在り方から考え、「オールサステナブル」をコンセプトに美味しさだけではなく「SDGs(Sustainable Development Goals:持続可能な開発目標)」を食で体感できる機会の提供を目指している。
シェフは秋田絢也シェフと中塚直人シェフのダブルシェフ体制。使用する食材全ての生産者に会い、どういう環境でその食材が栽培、生育されているのかを目と舌で確かめ、生産者の生産方針なども聞いた上で直接買い付けを行なう。自然の中で育ったジビエや、農薬や化学肥料を使わない野菜、地産地消と旬産旬消を意識した食材を使うなど、サステナブルの観点から選んだ食材の生産者と客を繋ぐ役割も果たしている。
旬の食材を生かす料理だからこそ、敢えてスペシャリテは置かない。食材によって毎日変わる一期一会のコース料理1種のみ。メニュー表もQRコードで読み取りペーパーレス化。国産木材を使用したテーブルと椅子。店舗の内装には京都西陣の古い蔵を解体した時の「聚楽土」を使用するなど、料理以外の部分でもSDGsの考えが反映されている。
和と洋を「串」で繋ぐ『デンクシフロリ』(2020年創業/イノベーティブ)
日本料理の『傳』とフランス料理の『フロリレージュ』によるコラボレーションで、一躍注目を集めた店が『デンクシフロリ』(東京都渋谷区神宮前5-46-7 GEMS青山CROSS B1F)。和食とフレンチの世界観を「串」を使って一つに繋ぐという、斬新なコンセプトが貫かれた話題のレストランだ。
2年目となる2021年10月からは、新たに『Anis』(閉業)のオーナーシェフだった清水将シェフを迎えた。フレンチはもちろん和食やパリの精肉店『HUGO DESNOYER(ユーゴ・デ・ノワイエ)』でも経験を積んだ人物だけに、この店のコンセプトとも見事に合致。さらなる飛躍が期待されるところだ。
フルオープンキッチンの劇場型レストランでは、ライブ感のあるパフォーマンスを展開。堅苦しくないカジュアルな雰囲気の中で、次々と繰り出される「串料理」の数々。日本料理とフレンチが見事に一本の串で融合した料理は唯一無二の世界観。美味しいだけではなく圧倒的に楽しい。それがこの店の最大の魅力だ。
美味しさと楽しさの競演『鮨 龍次郎』(2019年創業/寿司)
南青山の路地裏に佇む『鮨 龍次郎』(東京都港区南青山2-11-11)は、オープン以来予約の取れない人気の寿司店。金沢や東京で研鑽を積み、青山の人気店『海味』で薫陶を受けて、二代目を任されていた中村龍次郎さんが、2019年に念願の独立を果たし創業した店だ。
お品書きは「おまかせコース」一本のみ。握りや刺身、一品料理などによって構成されるが、先付に続いて出される一品目は「中トロの握り」と決まっている。鮪は多くの寿司職人から絶大なる信頼が寄せられる鮮魚仲卸『やま幸』の鮪を使い、赤酢と米酢をブレンドしたシャリも鮪に合わせてある。その一体感は圧倒的だ。
厚みのある木曾檜の白木を使ったカウンターに囲まれた付け場に立つ親方の龍次郎さんは、いつも笑顔で客と軽妙に会話をしている。そして寿司を握る時には真剣な面持ちになる。江戸前の仕事がしっかりとされた握りを、龍次郎さんの話術と共に味わう。この店には美味しさと楽しさが同居している。だから客はまた龍次郎さんに会いに来たくなるのだ。
ラーメンの常識を覆す『銀座 八五』(2018年創業/ラーメン)
銀座の賑やかな大通りからは少し離れた東銀座の一角。かつては「木挽町」と呼ばれた歴史ある町の一角に佇む、和食店のような凛とした佇まいの店だがここはラーメン店。2018年の暮れにオープンした初日から、行列が出来なかった日がない人気の店が『銀座 八五』(東京都中央区銀座3-14-2)だ。
店主の松村康史さんはフレンチの世界で長年にわたり腕をふるってきたベテランシェフ。『京都全日空ホテル』(現ANAクラウンプラザホテル京都)の総料理長として、実に華々しいキャリアを持つ本物の料理人。第二の人生は大好きなラーメンに捧げたいと、2015年には水道橋に『中華そば 勝本』を創業。フレンチシェフが本気で作るラーメンは多くのラーメンマニアを驚かせた。
「ラーメンの常識を変えていきたい」と語る店主の松村さん。『銀座 八五』の中華そばは、一見普通のラーメンのように見えるが、そのアプローチは斬新で革新的。通常ラーメンは醤油ダレなどをスープで割るが、『銀座 八五』ではタレを使わない。寸胴の中に入っている素材の味と色、香りがすべてスープに反映されている。ラーメンの常識を軽々と超えた味、空間、そしてサービス。その満足度はフレンチに勝るとも劣らない、まさに「一杯のフルコース」だ。
常に進化し続けている東京のレストランシーンの「今」を切り取った『ミシュランガイド東京2022』。今回ご紹介した5軒は今後も進化し続けて、これからの東京のレストランシーンの中心に在り続けるだろう素晴らしい店ばかりだ。だからこそ、今この瞬間の料理を舌の記憶に残しておいて欲しい。
※写真は筆者の撮影によるものです(出典があるものを除く)。
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