「おじさんは臭いから嫌われる」のではない。中年男性を悩ます「におい」の問題
おじさんのにおいはハラスメント
昨今、いろんなハラスメントに注意が必要な時代になっているが、オフィスにおいては、以前よりスメルハラスメントも問題にもなっている。これは、においにより周囲を不快にさせる行為のことで、「スメハラ」と略されるそうだ。
コロナ禍でのテレワークから出勤形態へと変わりつつある中で、自宅では気にする必要のなかった「自分のにおい」に再度注意が必要になってくる。特に、中年のおじさんたちは、だ。
若い女性に中年男性が嫌われる理由を聞くと、「説教をする」「武勇伝を語る」「しつこい」などの行動面より、圧倒的に「臭い」「清潔感がない」というものが上位にくる。もちろん、すべてのおじさんが「臭くて不潔」であるわけではない。
元来、日本人男性は、西欧人と比べてそもそも体臭が少ないと言われているが、それでも女性から「臭い」と言われてしまうのは、いわゆる加齢臭の問題がある。
加齢臭の正体
加齢臭には皮脂量が関係するが、実際、男性の皮脂量は、20代も中高年もあまり変わらない。では、なぜ中高年にだけ加齢臭が出るかといえば、中高年の皮脂には、若者にはほとんど存在しない脂肪酸9―ヘキサデセン酸が増加するためである。これが皮脂および皮膚に棲んでいる多くの常住菌によって分解されることでノネナールが発生、これが加齢臭の元なのだそうである。
しかし、原理がわかったところで自分の加齢臭はなかなか気づけないものである。
嫌われないように、世のおじさんたちは「無臭」になる商品などを使って、人知れず努力もしているだろう。香水もまた「スメハラ」と言われてしまう場合もあるので、消臭・無臭が一番良いのである。
娘が「お父さん、臭い」と父親のにおいを嫌悪するのは、近親相姦を避けるためという話もある。人間の女性が男性のにおいに敏感なのは、そうした「においによる遺伝子のリスク回避」というものの表れでもある。
視覚重視の男、嗅覚重視の女
しかし、父娘はそれでいいとして、晩婚化が進む現代、中年婚活男性にとっては、この「嫌われる要素としてのにおい」は、死活問題である。
恋愛において、男性はどちらかといえば、女性の容姿という視覚を重視するが、女性は嗅覚を信じるという傾向がある。
女性は、たとえ「容姿が好みであっても、相手のにおいが嫌いなら付き合えない」割合が、年代を問わず、既婚は60%以上、未婚に至っては80%近くを占める。女性が恋愛相手を選別する際には、相手のにおいが重要な決定要因となるのだ。これは男性とは大きく異なるポイントである。
以前、婚活において40歳を過ぎて20代の若い女性を追い求めてもほぼ実現性はないという話をした(参照→20代女性と結婚したがる「40代以上婚活おじさん」は永久に仏滅です)。結婚したいと思う男性は、加齢臭が出る前に本腰を入れた方がよいだろう。
年収の壁の次は「においの壁」
それを結果的に裏付けるデータともいえるのが、自由恋愛結婚の増加とともに、夫年上婚や年の差婚の比率が減少していることである。夫婦同い年婚および妻年上婚の数は、婚姻数が多かった皆婚時代とほぼ変わらなのに、激減しているのは夫年上婚だけなのだ。
1970年と2018年を比較すると、日本の婚姻数は約44万組減少しているが、それはほぼ夫年上婚の減少と一致する。つまり、日本の未婚化は、年上の男が結婚できなくなったからだとも言える(夫年上婚減少推移のグラフはこちらの記事を参照)。
若いうちは、結婚条件として「年収の壁」を突きつけられ、懸命に働いて、ようやく40代になってその年収条件をクリアしたと思ったら、今度は「においの壁」という新たな障壁が待ち構えているわけで、結婚したい男性にとってはイバラの道である。
同じにおいでも感じ方が変わる
とはいえ、このにおいに対する感覚は遺伝的背景があるとはいえ、永遠に変わらないものでもなく、経験や学習、環境によっても変化するようだ。
好きな人のにおいは、たとえそれが一般的には加齢臭に当たるものであっても好ましく感じる。「中年男性のにおいが好き」だという女性もごくまれに存在する。
しかし、その相手と何かイザコザがあった場合、今まで好きだった相手のにおいに嫌悪感を抱くこともある。夫婦喧嘩をした後では、いままでなんとも思わなかった夫のにおいが急に臭く思えたりするという経験をした妻もいるのではないだろうか。
つまり、同じにおいでも、自分の心理状態によってその感じ方が左右されるのだ。
そう考えると、「おじさん(あなた)は臭いから嫌われる」なのではなく、「おじさん(あなた)が嫌いだから臭いと感じる」と解釈するほうが正しいのかもしれない。
嫌われないようにおじさんたちが毎日風呂に入り、洗髪をして、たとえ高級な香水をふりかけたとしても、無臭になる何らかのテクノロジーの開発によって「あらゆる加齢臭を除去」する商品が販売されたとしてもあまり意味はないのだ。
要は好きか嫌いかの感情によって「臭い」は決定されてしまうということである。
結局、救いのない話になってしまった。さて、今日もお仕事、がんばりましょう。
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