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20代女性と結婚したがる「40代以上婚活おじさん」は永久に仏滅です

荒川和久独身研究家/コラムニスト/マーケティングディレクター
(写真:アフロ)

若い子を条件にする中年婚活おじさん

前回の記事で「女は金で男を選び、男は年で女を選ぶ」という女性の経済上方婚志向・男性の年齢下方婚志向について書いた(参照→結婚相手を「金で選ぶ女、年で選ぶ男」が嵌る、当たりのないガチャ地獄)。

これは付き合いのある結婚相談所の仲人さんから聞いた話だが、婚活を続けているのに、いつまでもマッチングしない未婚男性に限って、相手の条件に「若さ」を指定してくるそうだ。それも、40歳を過ぎた男が20代の女性を希望してくるのである。

以前、私は婚活に悩む男女の悩み相談を受けるアドバイザーとして、テレビ朝日系の「駆け込み結婚相談所」というテレビ番組に出演したことがある(司会は川島明(麒麟)さん。アドバイザーは私の他、犬山紙子さん、森川友義さん、川上あきこさんの4名)。その番組に、56歳の未婚男性が「30歳前後の女性と結婚したい」という条件をあげて登場し、全員が引いてしまったという記憶もある。娘でもおかしくない年齢差だ。

どうもこういうタイプの男性は、自分の年齢が毎年あがっているにも関わらず、相手の希望年齢はずっと変わらないという特徴があるようである。

晩婚化により40歳以上の初婚男の数は増えているが…

もちろん、最近は晩婚化が進行しており、男性の平均初婚年齢もあがってはいる。40歳を過ぎて初婚する男性の数も増えていることは事実だ。

人口動態調査によれば、40歳以上で初婚する男性の数は、戦後間もなくの1947年にはたった3325人に過ぎなかったが、2019年には3万9651人と約12倍に増えている。全体の初婚数が逆に13%も減っているにも関わらず、40歳以上の初婚数だけが増えているのである。

写真:milatas/イメージマート

これを聞いて「よ~し!俺も40過ぎでも結婚できるぞ」と喜ぶのは早い。晩婚化は晩婚化ではあるが、39歳までに結婚している割合が全体の9割であり、40歳を過ぎて初婚できるのはたった1割しかいない。しかも、40歳の初婚だからといって相手は必ずしも若い相手とは限らない。

結婚の「エアマックス95現象」

結婚というと、イメージ的には夫の方が妻より年上であると思うだろう。それは間違いではないが、実は、夫が年上である「夫年上婚」は年々激減しているのである。

初婚数だけを抽出すると、2019年は33万9418組で、1970年と比べれば57%減少、組数にして約44万組も減っている。この激減のほぼ全部を占めるのが「夫年上婚」の減少なのだ。

1970年から2019年までの婚姻の組み合わせ推移をみれば、それは一目瞭然。

全体の婚姻数が大きく減っているのに対して、実は「同い年婚」および「妻年上婚」の数は、婚姻数が多かった皆婚時代とほぼ変わらない。大きく減少しているのは夫年上婚だけなのである。つまり、日本の婚姻が減った最大の要因は、年上の男性が結婚できなくなったからだとも言える。

このグラフの形…なにかに似てると思ったのだが、ナイキのスニーカーのデザインである。なので、私はこれを「夫年上婚のエアマックス95現象」と名付けた。

初婚同士の組み合わせは、今やその多くが「同類婚」と呼ばれる形態になりつつある。同い年くらいの相手と、同じくらいの収入の相手と結婚するということだ。

芸能人の年の差婚がニュースで話題になるため、「若い女性との年の差婚をする中年男が増えている」と錯覚する向きもあるようだが、そんな事実は存在しない。むしろ年を取った男性はどんどん結婚できなくなっていると考えるべきである。

夢見がちな中年婚活男性

さらに追い打ちをかけるようで申し訳ないが、若い女性と結婚できる中年未婚男性もごくわずかしかいない。2019年の人口動態調査で、40~59歳までの未婚男性が初婚で10歳以上年の若い女性と結婚できる割合は、たったの0.2%。1000人に2人しかできていない。芸能人や資産家でもない一般の男性が、若い子と初婚で結ばれるなんてことは幻に過ぎないのだ。

写真:milatas/イメージマート

いつまでも幻を追い求めて「若い女」に固執する未婚男性だけがいつまでも結婚できないことになる。しかし、それは高年収の男を探し回る婚活女性にも当てはまることでもある。「玉の輿」も「トロフィーワイフ」も一部のごく少数の人にしか実現できない「現代のおとぎ話」なのだ。

万が一奇跡が起きて、「若い子がいい」という条件を出す中年婚活男性の目の前に、望み通りの若い相手が紹介されたとしよう。告白して撃沈するならまだマシなのだが、そういう場合でも「あーでもない、こーでもない」と理由をつけて、彼は告白すらできないし、しないだろう。

もしかしたら、自分の脳内の中で「いつになっても現れることのないお姫様」を妄想することの方が彼にとっては幸せなのかもしれない。

※記事内のグラフの無断転載は固くお断りします。

こうした状況の結果はこういう人口動態となって表出します。

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独身研究家/コラムニスト/マーケティングディレクター

広告会社において、数多くの企業のマーケティング戦略立案やクリエイティブ実務を担当した後、「ソロ経済・文化研究所」を立ち上げ独立。ソロ社会論および非婚化する独身生活者研究の第一人者としてメディアに多数出演。著書に『「居場所がない」人たち』『知らないとヤバい ソロ社会マーケティングの本質』『結婚滅亡』『ソロエコノミーの襲来』『超ソロ社会』『結婚しない男たち』『「一人で生きる」が当たり前になる社会』などがある。

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