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トランプ流の退任の仕方とは? 逆転勝利ならずか 米大統領選

飯塚真紀子在米ジャーナリスト
トランプ氏はどんな形でホワイトハウスを去るのか?(写真:ロイター/アフロ)

 12月8日、ペンシルベニア州の連邦最高裁は、不正選挙が行われたという理由で敗北確定の差し止めを求めていたトランプ陣営の訴えを棄却した。

 同じ12月8日、米連邦法の下、ジョー・バイデン氏の大統領選勝利が基本的に確定した。AP通信によると、ウィスコンシン州を除くすべての州が「避難港の日」を迎えたという。

 「避難港の日」とは、12月14日の選挙人団による投票を前に、州が認定した集計結果を連邦議会や裁判所が最終的に受け入れる日である。この日が過ぎたら、連邦議会も裁判所も異議申し立てをすることが難しくなるのだ。

 つまり、トランプ陣営は、これまでのように再集計を求めたり、訴訟を起こしたりすることが困難になる。

 選挙結果を覆そうとするトランプ陣営の戦略はもはや失敗に終わったと言っていいだろう。トランプ氏の逆転勝利への門戸はほぼ閉じられた。

大統領就任式の視聴者を奪う

 そんな中、トランプ氏がどのように退任するかが注目されている。

 オンラインニュースサイトアクシオスが関係筋から掴んだ情報によると、トランプ氏は、バイデン氏の1月20日の大統領就任式当日、マリーン・ワン(大統領専用ヘリコプター)でホワイトハウスから飛び立ち、エアフォース・ワンに最後の搭乗をしてフロリダ州に向かい、政治集会を開くというのである。

 もちろん、そうなると、メディアは、トランプ氏の1日を一部始終報じるだろう。

 トランプ流の退任方法。それは、米国民が視聴するバイデン氏の大統領就任式に合わせて、テレビ向けに“華麗なるフィナーレ”を演じ、就任式を視聴している米国民のアテンションをさらうことなのか。トランプ氏は視聴率ではバイデン氏に勝つことができると見込んでいるのかもしれない。

 NBCテレビは、先週、バイデン氏の大統領就任式の日に、トランプ氏が2024年の大統領選立候補の発表を行なう計画をしていると報じたが、トランプ劇場のフィナーレが新トランプ劇場の始まりとなる可能性もある。

 しかし、このシナリオでは、予想されていたことではあるが、トランプ氏はこれまでの慣習を完全に破ることになる。敗北宣言をすることなく、ホワイトハウスにバイデン氏を迎え入れることもなく、大統領就任式にも参加しないわけであるから。

 CNNのインタビューで、バイデン氏は「個人的には、トランプ氏が自身の大統領就任式に参加しなくても気にしないが、同氏の参加は米国にとって重要だ」と言及していた。バイデン氏は平和的な政権移行を行なうことで、米国の民主主義が健在であることを世界に示す必要性を感じているのだ。

 もっとも、トランプ陣営の報道官はアクシオスの報道を否定しており、「トランプ大統領が何を考え、何を考えていないかを知っているという匿名の情報筋は全くわかっていない。トランプ氏が1月20日の予定を発表する時にわかるだろう」と話している。

フロリダから戻らない

 一方、トランプ氏はクリスマスホリデーをフロリダ州にある別荘「マー・ア・ラゴ」で過ごし、そのままホワイトハウスに戻らないのではないかとみているホワイトハウス関係者もいるという。

 9月、トランプ氏の元顧問弁護士で、腹心だったマイケル・コーエン氏も同様の発言をしていた。

「トランプ氏が敗北宣言をしないとしても全然驚くに当たらない。彼はクリスマスにマー・ア・ラゴに行き、バイデン氏の大統領就任式もそこに滞在するのではないかと思う。彼が就任式に参加しないとしても驚くに当たらない。彼は自分にカメラを向けさせることはできないだろう。彼は敗者であり、敗者であることは彼を破壊することになるのだ」

 退任後はフロリダ州に引っ越すとも言われているトランプ氏。実際、トランプ氏を迎えるべく、マー・ア・ラゴの改築工事が進んでいるようだ。

 トランプ氏は、次の大統領選に向け、そこからバイデン政権の動きをウオッチしては批判する反体制運動の旗手になるのだろうか?

 先回の投稿で、トランプ氏が共和党を支配し続けていることを示唆する調査結果が出たことについて書いたが、トランプ氏は闇将軍として共和党に進言し、君臨し続けることになるのかもしれない。

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在米ジャーナリスト

大分県生まれ。早稲田大学卒業。出版社にて編集記者を務めた後、渡米。ロサンゼルスを拠点に、政治、経済、社会、トレンドなどをテーマに、様々なメディアに寄稿している。ノーム・チョムスキー、ロバート・シラー、ジェームズ・ワトソン、ジャレド・ダイアモンド、エズラ・ヴォーゲル、ジム・ロジャーズなど多数の知識人にインタビュー。著書に『9・11の標的をつくった男 天才と差別ー建築家ミノル・ヤマサキの生涯』(講談社刊)、『そしてぼくは銃口を向けた」』、『銃弾の向こう側』、『ある日本人ゲイの告白』(草思社刊)、訳書に『封印された「放射能」の恐怖 フクシマ事故で何人がガンになるのか』(講談社 )がある。

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