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傲慢?それとも母親みたい? 注目を集めたのはカマラ・ハリス氏の表情だった 米副大統領候補討論会 

飯塚真紀子在米ジャーナリスト
討論会で豊かな表情を見せたカマラ・ハリス副大統領候補。写真:NYPOST.com

 今回の大統領選では最初で最後だった米副大統領候補討論会。

 「めちゃくちゃだ」「史上最悪だ」と酷評された第1回目の大統領候補討論会と比べれば、極めて礼儀正しい姿勢で行われたまともな討論会だったが、エキサイティングさには欠けた。視聴者からは「使い古された同じ主張を聞いた」との声もあがった。

 確かに、ペンス氏の頭にとまったハエの方に視聴者の視線が集中するほど、両候補の主張にはこれといった新しさも感じられなかった。

 そんな中、注目を集めたのが、ハリス氏の表情だ。

 一貫して落ち着いた表情を見せたペンス氏に対し、ハリス氏は、様々な種類のスマイルを見せたり、呆れた様子で目を動かしたり、しかめっ面をしたりと表情が豊かだった。

傲慢で見下した表情?

 しかし、そんなハリス氏の表情に対し、保守派からは批判の声があがっている。

 保守派のFOXニュースはハリス氏の表情について「気まずそうなスマイルを浮かべて、首をよく振っていた。弱く見えた。深みがなく、副大統領になる準備ができていないように見えた」と叩いた。

 FOXニュースの元看板司会者のビル・オライリー氏も「ハリス氏は弁舌爽やかに話したが、傲慢に見え、表情で損をしている」と批評。他にも保守派からは「ハリス氏の得意気な表情は好ましくなかった」「ハリス氏の表情は非常に不快だった。彼女の大負けだ」「見下しているように見えた」「ハリス氏はポーカー・フェイスを見せるのを忘れていた」などの声があがっている。

ペンス氏の嘘に呆れ顔

 一方、民主党寄りのCNNは「ハリス氏のスマイルは効果的だった。思慮深い様子も示していた」と高評価。

 ボディ・ランゲージのエキスパートのパティ・ウッド氏も、彼女の表情を褒めている。

「間違っていることを話しているペンス氏に対し、ハリス氏が笑顔を返したのは素晴らしいわ。“信じられない”という気持ちを笑ったり、首を振ったりして表現したのは、とてもソフトな対応よ。ペンス氏に話を中断された時、大きく笑い、頭を傾げ、しっかりとした低い声で話したハリス氏は、まるで子供の間違いを正している母親のようだった。彼女は怒ることもできたかもしれないけど、それをコントロールした」

 また、人気のショー“サタデー・ナイト・ライブ”に出演しているコメディアンのクリス・レッド氏もペンス氏の表情を絶賛している。

「ハリス氏の表情には、これまで見た中では、最もよく“こんな嘘つかれるなんて信じられない”という気持ちがあらわれていた」

 要するに、ハリス氏はそれだけ、ペンス氏の発言の中に嘘を見出し、心底呆れてしまったのだろう。

 一方、ペンス氏の表情はどうだろう?

 CNNは「目が血走っており、ハエも飛んできて、ハッピーな戦士には見えなかった。守りの姿勢に見えた」と低評価しているが、対するFOXニュースは「タフで、強い。主張を明確に述べていた。落ち着いていて、統率力があった」と高評価している。保守派はポーカー・フェイスを見せていたペンス氏に強さを見出したということだろうか。

軍配はどちらに?

 両候補の表情が副大統領候補討論会の勝敗にどの程度影響を与えたかはわからないが、討論会後の世論調査結果を見てみると、CNNの調査では59%の人々がハリス氏に軍配を上げたのに対し、ペンス氏の勝ちとした人々は38%。一方、FOXニュースの調査では、69.7%の人々がペンス氏に軍配を上げ、ハリス氏の勝ちとした人々は30.3%だった。

 結局のところ「討論会は、有権者が誰に投票するかということには影響を与えない」という声も多い。それに、もはや何を持ってしても状況が一変することがないほど、トランプ政権下のアメリカでは、リベラル派と保守派の間に生じている分断がいっそう深まってしまっている。

 ハリス氏の表情を保守派が酷評し、リベラル派が評価したところで、結局、選挙結果は変わらないというのが本当のところかもしれない。

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在米ジャーナリスト

大分県生まれ。早稲田大学卒業。出版社にて編集記者を務めた後、渡米。ロサンゼルスを拠点に、政治、経済、社会、トレンドなどをテーマに、様々なメディアに寄稿している。ノーム・チョムスキー、ロバート・シラー、ジェームズ・ワトソン、ジャレド・ダイアモンド、エズラ・ヴォーゲル、ジム・ロジャーズなど多数の知識人にインタビュー。著書に『9・11の標的をつくった男 天才と差別ー建築家ミノル・ヤマサキの生涯』(講談社刊)、『そしてぼくは銃口を向けた」』、『銃弾の向こう側』、『ある日本人ゲイの告白』(草思社刊)、訳書に『封印された「放射能」の恐怖 フクシマ事故で何人がガンになるのか』(講談社 )がある。

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