Yahoo!ニュース

結婚の条件「3高」以前にもあった「家付き・カー付き・ババア抜き」と100年前の男女条件の不一致

荒川和久独身研究家/コラムニスト/マーケティングディレクター
(写真:アフロ)

「3高」「3平」「4低」…

かつて、バブル全盛期だった頃の1986-87年に、モテる男性の条件として「3高」という言葉が流行した。

「3高」とは「高身長・高学歴・高収入」という意味である。

それからバブルが崩壊し、長い「失われた時代」に突入し、2000年ごろには就職氷河期が訪れたかと思いきや、2009年にはリーマン・ショック後の不景気にも襲われ、経済環境は30年近く停滞したことは周知の通りである。

その間、結婚相手に求める条件も「3高」から時代に合わせて変化した。

まず、長引く不景気の影響からか、「3平」というのが出てきた。

「3平」とは、「平凡な外見・平均的な収入・平穏な性格」というものである。要するに「3高」のような高望みをしても、現実にそんな男はいないのだから「平均的でありさえすればいい」というように条件が緩和されたのだ。

さらに、続いて「4低」なるものが出てくる。

「4低」とは、「低姿勢・低依存・低リスク・低燃費」というもので、詳しくいえば、妻や子に威張った態度をとらない低姿勢、家事や子育てを妻にまかせっきりにしない低依存、リストラにあうリスクが少ない低リスク、無駄なお金を使わない低燃費ということらしい。いかにも収入があがらない時代の空気感を反映しているかがわかる。

その後の雨後のタケノコのように、いろんな機関がここ適当にいろいろな条件を出している。

「3NO」という「暴力をしない・借金をしない・浮気をしない」という、一体この人は今までどんな男性と付き合って来たのかと勘繰りたくなるようなものもあれば、「3生」という「生存力・生活力・生産力」というもはや単なるサバイバル力じゃないかと思われるものも出てきた。

他にも「3優」「3温」「3強」「YSK」などいろいろあるが、「3高」以外はそのほとんど「聞いたことない」と思われるものが多いだろう。それも当然で、一般に認知されるほど広まってはいない。

結婚は経済生活

結局、「3〇〇」と言い方を変えてバリエーションを出しているが、時代や景気が変わっても「経済力」という部分は常に残っている。

何より「3高」と言っていた世代が生まれたのは1960年代であるが、その1960年代に結婚した女性たち(「3高」世代の母親)が結婚に際してどういう条件を出していたかというと「家付き・カー付き・ババア抜き」というものだ(1960年の流行語)。

一戸建てと自家用車を保有できる経済力があり、姑がいないことが条件だったのである。母娘通じても何も変わっていない。

写真:アフロ

それも当然で、こと結婚というものに関しては「経済生活」であるので、そこは前提条件として揺るがないのである。

1980年代から継続調査している出生動向基本調査においても、女性の求める結婚相手の条件として「男の経済力」は常に高い割合をキープしている。

但し、最近この「経済力」に加え、「男の容姿力」が近年求められるようになってきている傾向がある。結婚相手として「男の容姿」を重視する割合は、1992年と比して13.5ポイントも増えている。経済力だけではなく容姿も求められるようになっているのである。

もはや無理ゲーとなった結婚~「金」も「顔」も両方なければ選ばれない

一方で、女性側も従来の「容姿」や「年齢」だけではなく、「経済力」を求められるようになってきている。その割合は、1992年対比で21.5ポイントも増えている。

つまり、男女とも「経済力」と「容姿」がなければ結婚できなくなっているということなのだ。未婚率が高まるのは当然だ…といったら言い過ぎだろうか。

100年前の昭和初期も変わらない

結婚において女性の経済力を求める男性が増えているというのは、いかに現代の男性たちの経済環境、特に給料事情が良くないということを示していると言えるのかもしれない。

しかし、男性が結婚相手の女性に経済力を求めるのは令和の今だからという話ではいない。100年前とてそれほど変わっていない。

1927年(昭和2年)の読売新聞にこんな記事がある。

男はともかせぎ 女はお金持ちを望む この頃の結婚希望者

希望がちぐはぐでなかなかまとまらぬ

これは、無理な注文ばかりを勝手に並びたてる独身男女に結婚媒介所の人たちが呆れかえっているという記事である。

具体的にいえば、まず、女性側の要望では「学歴などはあまり重視しない。勿論バカでは困るが(原文ママ)、財産さえあれば少々教育程度が低くても我慢する。なぜなら、結婚後はさっさと仕事をやめて主婦として家庭におさまりたいから。さらに条件はそれだけではなく、兄弟姉妹が多くないこと、容貌体格がすぐれていること」まであげている。

男性側も負けていない。「第一に容貌の美しい事、第二に職業婦人である事」をあげて譲らない。つまり、稼ぎのない専業主婦は真っ平御免だというのである。

それもそのはず、昭和初期の日本のジニ係数は、0.51もあった。現代は0.33程度である。それくらい貧富の格差は激しく、多くの庶民が貧困にあえいでいた時期でもある。

昭和初期も婚姻率が減少

事実、婚姻率も1920年代後半から1933年にかけて、10年以上に渡って右肩下がりに下降し続けている。戦前にも非婚化時代があって、その背景には経済環境の悪化がある。

昔も今も、実は本質的な部分では変わってなく、結婚はずっと昔から経済問題なのである。決して、若者の結婚意識の価値観の変化などではない。

その後、婚姻率が急転上昇しはじめているが、これは別に経済環境が良くなったわけではないし、男女結婚観に変化があったわけではない

折しも、それと前後して1931年には満州事変が勃発、日本は国際連盟から脱退し、第二次世界大戦の足跡が近づいてきた時期である。

婚姻数が増えたのは、兵隊の数を増やしたいがために陸軍の中から発生した厚生省と当時のマスコミが結託し「生めよ、殖やせよ」の号令を発して、「男の財産とか女の稼ぎとか言ってる場合ではない」という方向に無理やり持っていったがための産物なのである。

関連記事

「夫婦二馬力で稼げばいい」と言うが…。専業主婦夫婦が減っている分だけ婚姻数が減っているという事実

「結婚なんて無理」20代後半の若者の半分が年収300万円に達しない国・令和のニッポン

結婚したいのにできない若者が4割~「不本意未婚」増大した若者を取り巻く環境

-

※記事内グラフの商用無断転載は固くお断りします。

※記事の引用は歓迎しますが、著者名と出典記載(当記事URLなど)をお願いします。

独身研究家/コラムニスト/マーケティングディレクター

広告会社において、数多くの企業のマーケティング戦略立案やクリエイティブ実務を担当した後、「ソロ経済・文化研究所」を立ち上げ独立。ソロ社会論および非婚化する独身生活者研究の第一人者としてメディアに多数出演。著書に『「居場所がない」人たち』『知らないとヤバい ソロ社会マーケティングの本質』『結婚滅亡』『ソロエコノミーの襲来』『超ソロ社会』『結婚しない男たち』『「一人で生きる」が当たり前になる社会』などがある。

荒川和久の最近の記事