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戦隊ヒロインから10年。結婚を焦る役で「イメージとのギャップを越えて自分らしさを提示できました」

斉藤貴志芸能ライター/編集者
ヘア&メイク/KANA SAKURAI(HITONE) (C)ABC

10年前に『烈車戦隊トッキュウジャー』のカグラ/トッキュウ5号役から注目された森高愛。現在、ドラマ『離婚後夜』で主人公の離婚した小説家の親友役で出演している。明るく裏表のない性格で、交際中の同僚との結婚を願う役どころ。10年の間には、成長する自分とイメージとのギャップに戸惑う時期もあったそうだが、この作品が新たな転機になったという。

原作を読んで「髪を切らなければ」と

――『離婚後夜』の目黒実咲役のために、人生初のショートカットにしたんですよね。

森高 そうです。原作の実咲がショートで、「切らなくてもいい」と言われてましたけど、自分から「切りたいです」とマネージャーさんにお話ししました。

――前からショートにしたい気持ちがあったんですか?

森高 いえ、まったく念頭になかったです。でも、この役をいただいて原作を読んだとき、「これは切らなくては」という気持ちに駆り立てられました。

――生活で変わったこともあります?

森高 もう本当に変わりました。お風呂も楽。シャンプーは2~3プッシュしてたのが半分以下になって、一生減りません(笑)。撮影中はトリートメントもしませんでした。髪質が細くてサラサラなので、ショートでトリートメントをするとペタッとしちゃうんです。弟を知っている友だちには、「どっちが愛かわからない」と言われました(笑)。

――誰か有名人に似てると言われたりは?

森高 SNSに髪を切った写真を載せたら、「長澤まさみさんに似てる」と言ってくださる方がいて、そんな恐れ多い……と思いました。でも、ショートが似合うのかわからなくて怯えながら切ったので、思ったより好評で良かったです。

恋愛の先で悩む年齢だと痛感していました

――実咲は森高さんの実年齢と同じ26歳。恋人とひたすら結婚したがっているのは、リアルに感じますか?

森高 中学の同級生が同棲しようか考えていたり、プロポーズはされたけど結婚してなかったり、恋愛の先のステップで悩んでいるという話が周りで多くて。私もいよいよそんな年齢に差し掛かってきたんだと、この半年くらいで痛感していたところです。

――その年齢でつき合っていながら、結婚の話をしてこない彼氏への不満もわかりますか?

森高 実咲は営業職で働いていて、大学を卒業して4~5年目で、生活も落ち着いてきたと思うんです。そうなると結婚が悩みの種になるのは、友だちのサイクルを見ていてもわかります。1話で香帆の結婚生活の話を聞いていたら幸せそうだったので、私自身もいいなーと思いました。

料理は分量の感覚がわからなくて修業中です

――実咲の恋人のリュウジは会社の同期。香帆と離婚する夫やその浮気相手も同じ会社で、なかなか色恋の盛んな広告代理店ですね(笑)。

森高 いちおう社内恋愛禁止という設定です。なのに、みんな堂々としてますよね(笑)。実咲も社内恋愛してますけど、リュウジとのシーンはあまり大きい声を出さないほうがいいとか、話し合っていました。

――実咲は花嫁修業で料理教室に入会して、エッグベネディクトを作っていました。森高さんはお菓子作りを特技にしていますが、料理もするんですか?

森高 料理はですね、お菓子作りほどではないです(笑)。今のところ、レパートリーはポテトサラダとオムライス。でも、エッグベネディクトは作れます。

――難易度が高くないですか?

森高 お菓子作りは分量が決まっていて、それを守らないと絶対おいしくなりません。エッグベネディクトもどちらかというと、そういう料理なんです。普通の料理のレシピだと、「きつね色に」とか「ひとつまみ」とかが多くて、私はその感覚がわからなくて修業中の身なんです。でも、エッグベネディクトは「大さじ2」とか「バター何グラム」とか、決まった分量があるから作れます。

(C)ABC
(C)ABC

友だちに明確に好きなところはなくて

――実咲にとって親友の香帆は、どんな存在だと捉えていますか?

森高 どこが好きなんだろうと考えたんですけど、「ここがこうだから好き」みたいなことではなくて。明確に好きなところがあったら、逆にそこが変わってしまうと、一緒にいる理由がなくなる気がします。ずっと友だちなのは、居心地の良さや何となく気が合うということなんだろうなと、この作品を通して気づきました。実際の自分の友だちでも、どこが好きなのかは意識しませんから。

――香帆には「いつも私ばっかり愚痴ってごめん」と言ってました。

森高 話を聞いてくれたり、自分にない感覚や考えを補い合っているのは感じます。香帆はやさしいと思います。

「辛かったら行くよ」という気持ちに救われました

――森高さんにもそんな親友がいますか?

森高 イヤなことや聞いてほしいことがあったとき、連絡したいと思う子は、パッと何人か頭に浮かびます。

――そういう親友に、辛いときに救われた経験も?

森高 あります。ガクッと落ち込んでしまったときに連絡をもらって、「いつでも駆け付けるからね」と言ってくれました。たぶん私の状況を感じ取って、「どうした? 大丈夫?」ではなく「辛かったら行くよ」みたいな。その気持ちに救われました。私もそういう友だちをもっと大切にしたいと、改めて思ったのが実咲役にも反映されている気がします。

――インスタでは、戦隊で一緒だった小島梨里杏さんと伊勢旅行をした写真などが上がっています。

森高 りりも私が元気ないときにそばで支えてくれて、いろいろなところに連れ出してくれます。りりが元気ないときは私が行くし、家族みたいな存在ですね。

弱さを見せるシーンで苦戦しました

――『離婚後夜』の撮影で、特に印象に残っていることはありますか?

森高 私のクランクアップのとき、香帆役の(久保田)紗友ちゃんの素敵なシーンがあったんです。それを見たとき、「この子を一生、手放したくない」みたいな気持ちになりました(笑)。実咲としても私としても「ずっと幸せでいてほしい」という。一瞬のシーンでしたけど、心がとても温かくなりました。

――演技的に悩むことはなかったですか?

森高 リュウジとの決別を吐露するシーンは苦戦しました。実咲は人の話を聞いたり愚痴を言うことが多くて、自分の弱いところを見せるシーンはあまりなかったんです。誰かのことを思って怒るのもエネルギーが要りますけど、私の性格もあるのか、自分の気持ちを話すのはこんなに難しいのかと思いました。

――「実咲を通して、自分の大切な人って? 物って? 改めて考え気付かされた」とのコメントもありました。

森高 人生の岐路に立ったときに声を掛けてくれる人は、家族でも友だちでも本性が出ると思うんです。それを香帆と実咲や他の登場人物たちの関係性を見て、すごく感じました。どうしたらいいんだろうと迷ったとき、人と人との繋がりを大切にしていきたいと気づけました。

――迷ったときこそ。

森高 私は何かあったら、母親に話すことが多いです。聞いてもらって、自分の言葉で発することで整理されていくので、私の中では大きなルーティンです。

自分と近い役で新たな可能性が広がって

――まさに森高さんの岐路になった『烈車戦隊トッキュウジャー』からは、今年で10年になります。

森高 あっという間のようで、長かった感覚もあります。10年経った節目に、今回の『離婚後夜』がまたターニングポイントになった気もしていて。お話をいただいたきっかけが、監督のワークショップに行ったことでした。

――10年やってきて、今でもワークショップにも参加しているんですか。

森高 よく行っています。その中で自分の可能性が新たに広がった作品ですし、自分とこれだけ近しい役は、大人になるほどなくなっていたんです。高校生役だと自分も同じだったのが、社会人役になると経験ないことが増えてきて。実咲みたいにまっすぐで自分と近いものを持っている役は、もう出会わないかもしれないと思っていました。近すぎて、うまく演じられるか不安もありましたけど、監督が「森高さんに合うと思う」と言ってくださったことが嬉しくて、きっと転機になると思いました。

元気さから脱却するか突き詰めるか

――10年前の自分の映像を目にすることもありますか?

森高 『トッキュウジャー』が記念イヤーで配信していると聞いて、チラッと見たりしましたけど、何かもう恥ずかしくて(笑)。その頃の私を知らない友だちが「戦隊をやっていたの?」と画像を検索して、「全然イメージが違う」と言われると、私も大人になったなと実感します(笑)。

――10年の間には行き詰まりを感じた時期もありました?

森高 自分が大人になるにつれて、『トッキュウジャー』のカグラのピンクでツインテールのイメージとはどんどん乖離して、戸惑いはありました。世間のイメージと自分自身のギャップが大きくなって、一方で私の声質や立ち居振る舞いは変わらないから、元気で明るい役をいただくことも多くて。そこから脱却したいけど、そういう役を突き詰めていきたい気持ちもある。そんな狭間がありました。

――その辺は今は消化できたんですか?

森高 そうですね。実咲役をいただいたことで、自分らしくいることが恥ずかしくないというか、「私はこういう人です」と提示できた気がします。そこは成長できました。

ライブでオタクネタを探してメモしてます

――8月にTikTokを毎日更新していたのは、どんな意図からだったんですか?

森高 夏休みに楽しんでもらえるかなと、軽い気持ちで始めたんですけど、自分の首を絞めている気もしました(笑)。でも、みんなと交流できて、やって良かったなと感じます。私は言ったことを実行できるんだと、自分の励みにもなって。

――「計画性ないオタクたち」シリーズも面白かったです。ネタも自分で考えているんですか?

森高 ネタ作りも構成も撮影も編集も全部自分でやっています。「計画性ないオタクたち」はシリーズ化して6本くらいできたらいいなと、結末を考えずにやっていたら、10何本めでやっとライブ会場に入れて(笑)。何とかホテルまで帰って終われました。

――音漏れネタとかは経験に基づいていたり?

森高 リハーサル中の音漏れが会場の外で聞こえたり、身分証を持ってなくて慌てている子を見たりすると、ネタにしようと思います。ライブに行っては日々メモっています(笑)。

お芝居をたくさんやって応援の恩返しを

――森高さんはLE SSERAFIMやFRUITS ZIPPERの推し活をしているんですよね。

森高 そうです。FRUITS ZIPPERは秋のツアーのチケットは取ったんですけど、距離が近いリリイベは人気すぎて取れませんでした。オタク心で日々いろいろチェックしています。それが結果、お仕事に繋がっているのが不思議な感覚です。

――TWICEのガチ勢の女優さんが「仕事では会いたくない」と言ってました。

森高 わかります。私もイヤです。推しとお芝居の現場で共演したら、どうしたらいいのかわかりません。すっぴんは見られたくないし(笑)。

――森高さんを推しているファンの方には、どう返していきますか?

森高 私も推しがいる分、応援してくださる方の大切さ、ありがたさは身に染みて感じています。ちょっと落ち込んでいることを察して、エールを送ってくれる方もいたり、みんな何でこんなに温かいんだろうと。そんな皆さんが元気でいてくれたら、私も幸せです。お芝居で観てもらえる機会をもっと増やして、私が元気を与えられたら一番ですね。

――そうなるためにやっていきたいことも?

森高 専門職の役をあまりやったことがないんです。お医者さんの役とかどんどんチャレンジして、自分の幅を広げていけたら。そうやって皆さんに恩返しをしたいと、日々考えています。

Profile

森高愛(もりたか・あい)

1998年1月14日生まれ、埼玉県出身。2014年に『烈車戦隊トッキュウジャー』でドラマ初レギュラー。主な出演作はドラマ『三千円の使いかた』、『週末旅の極意~夫婦ってそんな簡単じゃないもの~』、『ジャンヌの裁き』、映画『俺物語!!』、『人狼ゲーム ラヴァーズ』、『ただ、あなたを理解したい』など。ドラマ『離婚後夜』(ABCテレビ・テレビ朝日系)に出演中。公式TikTok:@ai_moritaka

ドラマL『離婚後夜』

ABCテレビ・日曜24:10~ テレビ朝日・土曜26:30~

公式HP

芸能ライター/編集者

埼玉県朝霞市出身。オリコンで雑誌『weekly oricon』、『月刊De-view』編集部などを経てフリーライター&編集者に。女優、アイドル、声優のインタビューや評論をエンタメサイトや雑誌で執筆中。監修本に『アイドル冬の時代 今こそ振り返るその光と影』『女性声優アーティストディスクガイド』(シンコーミュージック刊)など。取材・執筆の『井上喜久子17才です「おいおい!」』、『勝平大百科 50キャラで見る僕の声優史』、『90歳現役声優 元気をつくる「声」の話』(イマジカインフォス刊)が発売中。

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