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もはや無理ゲーとなった結婚~「金」も「顔」も両方なければ選ばれない

荒川和久独身研究家/コラムニスト/マーケティングディレクター
(写真:イメージマート)

結婚相手の条件

結婚相手を「男は顔で選び、女は金で選ぶ」。

こういうことを言うと、いろんな界隈から非難の声があがる場合があるが、非難したところで実際はそうなっているのだから仕方がない。婚活の現場でも、長らくこういうことが定説として言われてきたのも事実である。

「顔」と「金」が結婚に関係ないのであれば、結婚相談所でも婚活マッチングサービスでも相手の写真も年収欄も不要だろう。

2019年内閣府「少子化対策に関する調査」では、20-49歳までの未婚男女に対して「結婚相手に求める条件で重視する項目」を聞いているが、その男女差分を見ると、男より女がもっとも重視するポイントは「経済力」であり、女より男がもっとも重視するポイントは「容姿」と「年齢」である。

男女において、明確に重視するポイントが異なり、「女は金で、男は顔(年齢)」なのである。

但し、その重視したい希望条件を全員がかなえられるわけではない。

特に、「男は金」と言われても、1990年代から30年も続く「失われた給料時代」にもっとも影響を受けた20代の未婚男性の所得は一向にあがらず、2017年の就業構造基本調査の時点でも、25-29歳未婚男性の約半数が年収300万未満である。

本当は「年収500万円以上」と言いたい婚活女性が、「年収400万円でも我慢するわ」と最大限妥協したところで、そんな未婚男性も3割もいない。

マッチングアプリでは「年収500万円以上なんてザラにいる」と言うが、それが独身男性であるという保証はない。かくして婚活の現場では「(条件通りの)相手がいない」ということになるのである。

大きく変わった結婚相手の条件

ところが、この定説だった「男は金、女は顔」という条件が最近大きく変化した。

2021年の出生動向基本調査によれば、女性側が結婚相手の男性に求める条件として、「容姿」の重視割合が1992年の調査以降の過去最高記録の81.3%となったのだ。これは、男性が条件としてあげる女性の「容姿」の重視割合と一緒の値である。

写真:イメージマート

かといって、別に「男の金」条件が減少したわけではない。「金」は相変わらず必要なのだが、「金」+「顔」が求められてきたのである。

興味深いのは、条件が変わってきたのは女性だけではなく、男性も重視するポイントとして「女の金」が上昇した。これも「顔」の代わりに「金」ではなく、「顔」も「金」もなのである。

1992年を基準として、男女の求める条件のうち「経済力」と「容姿」の上昇差分をまとめたグラフが以下である。

女性の求める「男の容姿」は、1992年と比して13.5ポイントも増え、男性の求める「女の金」は、なんと同21.5ポイントも増えた

男性が女性の経済力を重視するようになった背景には、当然男性たちの所得が全然あがらないという事情もあるだろう。

しかし、女性とて相変わらず男性の経済力に関しては、2021年でも92%が重視しており、この条件変更によって男性の未婚率が解消されるかといえばそうはならない。

いくら女性が「男の顔」重視率があがったとはいえ、恋愛ならいざ知らず、こと結婚に関して「顔が良いだけで稼げない男」は選ばれない

欲張りになった末路は…

「世の中ね、顔かお金かなのよ」

これは、結婚の話題の際などによく引用される回文である(回文とは、上から読んでも下から読んでも同じ言葉になることを指す)。

しかし、もはや令和の時代においては、「顔す金か」というどちらか一方があれば条件を満たすのではなく、「男も女も顔とお金の両方揃っていなければ相手にされない」ということになる。

提供:イメージマート

男性側にしてみれば、元々「年収いくら以上」みたいな条件を突きつけられて、婚活から降りる男性も多い中で、さらに「容姿」まで求められてしまっては、そもそも婚活に参加しようとする者がいなくなるのではないだろうか。

女性側にしても、自分ひとりで経済的自立が図れる収入があるのであれば、わざわざ結婚する必要来を感じなくなるだろう。実際、そういう「選択的非婚」女性は増えている。

かくして、男女とも婚活の舞台から去り、独身5割の「ソロ社会」へ、まっしぐらである。

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独身研究家/コラムニスト/マーケティングディレクター

広告会社において、数多くの企業のマーケティング戦略立案やクリエイティブ実務を担当した後、「ソロ経済・文化研究所」を立ち上げ独立。ソロ社会論および非婚化する独身生活者研究の第一人者としてメディアに多数出演。著書に『「居場所がない」人たち』『知らないとヤバい ソロ社会マーケティングの本質』『結婚滅亡』『ソロエコノミーの襲来』『超ソロ社会』『結婚しない男たち』『「一人で生きる」が当たり前になる社会』などがある。

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