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36年ぶり「ドラクエ3」体験の40代女性 どこでつまづいた?

河村鳴紘サブカル専門ライター
「HD-2D」のグラフィックでリメークされた「ドラゴンクエスト3」のゲーム画面

 人気ゲーム「ドラゴンクエスト3」が、ドット絵と3DCGを組み合わせた「HD-2D」の美しいグラフィックでリメークされ、14日に発売されました。1988年発売のファミコン版(原作)で熱狂したであろう人たちがSNSで話題にしていますが、そうでないユーザーにはどう映っているのでしょうか。かつて同作を手に取ったものの、クリアできずに挫折した40代女性に挑んでもらいました。

 「ドラクエ」の愛称で知られる「ドラゴンクエスト」シリーズは、自身が主人公となって世界を脅かす敵を倒すために冒険をするRPGです。1988年の「3」の発売時は大変な人気となり、ソフトを求めて長い列ができ、学校を休んで買いに行った学生が補導され、メディアに取り上げられるなど社会問題になりました。今とは違ってインターネットのデジタル販売などはない時代のお話です。

◇仲間作成に苦労 装備を整えず戦闘へ

 「HD-2D」を見て「遊びたい」と言った40代女性に、PS5版を遊んでもらいました。女性はスマホゲームはそこそこ遊ぶライトユーザーです。ファミコン版「ドラクエ3」の思い出を聞くと「戦闘が面白くて遊んだ。でも何をしていいか分からずクリアしてない」ということでした。なお、助言は基本していません。

 誰もが気軽にプレーできるはずの「ドラクエ」ですが、意外にも最初で連鎖的につまづきました。まず最初の「まことの名前」を聞かれたところで、「どういう意味? どうすればいいの?」と困惑。自分の名前をゲームに打つのは抵抗があるらしく、結局ハンドルネーム(仮の名前)を打っていました。

 名前も決まってゲームが始まり、王様のあいさつが終わった後で、仲間を集めるため「ルイーダの酒場」に行くのですが、そこでも苦戦しました。理由は、仲間を自分で作ろうとしたものの、よくわからなかったためです。キャラクターの外見作成で「ルックスA」「ルックスB」の選択に「この違いは何? 男?女?」と首をかしげていました。さらに職業の種類、髪の色を見て、選択肢が多すぎて戸惑ったのです。その場合、最初から用意されている仲間を起用するといいのですが、そこは「気分が乗らない」とか……。

 「ああでもない」「こうでもない」と迷った末に「まもの使い」「魔法使い」「僧侶」を仲間にしました。昔の記憶をたどって、そうであればチームとしてのバランスが取れていると考えたそうです。正直、「戦士」「武闘家」「遊び人」というチームを組まれたら、どうしようかと思いましたが……。

 町の中を探索して「つぼ」や「タンス」を調べることもなく、装備を整えず、すぐ戦闘を求めて町の外に飛び出していきました。ゲームでは装備についても説明していたのですが、覚えてないそうです。

 後々装備のコマンドで「△ボタン」を使うとオートで最適な装備ができることに気づいたのですが、「1人1人にするのが面倒くさい」とも。人間は誰しも、自分の視点(価値観)で最短距離の「楽なこと」を求めるものか……思いました。

◇充実のサポート&ゲームバランス

 こんな適当な冒険なのですから「全滅の確率大」と予想していましたが、そうならないのがすごいところです。優れたサポートシステムのおかげもあって、それなりに順調なのです。戦闘は元々デフォルトで自分以外がオートになっていて、目的地も示されていますから、行き先が明確に分かるのです。

 スタートした城(アリアハン)から、次の街(レーベ)に行き、地下道を抜けて最初の塔(ナジミの塔)に。最上階に行く手前で塔から落下するトラブルがありながらも、それでも着実に歩みを進めて、数時間で次の城(ロマリア)にたどり着きました。宝箱は取りこぼしていますが、一度も全滅することなくたどり着きました。

 これは、ゲームバランスの賜物でしょう。戦闘でHPやMPが減っていくのですが、良いタイミングでレベルアップして回復するためです。なお途中、「つぼ」や「タンス」「たる」を調べるとアイテムが手に入ること、「ちいさなメダル」の存在も理解していきました。

 序盤をプレーした感想を聞くと「最初の仲間の設定などは、慣れている人でないと分からないのでは」「情報量が多い」「最初に何をするか、もっと強くプッシュしてほしい」とのこと。確かに最初のキャラ設定などで結構なつまづきがありましたが、本人のこだわりがなければ一気に行けそうであったのも確か。そしてゲームが始まると、一気にのめり込んでいました。ゲームは続けて遊ぶと疲れる体質なのだそうですが、数時間が経っていました。

 最も魅了されるポイントは、戦闘だそうです。オートでも敵に動きがありバリエーションの豊かな演出などがあるためか、見るだけで楽しいとか。父(オルテガ)を追っていくストーリーも気になるそうです。特にファミコン版では、何をしたらいいかわからず挫折したので、目的地の分かりやすさ、戦闘の手軽さなどを評価していました。

◇未プレーの人にどこまで遊んでもらえるか

 今回のリメークで最大のターゲットは、かつてファミコン版をクリアした人たちでしょう。ですが後々のことを考えると、「3」をクリアしてない……未プレーの人たち、今はゲームをしなくなった人たちに、いかに遊んでもらうかです。アシスト機能も充実しており、難易度のハードルをかなり下げることもできます。

 ニンテンドースイッチ版であれば通勤・通学の移動中にも遊べますし、今回はPC(Steam)もあります。そして「3」を初めてクリアした人は、発表済みの「1&2」(2025年発売予定)のリメークを手に取る“導線”になります。

 名作ゲームの活用、そして「HD-2D」の需要も含めてどこまで売れるのか。注目です。

サブカル専門ライター

ゲームやアニメ、マンガなどのサブカルを中心に約20年メディアで取材。兜倶楽部の決算会見に出席し、各イベントにも足を運び、クリエーターや経営者へのインタビューをこなしつつ、中古ゲーム訴訟や残虐ゲーム問題、果ては企業倒産なども……。2019年6月からフリー、ヤフーオーサーとして活動。2020年5月にヤフーニュース個人の記事を顕彰するMVAを受賞。マンガ大賞選考員。不定期でラジオ出演も。

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