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【お茶と健康】お茶は体に良い?今注目の緑茶の成分「ガレート型カテキン」について最新研究でわかったこと

日本茶ナビゲーター Tomoko日本茶インストラクター
海外では健康のために緑茶を選ぶ人も増えてきているそう

奈良時代に中国から「薬」として日本に入ってきたお茶。

今では薬ではなく嗜好品の一つで、ペットボトルで飲まれることも多くなっています。

なんとなくお茶が体に良いらしい、と知っていても、具体的にどんな成分がどういう働きをしているかはあまり認知されていません。

今回は【お茶と健康】をテーマに、最新の研究結果をもとに緑茶に含まれる「カテキン」について深掘りします!

「カテキン」とは

「カテキン」は緑茶に含まれる水溶性の成分。ポリフェノールの一種です。

緑茶の水溶性の成分のうち10~18パーセントをカテキンが占め、生理作用としては下記のとおり。

【カテキンの生理作用】
抗酸化、抗突然変異、抗がん、血漿コレステロール低下、LDLコレステロール値低下、酸化防止、血圧上昇抑制、血小板凝集抑制、抗動脈硬化、血糖上昇抑制、抗菌、抗虫歯、抗ウイルス、腸内フローラ改善・調整、肝障害防止、抗アレルギー、抗炎症、消臭
※参考:公益社団法人日本茶業中央会「令和五年度 茶関係資料」

え?こんなに?と驚く方も多いかもしれませんが、近年、日本はもちろん様々な国でカテキンをはじめ緑茶の成分の研究が進んでいます。

茶摘みで摘んだ一芯二葉のお茶の葉。このお茶の葉から緑茶が作られます。(2024年神奈川県秦野市「柏木茶園」にて撮影)
茶摘みで摘んだ一芯二葉のお茶の葉。このお茶の葉から緑茶が作られます。(2024年神奈川県秦野市「柏木茶園」にて撮影)

「緑茶」「カテキン」「研究」で検索するとたくさんの論文が出てきますので、興味のあるものはぜひ調べてみてください。

※検索例「カテキンに関する研究結果一覧」(外部サイト)

海外では緑茶の「抗酸化作用」に注目!

海外では特に緑茶の「抗酸化作用」が注目され、北米では健康のために抹茶などの緑茶を飲む人も増えてきています。

抹茶ラテやスイーツでの人気とは別次元で、海外では健康面でも評価されているそうです。

抹茶も緑茶の一つ。茶葉を丸ごと粉末にしているので、カテキン量もカフェイン量も多い(乳幼児やお子様はカフェインに注意が必要です)。
抹茶も緑茶の一つ。茶葉を丸ごと粉末にしているので、カテキン量もカフェイン量も多い(乳幼児やお子様はカフェインに注意が必要です)。

3年前の記事「美と健康と「抹茶」!海外の抹茶事情と抹茶の選び方」でも少し触れていますが、最近は海外のIT系の会社でも社員の健康面や精神面も考慮し社内で緑茶が飲める環境を整えるところも出てきているのだとか。

今後もますます広がっていくことが予想されます。

コロナ禍での抗ウイルス作用の研究結果

コロナ禍ではその抗ウイルス作用の研究結果にも国内外で注目が集まりました。

その研究結果の一部はこちらの記事で「コロナ禍で気になる「日本茶の研究結果」3選!実はすごいお茶のパワー」として取り上げています。

緑茶にはまだまだ知られていない秘められたパワーがありそうで、今後の研究にも期待が持てます。

最近よく聞く「ガレート型カテキン」って何?

最近テレビCMでもよく聞く「ガレート型カテキン」。

緑茶に含まれるカテキンは分子構造の違いにより8種類に分けられ、ガレート型カテキンと遊離型カテキンがあります。

ガレート型カテキンには、カテキンガレート(Cg)、ガロカテキンガレート(GCg)、エピカテキンガレート(ECg)、エピガロカテキンガレート(EGCg)の4種類があります。

茶液。つまり、お湯などでいれたお茶のこと。この中にカテキンが含まれ、その50ぱーせんとが「ガレート型カテキン」なのだそう。
茶液。つまり、お湯などでいれたお茶のこと。この中にカテキンが含まれ、その50ぱーせんとが「ガレート型カテキン」なのだそう。

ガレート型カテキンは茶液(お湯などでいれた緑茶)に含まれるカテキンのうち50パーセントだそうなので、普段ペットボトルで緑茶を飲んだり、ティーバッグや急須でいれた緑茶を飲んでいるとその中に含まれている成分の半分はガレート型カテキンということになります。

身体に脂肪をつきにくくする「ガレート型カテキン」

2019年の伊藤園と池田郁男教授(東北大学未来科学技術センター)の共同研究によると、茶カテキンの一種『ガレート型カテキン』について、食事の脂肪吸収抑制のメカニズムが科学的に証明されたとのこと。

つまり、食事の際に緑茶を一緒に飲むと食事に含まれる脂肪が体に吸収されにくくなる、ということです。

この研究ではマウスではなく、ヒトでも実証研究が行われたそうで、資料にはその詳細のデータも掲載されています。

緑茶を妄信することはおすすめしませんが、適度な運動とバランスの良い食事に緑茶をプラスすれば、ダイエットの強い味方になってくれるかもしれません。

参考資料:「身体に脂肪をつきにくくする茶カテキン『ガレート型カテキン』」(外部サイト)

ガレート型カテキンの1つ「エピガロカテキンガレート」の最新研究結果

これまでも緑茶に含まれるガレート型カテキンの中でも「エピガロカテキンガレート(EGCg)」の研究は多くなされています。

過去記事「風邪やインフルエンザ予防には緑茶をこまめに飲むのがおすすめ!日本茶のプロが実践的なコツをご紹介」では抗ウイルス作用について触れています。

最近は新たに伊藤園と武蔵野大学の共同研究で、エピガロカテキンガレート(EGCG)に、大気汚染物質PM2.5によって引き起こされる肺傷害の予防効果があることが世界で初めて確認されたそうです。

こちらはマウスでの研究のようですが、昔の人が「朝茶はその日の難逃れ」とか「朝茶は七里戻っても飲め」というくらい緑茶を飲む習慣を大切にしていたのも、このように研究結果が次々と明らかになると、昔から人々は体感としてそのようなことを知っていたのかも!と思わざるをえません。

今後の研究結果にも注目していきたいと思います。

参考資料:「緑茶に含まれるカテキン類の一種「エピガロカテキンガレート(EGCG)」が、PM2.5による肺の炎症反応を抑制することを世界で初めて確認」(外部サイト)

こまめにお茶を飲むのが効果的!

このように様々な研究結果が発表されていますが、カテキンは体内にずっととどまる成分ではないそうですので、一日を通してこまめに摂取するとより効果が期待できるとのこと。

とはいえ緑茶は薬ではなくあくまで嗜好品なので、「飲んでるといいことあるかな」くらいのスタンスで1日4~5杯程度、普段の生活の水分補給を緑茶に変えてみてはいかがでしょうか

生活スタイルに合わせてペットボトル、ティーバッグ、急須でいれたお茶、と、緑茶商品だけでもたくさんのバリエーションがあるので、楽しみ方も様々です。

しかし、強い苦味や渋味を我慢して飲むのでは習慣化できません。

おいしいと思える口に合うものを見つけたり、いろいろな産地の茶葉を飲み比べるのも楽しみ方の一つです。

一言で緑茶、お茶と言っても、産地や生産者で味や香りは全然違います!

最近は上質な茶葉の入ったティーバッグも増えてきています。

日本茶の品評会「日本茶AWARD2023」で日本茶準大賞を受賞した長崎県「西海園」のティーバッグ。ティーバッグだが上質な茶葉が贅沢に6gも入っている。10個入り1188円。
日本茶の品評会「日本茶AWARD2023」で日本茶準大賞を受賞した長崎県「西海園」のティーバッグ。ティーバッグだが上質な茶葉が贅沢に6gも入っている。10個入り1188円。

ぜひ日本茶専門店やデパート、オンラインショップなどでいろいろな産地やお店の中からお気に入りを探してみてくださいね。

初心者の方でも緑茶を簡単に楽しめる方法を過去記事でまとめていますので、こちらもぜひご参考に!

ほっとするひとときに、ぜひ緑茶を!

お茶を飲むとほっとする、お茶の香りに癒される。

時々外国人の方々にワークショップなどで日本茶を紹介するのですが、海外の方の反応も同じで、リラックスできてリフレッシュにもなるとのご感想をいただきます。

日本で生まれ育った方の反応では、お茶を飲むと家族団らんや祖父母との時間を思い出したりする方が多いのですが、お茶を飲んでほっとしたり香りに癒されるのは国籍に関わらず共通のことのようです。

昔ながらの急須もあれば、お手入れが簡単で丈夫な樹脂製の進化系急須もある。個々の生活スタイルや好みに合う茶器を探すのも楽しみの一つ。
昔ながらの急須もあれば、お手入れが簡単で丈夫な樹脂製の進化系急須もある。個々の生活スタイルや好みに合う茶器を探すのも楽しみの一つ。

現在、お茶の香りやその他の成分についても研究が進められ、たくさんの研究結果が次々と出てきています。

次の記事では脳をリラックスさせるという緑茶の成分「テアニン」にも注目したいと思います。

日本茶インストラクター

【お茶の世界の扉を開く日本茶ナビゲーター】 日本茶専門店で7年勤務、茶道歴25年の経験を活かし、大手百貨店や外国の大学等でのワークショップで国内外2,000名以上の方に日本茶の魅力を伝える。 美味しい日本茶とそれにまつわる伝統工芸品を後世にも繋いでいきたい、日本茶への愛と想いで日本茶情報を発信中。 日本茶の商品開発、カフェ・飲食店での日本茶コーディネートや淹れ方指導も行う。 NPO法人日本茶インストラクター協会認定日本茶インストラクター(2004年取得)。 日本語教師(外国人対象)。

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