美と健康と「抹茶」!海外の抹茶事情と抹茶の選び方
海外でも人気の抹茶ラテや抹茶スイーツ。
美容や健康にも良いとセレブが取り入れて話題になったり、海外では 'Matcha’ として受け入れられ、ファンが増えたことにより、輸出量も多くなっています。
しかし、海外では 'Matcha' が日本のものだと知らずに抹茶ラテを飲んでいる人も多いのだとか。
今回と次回の記事では、美と健康に注目する海外の抹茶ブームと、真の抹茶とは何かについてお伝えします。
海外では「抹茶」はスーパーフード!?
数年前に話題になったアメリカの抹茶スタンド。
抹茶にアサイーなどビタミン豊富なフルーツを混ぜたりというところに、長年茶道に親しむ私は度肝を抜かれましたが、美容と健康に良いという青汁的なイメージもあるようです。
オンライン日本茶レッスンのご受講をきっかけに日本茶について情報をやりとりしているアメリカのロサンゼルス在住のYさんによると、アメリカでは抹茶スイーツは色々な種類があり豊富なのだそうです。
そして健康に関心の高い人々には緑茶、特にオーガニックの煎茶や抹茶が人気だそうで、シンプルな飲み物としても受け入れられているのだとか。
一方で、スウェーデン在住のMさまによると、スウェーデンではまだそれほど抹茶は広まっていないそうですが、お茶の専門店の一角に抹茶などの日本茶が置かれていたり、チェーン店のカフェのメニューに抹茶ラテがあるそうです。
最近料理の雑誌で抹茶スイーツレシピを見かけたそうなので、これから少しずつ広がっていくかもしれないとのことでした。
海外の方のように、カジュアルに抹茶をとらえ楽しむのも良いですね!
日本では以前は「抹茶」というと「茶道」のイメージが強く、ちょっと敷居が高いものと思われてきました。確かに、特別な栽培方法で手作業で丁寧に手摘みされた抹茶は値段も高く、普段飲むものというより「ハレ」つまり特別な日に飲むものという印象もあります。
現在はコンビニスイーツでも抹茶を使ったものが多く、手軽に購入でき、専門店でなくとも目にする機会が増えました。
日常生活に抹茶を取り入れて楽しむスタイルは、近年は日本でも浸透しています。
美容につながる!?抹茶の成分
抹茶など緑茶の成分については、日本より海外での方が注目されているように感じます。
現在オーストラリアでは、抹茶に含まれるポリフェノール(カテキン類など)の抗酸化作用が注目され、健康志向の人々によく飲まれているそうです。
緑茶に含まれるカテキンについては、沢山の研究がなされており、海外でも注目されているとのこと。
抹茶の場合は、お葉を丸ごと飲むことになりますから、水溶性のビタミンCなどはもちろん、脂溶性のビタミンE、βカロテン、食物繊維なども摂ることができます。
緑茶に含まれるビタミンCはカテキンに守られているため熱にも強いそうで、お湯で淹れても料理に使っても壊れることなく摂取できるのだとか。
ビタミンCの含有量はレモンの3~5倍とも言われています。
※緑茶についての研究詳細は世界緑茶協会HPの「お茶の効能研究成果集」をご覧ください。簡単にまとめてあるJapan Tea Actionのサイトもわかりやすいです。
「テアニン」にも注目!
緑茶に含まれる「テアニン」という成分をご存知でしょうか?
特に抹茶や玉露に多く含まれるアミノ酸「テアニン」はうま味や甘味につながる成分ですが、効能としては脳をリラックスさせ認知機能にも効果があると言われています。
近年はテアニンを抽出したサプリメントまであるようです(日本国内)。
ストレスフルな生活をしていると、ちょっとお茶が飲みたくなる瞬間があります。お茶の香りや味に癒されたくなるのですが、もしかしたら身体がお茶を欲しているのかもしれませんね。
参考:学術コラム「ストレスから脳を守るテアニンの役割」太陽化学株式会社HP
抹茶はカフェイン最強!
目を覚ましたいときに摂りたくなる「カフェイン」。エナジードリンクにも含まれていますね。
しかし、妊娠中や授乳中の方、小さなお子様には注意が必要な成分でもあります。
実は、日本茶の中でも特にカフェインが多いのが抹茶と玉露です。
特に抹茶は葉っぱ丸ごといただくものなので、成分としては強く感じる方も多いかもしれません。
実際に私も、1年ほどカフェインを控えた後のある日に、お茶のお稽古で薄茶(通常の泡立てる抹茶)や濃茶(抹茶を濃く練ったもの)を何杯か飲み、帰りの電車で頭がクラクラ、胸やけと胃痛で具合が悪くなってしまったことがあります。
これは極端な例ですし、その日の体調もあるかもしれませんが、胃への刺激と急にカフェインを沢山摂ったことが原因ではないかと思われます。
茶道では抹茶はお茶をいただく前に必ずお菓子を食べます(茶懐石の場合は料理の後)。
これは胃を守る先人の工夫ではないかと思われます。理にかなっているのだなぁと感じます。
このような点から、空腹時に抹茶を飲むのは控えた方がよいと私は思います。
そしてカフェインに慣れていない方も、急に濃い抹茶をストレートで飲むのではなく、カフェインの少ないほうじ茶や番茶、玄米茶から始めて、煎茶、そして玉露・抹茶、と徐々にカフェイン量の多いものに慣れていくのが良いかと思います(抹茶ラテなど乳製品と一緒に摂る場合は乳製品が胃を守るため刺激が緩やかになるとも言われています)。
また、乳幼児は体内でカフェインを分解できないと言われていますので、カフェインの多く含まれるものは与えないほうがよいそうです。
カナダでは緑茶のカフェインに注目!
先程までは悪者扱いだったカフェインですが、カナダで日本茶オンラインショップをスタートされたテシエさんによると、カナダでは抹茶など緑茶のカフェインも注目されているそうです。
これにはもしかしたら「テアニン」の働きが関係しているかもしれません。テアニンが含まれている分カフェイン単体で摂取するより、その効果が緩やかになっているのではないかと言われています。
茶の湯を愛した戦国時代の武将達も、もしかしたらそのような効果に注目していたのかもしれませんね。
実際に、禅僧は修行の間の眠気覚ましにお茶を飲んでいたとも言われています。
抹茶を購入するには
日本茶のレッスンをしていると「抹茶はどこで購入するのがよいでしょうか」「どのくらいの値段の抹茶がおいしいですか?」とよく聞かれます。
私の選ぶ基準ですが、ご参考になればとこのようにお答えしています。
抹茶の購入場所
・デパートや日本茶専門店でスタッフに相談しながら購入する
・茶道のお家元がお茶銘を付けられたり、茶道の先生がよく使っているような歴史のある「お詰め」(茶商)のものを選ぶ
せっかく抹茶を飲むのですから、美味しくきちんと作られているものを使いたいですね。
少しお値段が張ったとしても、1回当たりの使用量は1.5g~2gと少量です。30g入りだったら15~20杯分の抹茶が飲めます。
抹茶の値段
値段はピンキリです。
「製菓用」とされている安価なものは、飲み物としては苦いのでおすすめしません。
しかし、歴史のあるお詰めで売られている抹茶は安くても美味しいものがあります。
あるお詰めで購入した20g540円のものは、軽さのあるすっきりした抹茶が点てられました。
値段を目安にすると、30g当たりの価格でだいたいこのようなイメージで選んでいます(あくまで個人的な目安です。お詰めにより抹茶の味や特徴は違うためこの通りではありません。)。
★1,000円程度のもの・・・普段使いの薄茶用抹茶。やや苦味もあるがすっきりした味。甘いお菓子の後ならちょうど良い。
★1,500円程度のもの・・・薄茶の上級品。苦味も少しあるが甘味うま味もある。バランスの良い味。
★2,000円以上のもの・・・濃茶用。甘味とうま味の濃い味。甘い香りがする。薄茶にしてもまろやかで美味しい。
同じお店の物でも値段や茶銘によって原料を合組(ブレンド)しているため、缶の見た目は同じでも「お茶銘(お茶の銘柄)」で内容は違います。
缶だけ見て「あ、これ飲んだことがある!」と思っても、前と同じものを購入する場合は、そこに貼られたお茶銘のシールや表示を確認して選ばなければなりません。
前回飲んだものがおいしかったけど、どれだったかしら?と店頭で悩まれる方も多いです。
大体の価格帯を覚えておくか、お茶銘を覚えておくかして、お店の人に尋ねましょう。
抹茶の点て方
ここで、一般的な抹茶の点て方をご紹介します(※レッスンではこちらとは別の裏技で点てています)。
1.ティースプーンに軽く1杯、茶杓なら1杯半の抹茶を茶こしで濾す(このひと手間でだまができにくくなります)
2.80~85度程度のお湯を60~70ml程度入れ、茶筅でシャカシャカ点てる(茶筅は前もってお湯で温めておくと折れにくい)
そのまま飲むのはもちろんですが、バニラアイスにかけて抹茶アフォガードにするのもおすすめです。
※バニラアイスはシンプルな材料で作られたちょっと高級なものを使うのがおすすめです。
参考:「ALL FOR ONE 抹茶の点て方」山政小山園
抹茶の保存方法
抹茶は粉末状のため、煎茶に比べても酸化しやすいです。開封後は夏場は2週間、冬場は1か月以内にできるだけ使い切るのが理想的です。
飲み切れるだけの少量サイズのものを購入されるとよいでしょう。1回分(1.5g程度)の量が入ったスティックタイプのものもありますので、少しだけ必要な方はそういうものを選ぶのもよいでしょう。
賞味期限内であれば常温保存も可能ですが、あまりに高温になる場所・湿度の高い場所・匂い移りが心配な場所は避けて保管ください。
ご家庭の冷蔵庫や冷凍庫での保管はあまりおすすめしません。食材などの匂い移りが心配なのと、温度差で中に結露ができ湿気により劣化する恐れがあるためです。
もし冷蔵庫や冷凍庫に入れた場合は、出した後すぐ開封するのではなく、しばらくおいて常温になってから開けるようにしてください(内部の結露を防ぐため)。
専門家にも伺いました
抹茶のプロのご意見も伺いたく、京都宇治で江戸時代から抹茶を扱う山政小山園の小山雅由さまに抹茶の保存方法について伺いました。
抹茶専用の冷蔵庫に保管されているお茶屋さんもあります。こちらは匂い移りの心配はありませんね。
どうしても使い切れなくてしばらく保存する場合は、ジップロックなどを二重にして匂い移りを防いだ上で冷蔵庫または冷凍庫に保存、ということですね。
まとめますと、すぐに飲み切れるだけの量を購入し常温保存で1週間程度で飲み切る。そうでない場合は、匂い移り対策をしたうえで冷蔵庫・冷凍庫に保管する。
ぜひご参考になさってみてください。
余った抹茶は?
もし飲み切れず余ってしまった場合は、お菓子作りなどに利用してもよいでしょう。抹茶クッキーや抹茶マフィンなど、バターや乳製品との相性も良いです。
小山さまより、抹茶メーカーならではのこのようなアイディアも伺いました。
簡単で美味しい!最高ですね!(抹茶のハードルがぐんと下がりました♪)
私もやってみます!
ぜひご家庭で、気軽に抹茶を楽しんでくださいね。
では、次回は、もう少しマニア目線で、抹茶を深掘りしていきます。お楽しみに!