ビッグデータから読み取るボーイズグループ──ジャニーズ、K-POP、非ジャニーズ
ジャニーズ、K-POP、J-POP
コロナ禍も明けつつあり、エンタテインメントも徐々に正常な状況に戻りつつある。なかでも、とくに活況を呈しているのはボーイズグループシーンだ。
日本で長らく大きな人気を維持し続けてきたジャニーズ事務所、そしてBTSを筆頭に全世界的に大人気のK-POP、そしてジャニーズの競合となる日本のボーイズグループ──大きく分けてこの3つのタイプのグループが、切磋琢磨している。
では、だれがこうしたグループに興味を持っているのだろうか。Yahoo! JAPANの検索サービスをもとにしたビッグデータ分析ツール「DS.INSIGHT」を使って調査した。
キンプリメンバーの脱退
まず、検索ボリュームから確認していこう。これはYahoo!の検索データなどをもとにした、「日本全体におけるキーワードの推定検索人数」だ。検索は能動的な行為なので、それはひとびとの興味の反映ともみなせるだろう。
日韓52グループの名前をキーワードとし、2022年にそれぞれの検索ボリュームがどのように推移したかを見ると、以下のような結果(週別)となった。
やはりもっとも大きな関心を持たれたのは、昨年11月のKing & Princeメンバーの脱退発表だ。この11月上旬の数値は、6月のBTSの活動休止報道を大きく超える関心を示している。昨年の日本のエンタテインメントにおいても、もっとも大きなニュースだったと言えるかもしれない(関連:「King&Prince脱退メンバーが発する『海外』の意味」2022年11月5日)。
なにわ男子への強い関心
ここからは、ジャニーズ・K-POP・非ジャニーズの3カテゴリーそれぞれを見ていこう(対象としたのは昨年中に活動実績があるグループのみ)。
まずジャニーズからだ。
昨年トータルでもっとも大きなボリュームを占めたのは、なにわ男子だった。他を大きく離す結果だ。ただ、この結果はあくまでもグループの正式名称をもとにしており、略称や愛称で検索されるケースも珍しくない。
たとえば、昨年メンバーの脱退が発表されたKing & Princeは、略称の「キンプリ」で検索されることが多い。Snow Manも半角スペースを抜いたほうが多い結果となる。他にもカタカナでの検索もあり、正式なグループ名の検索ボリュームはあくまでも目安である。
BTSはやはりダントツ
次にK-POPを確認しよう。すると、やはりBTSが圧倒的であることがわかる。昨年は活動休止報道や年末のメンバー入隊もあり、それまでとは異なる注目が集まった。そのボリュームもなにわ男子を超える水準であり、われわれの実感とも近いだろう。
その次に来るのがベテランの東方神起だが、注目すべきはその次にENHYPENが来ていることだろう。2020年11月のデビューからまだ2年ほどの7人組は、BTSと同じHYBE所属。メンバーの最年少・ニキが日本人なのこともあり、日本でも大きな関心を集めていることがうかがえる。
日本を席巻する「K-POP日本版」
一方、ジャニーズと競合する日本のグループはどうだろう。すると、JO1とINIはやや高いものの、それ以外はBTSを除くK-POPグループと大差ない結果となる。ポイントは、上位にK-POPのプロダクションが日本で生み出したグループ──「K-POP日本版」が並んでいることだろう。JO1とINI(LAPONE)、そして昨年末にデビューした&TEAM(HYBE)がそうだ。
その一方で、大きなボリュームとならなかったのはLDH勢だ。EXILEは高いものの、他はなかなか厳しいデータとなっている。カタカナで検索されているケースが多いこともあるが、それを踏まえてもあまり興味を持たれてない様子がうかがえる。この10年ほどLDHはK-POP人気に強く押されてきた印象があるが、それを裏付ける結果かもしれない。
関心を持つのはやはり女性
ここからは、検索者の属性を見ていこう。
まず性別で見ると、以下のようになる。グラフの上がJ-POP(ジャニーズと非ジャニーズ)、下がK-POPのグループだ。すると男性グループなのもあり、やはり検索者は女性が圧倒的に多いことがわかる。
それは当然といえば当然だが、なかには例外もある。それがTOKIOだ。検索者は男性がかなり多い。メンバーの脱退によって音楽活動を中断したTOKIOは、現在はおもに『ザ!鉄腕!DASH!!』などバラエティ番組での活躍が目立つ。この結果は、彼らの番組人気の反映だと思われる。
Snow Manは中高年層からも関心
では、それぞれのグループはどの年代(世代)の女性から興味を持たれているのだろうか。3つのカテゴリーをそれぞれ見ていこう
まずジャニーズは以下のようになる(グラフは、20代以下を基準に並べている)。すると、ジャニーズでもっとも若者から検索される割合が高いのはHey! Say! JUMPだった。その逆に中高年層から多くの検索が集まるのは、ベテラン勢が目立つ。関ジャニ∞、KinKi Kids、KAT-TUNの並びがそれを示唆している。だが、Snow Manだけは例外という印象だ。
中高年層にもリーチするBTS
次にK-POPグループの女性検索者の年代を見ると、以下のようになる。ここでも、キャリアが長く、検索ボリュームが大きいグループほど中高年層から関心を持たれる傾向を見せる。東方神起とBTSがそうだ。
ただ、そのなかでTOMORROW X TOGETHER(TXT)は、中高年層の検索割合が高い。TXTはBTSと同じHYBEに所属しており、いわば“弟分”的存在だ。それもあって、中高年層のBTSファンが興味を示して検索する傾向が高いのかもしれない。
「人気の証」は中高年層?
そしてもうひとつ、ジャニーズ以外のボーイズグループは以下のようになる。こちらも、認知も人気も高いグループほど中高年層から興味を持たれる傾向を見せる。BE:FIRST、JO1、INI、&TEAMという並びがそれを示している。
世界一の少子高齢社会を突き進む日本にとって、中高年層に検索されることは、「人気の証」なのかもしれない。
目立つK-POPの10代割合
最後に、ここまで取り上げてきた3つのカテゴリーを並べて見てみよう。全体的な傾向として、検索数が多いグループほど、中高年層の検索割合も大きくなる傾向を見せる。実際、検索ボリュームと40代以上の検索割合は、中程度の正の相関(r=0.4)を見せる。「少し関係がある」ということだ。
ただ、K-POPは20代以下の関心がとくに強いところに特徴がある。前述してきたように、中高年層の割合が小さいことは関心の広がりが小さいこととも関係するが、それにしても20代以下の検索割合が大きい。
それをより明確にするために、これからのボーイズグループを支える女性・20代以下のみの検索ボリュームを見てみよう。J-POP・K-POPを混合させて上位20組を多い順に並べると以下のようになる。
大きく分類すれば、20組中J-POPが11組、K-POPが9組となる。だが、その詳細はジャニーズは6組、非ジャニーズのJ-POPが2組、K-POP日本版が3組、そしてK-POPが9組だ。K-POP日本版がJ-POPに含まれることを踏まえると、実質的に若い女性はK-POPのほうに関心を持っていると言える。
この要因として考えられるのは、若者たちの接触メディアだ。K-POPのグローバル展開は、YouTubeやストリーミングサービスなど、インターネットメディアを中心としてきた。ファンの多くもネットが入り口だった。それによって、ネットメディアと親和性が高い20代以下がK-POPに対する強い関心を示しているのだろう。
逆に、地上波テレビなどレガシーメディアに適応し、ネットメディア展開にいまも積極的でないジャニーズは、それによって多くのマーケットを取り逃がしている可能性が高い。もしそうであるならば、これは後年に強い影響を見せる可能性が高い。
BTSとキンプリによる大勢変化
ここまで昨年ボーイズグループがどのように検索されてきたかを見てきた。だが2023年は、そうした全体像が大きく変化することは確実だ。その理由はふたつある。BTSとキンプリだ。
BTSはメンバーが兵役のためすでにグループでの活動が中断しており、King & Princeからはメンバー3人が脱退予定だ。このふたつのことによって、ボーイズグループのシーンは変化を余儀なくされる。ひとびとの関心も大きな変化を見せることになるだろう。
【「中高年男性向けのJ-POP、若い女性向けのK-POP──ビッグデータが示すガールズグループの日韓差異」に続く】
ヤフー・データソリューション | DS.INSIGHT
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