『虎に翼』が描いた〝透明化された人々〟の過去と未来 #専門家のまとめ
最終回を迎えたNHKの朝ドラ『虎に翼』は、日本初の女性法曹・猪爪寅子を軸に、これまでさほど注目されなかった〝透明化された人々〟に光をあてた。
女性、在日コリアン、同性愛者、障害者など、多様なマイノリティの描写は、戦前から戦後にかけての日本社会の歪みを浮き彫りにし、現代にも通じる課題も提起する。
この画期的な作品が持つ社会的意義と、視聴者への影響力を多角的に考察した4つの論考を紹介する。
ココがポイント
エキスパートの補足・見解
『虎に翼』は、日本のテレビドラマにおける重要な転換点を示しているのかもしれない。これまでの朝ドラが女性の成長物語を描きつつも、その多くが既存の社会規範の中での成功を描いてきたのに対し、本作は社会構造そのものへの問いかけを前面に押し出しているからだ。
そこには現代社会への強いメッセージ性も含まれている。なぜなら〝透明化された人々〟の描写を通じて、視聴者に自身の中にある無意識の差別や偏見と向き合うことを促しているからだ。それは、エンタテインメントとしての役割を果たしつつ、社会変化の触媒としての機能も果たそうとする姿勢を示唆するものだ。
制作過程におけるジェンダーや朝鮮文化などの専門家の関与も特筆すべきで、これによって作品の信頼性と説得力も高められた。これは、ポピュラー文化における正確性の重要度の高まりと、視聴者の知的要求を反映している。
この成功は、現代における夫婦別姓や同性婚など多様性と包摂性に関する議論を、より開かれた形で行う準備が整いつつあることも示唆する。そして、こうした社会的テーマを扱うドラマが広く受け入れられたことは、メディアの果たしうる役割の大きさを改めて認識させる。