予想通りMeta Platforms社(旧Facebook)が商標権の争いに
昨年(2021年)の10月にMeta Platformsに社名変更した旧Facebookですが、METAという比較的ありがち(かぶりがち)な名称を選び、かつ、(商号だけではなく)商品やサービスの商標もMETAで統一しようとしていることから商標権取得および他社の商標権侵害に関する課題が指摘されていました。当時、私も何本か記事を書いています。
Facebookの社名変更による商標”茨の道”(21/10/29)
Meta(旧Facebook)のロゴかぶり問題について(21/11/9)
META Platforms(旧Facebook)、米国でMETA関連商標権を買いまくりか(21/11/22)
Facebookに2,000万ドルの商標権買い取りを持ちかけたスタートアップに勝ち目はあるか?(21/11/23)
Facebook(META Platforms)は何故ジャマイカに出願していないのか?(21/11/29)
FacebookがMETA関連商標の買い取りに使ったダミー会社について調べてみた
(21/11/30)
Meta Platforms(旧Facebook)による商標権大人買いの条件が一部明らかに(21/12/15)
上記記事の4番目についてフォローアップしておくと、METAという商標を2カ月差で先出願していたテキサス州のゲームPC会社Meta PC社の出願(6239288号)はまだ審査中です。やはり、旧Facebookが買い取ったMETA.(ピリオド付き)商標等との類似によりOA(拒絶理由通知)が出ているので登録は難しいかもしれません。Meta PC社のCEOは商標権を2,000万ドルで買い取ってもらいたいと表明していましたが、皮算用で終わりそうです。
しかし、これとはまた別の商標権の争いが最近発生しています。VRテクノロジ等を活用した展示サービスを行うMetaX LLCという企業がMeta Platformsを商標権侵害で訴えました(参照記事(英文))。MetaX LLC社は、2010年創業のニューヨークの会社です。非上場でおそらく小規模な会社と思われますが、HP、Twitter、Google、Spotify、Nike、Coca-Cola、Verison、Microsoft、Intel、AT&T等の大手企業をクライアントにしています。社名はMetaXですが、商標としては一貫してMETAを使用し、登録もしています(6055841号と5194332号です(タイトル画像参照))。図形要素を伴う結合商標ではありますが、Meta Platforms(旧Facebook)との商標と標章としては類似するといってよいでしょう。
問題は指定役務です。MetaX社の登録商標の指定役務はイベント運営やコンテンツ制作等です(米国の商標制度では実際に使用している商品・役務でしか登録できません)。
6055841号の指定役務は(41類)Media production services, namely, video and film production; Entertainment, namely, production of community sporting and cultural events using digital, virtual and augmented reality filmmaking and interactive displays of lights, sound and motion; Special event planning for social entertainment purposesです。
5194332号の指定役務は(35類)Arranging and conducting special events for commercial, promotional or advertising purposes; Event planning and management for marketing, branding, promoting or advertising the goods and services of others; Social media strategy and marketing consultancy focusing on helping clients create and extend their product and brand strategies by building virally engaging marketing solutions; Special event planning for business purposes; Organizing, arranging, and conducting live interactive marketing promotional events for business advertising purposesです。
これが、旧Facebookのビジネスとかぶるかは微妙なところです。当然、旧Facebookはトレードショー等でVRを使ったイベント等を行っているでしょうが、これは、自社のために行う業務なのであって、他社のためのイベント企画サービス事業を行っているわけではないからです。おそらく、裁判でもそれが争点のひとつとなるでしょう。
上記過去記事にも書いたように、旧Facebookは名称変更に先立ってダミー会社を経由して、METAの類似商標の買収を進めていたわけですが、なぜ、このMetaX社の登録商標がその対象にならなかったのかは不明です(たとえば、金融業等、将来的に関連する可能性があるものは全部買収対象にしていたにもかかわらずです)。おそらく、上記で分析したように、旧Facebook的には自社のビジネスとかぶらないと判断したのかもしれませんが、そうだとするとちょっと理解に苦しむ判断です。