Facebookの社名変更による商標”茨の道”
FacebookがMetaに社名を変更することが確定しました(参照記事)。Facebook、WhatsApp、Instagramなどのサービスのブランドはそのままですが、OculusについてはブランドそのものをMetaに変更するようです。Metaといういかにもありがち、かつ、記述性が比較的強い(Metaverseを明らかに想起させます)名前を商標として選ぶと後々結構大変そうです。
EUIPN(欧州連合知的財産ネットワーク)が提供するTMVIEWデータベースで調べると、9類(電子機器関連)で登録されている(または審査係属中の)Metaという商標は世界各国で約900件ありました。これ以外にも、別の関連区分のもの(たとえば、オンラインゲームの提供等)、および、Metaという言葉を一部に含むもの、TMVIEWに掲載されていない国のもの(典型的には中国、台湾)を含めると、さらに多くの類似先登録商標があるでしょう。
この状況で、Metaという商標を各国においてくまなく登録すること、および、既にMetaを登録している企業からの侵害訴訟に対応することはかなり大変かと思いますが、Facebook的にはそれは織り込み済みということなのでしょう。たとえば、Google、Yahoo!、NVIDIAのように今までにない(あるいはめったに使われない)言葉を選べば、商標登録(および他社の商標権侵害回避)の問題は非常に楽になるのですが、敢えてそういう道を選ばなかったということです。
なお、ドメイン名がどうなっているかが気になりましたが、meta.comはFacebookがしっかり押さえていました(まあ、当然です)。この話が公になる前からFacebookの名前を出さずに水面下で動いていたものと思います。
ところで、この社名変更は、2015年にGoogleがAlphabetというこれも比較的ありがちな名前に社名変更した時と類似していると考える方もいるかもしれません。しかし、Alphabetという名称は、持株会社の社名ではありますが、持株会社配下の企業の商品やサービスの商標としては使われていません。したがって、他社の商標権を侵害するというケースはあまり考えられません。商標登録についても、(元Googleの)Alphabet社は「持ち株会社の業務」のような役務(サービス)について限定的に行っているにすぎず、今回とはちょっと性質が違います。
なお、ドメイン名(alphabet.com)については、BMWグループの同名企業が既に使用しており、同社には譲渡の意思もないということだったので、元Googleの方のAlphabet社はabc.xyz というドメインを使っています。最初からそのつもりだったのか譲渡してもらえないことがわかった上での苦肉の策だったのかはよくわかりません。