Facebook(META Platforms)は何故ジャマイカに出願していないのか?
Facebookのウェブ画面の下部を見ると下の画像のように新しいMETAの結合商標がもう使用されています(スマホのアプリでも起動時に一瞬表示されるのですがすぐログイン画面に入ってしまうのでスクリーンショットが撮れませんでした。)Alphabetという持株会社の名前がエンドユーザーの目に触れることはほとんどないGoogleとは対照的に、Meta Platforms社は、METAを旧Oculus製品だけではなく、より広く同社傘下企業のサービスの商標として使っていこうという意思があるように見えます。
これは、META社の米国の商標登録出願(出願番号97097363)(出願人はFacebookになっています)が、Oculus関連製品だけに限定されず、9類(コンピューター関連)、28類(娯楽機器関連)、35類(広告関連)、41類(娯楽サービス関連)、42類(デジタルサービス関連)、45類(SNS関連)で膨大な数の商品・役務を指定していることからも窺えます。米国の商標制度は使用主義的色彩が濃く、出願していると言うことは一定の使用意思があるということになります。
この米国の商標登録出願は2021年10月28日に行われています。これは、同社社名変更を発表した日です。一般に、重要な商標を発表したその日に出願することはよろしくないプラクティスです。先願主義の判断は時刻ではなく日付により行われますので、発表を見た第三者がその日のうちに出願してしまえば同日出願となってしまうからです。実際、TMViewで検索すると同時にペルーの個人がまったく同じ商標を出願してしまっています(タイトル画像参照)(おそらくは不正目的の出願等の理由による拒絶になるとは思いますが)。また、米国でも10月28日に、Facebook意外に2件のMETA文字商標の出願があります。米国の場合は同日出願は先に使用を開始した方が優先されますが、2件のうち少なくとも1社は実業を行っているので登録されてしまうかもしれません。なお、METAという商標が比較的ありがちであることを考えるとこれらの2件の文字商標は単なる偶然の一致の可能性もあります。
このようなリスクを避けるためには出願日をできるだけ早くしたいところですが、あまり早く出願をしてしまうと出願公開によって発表前に新商標がネタバレしてしまうリスクが生じます。発表の前日、あるいは、余裕を見て数日前に出願するのが適切なケースが多いと思います。
出願日をできるだけ早くしたいがネタバレは避けたいという相反する目的を達成するための裏ワザとして、出願の公開時期が遅く、かつ、ネットから商標検索ができない国にまず出願しておいて、6カ月以内にパリ条約優先権を指定して米国や他のメジャーな国に出願するという方法があります。優先権の効果により第1国の出願日が第2国の出願の実効出願日として扱われます。
この場合の第1国としては、ジャマイカやトリニダードトバゴなどのカリブの国が使われることが多いです。Appleは、最近のものも含め多くの出願でこのやり方を使っています(関連過去記事「まずジャマイカに商標登録出願しておくのはよくあることなのか?」)。他にもIntelやMicrosoftが同じようなやり方を行っています。同じシリコンバレー企業であるFacebook(Meta Platforms)が、今回の超重要な出願においてなぜこのやり方を使わなかったのかはわかりません。半年前にジャマイカなどの国に出願して優先日を確保しておけば、上記のペルーの個人や米国企業の同日出願の件はもとより、前回の記事で書いたMeta PC社(8月に偶然METAを出願)との問題も生じなかったのですが。