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芸備線・木次線以外にも…乗るなら今のうち? JR西日本の廃止危惧路線

清水要鉄道・旅行ライター
備後落合で並ぶ芸備線の車両 左の車両は広島支社、右の車両は岡山支社の車両だ

近畿地方を中心に、中国地方・北陸地方も含めた本州西部に路線網を張り巡らせているJR西日本。その路線長は在来線だけでも49線区3959.8キロにも及ぶが、複数の路線で廃止が噂されており、今後はJR北海道のように路線廃止が進められるであろうことは想像に難くない。現に、広島県と岡山県に跨る芸備線では一部区間で存廃協議が進められており、今後は木次線についても一部区間の在り方について協議が行われる方針である。この記事では輸送密度200未満の線区を中心に、今後廃止になる可能性が高く「今乗っておいた方がよい」路線(JR北海道でいうところの『赤色線区』)を紹介していこう。

芸備線(備後庄原~備中神代間 68.5キロ)

芸備線
芸備線

芸備線は中国地方最大の都市・広島市から三次、庄原といった県北の都市を経由して岡山県新見市の備中神代駅までを結ぶ路線で、書類上の起点は備中神代となる。運行系統は三次、備後落合で分断されており、備中神代から先は全列車が伯備線の新見駅まで乗り入れている。備後庄原まではそれなりに利用があり、その先の備後西城には小さいながらも高校があって通学需要があるものの、備後西城~備後落合~東城間は人口も希薄な山間を行く形である。備後落合~東城間は令和4(2022)年度の輸送密度(平均通過人員)が20人/日とJR西日本で最も低い。県境の広島県側にある東城はそれなりの規模を持った町ではあるものの、庄原市街や広島へは中国道経由のバスが多数運転されており、大きく迂回する線形の芸備線は流動に合っていないという印象を受ける。

今年3月26日より「再構築協議会」で国交省、JR、県、自治体や有識者による協議が行われており、今後3年を目途に存廃が決まる予定だ。

木次線(出雲横田~備後落合間 29.6キロ)

木次線
木次線

木次線は松江市の宍道駅から雲南市(加茂・大東・木次)、仁多郡奥出雲町(三成・横田)を経て県境を越えた広島県庄原市の備後落合駅までを結ぶ路線で、出雲横田以南の存廃が今後協議される予定だ。出雲横田は奥出雲町の中心で高校もあることから、出雲横田まではそれなりに利用もあるが、出雲横田以南は令和4(2022)年度の輸送密度が54人/日と極めて少ない。当該区間の列車は一日3往復だ。今後、芸備線同様に「再構築協議会」が設置されるものと思われる。

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福塩線(府中~塩町間 54.4キロ)

福塩線
福塩線

福塩線は備後地方の中心都市・福山を起点に、広島県府中市を経て三次市の塩町駅までを結ぶ路線だ。すべての列車が塩町から先、三次まで芸備線に乗り入れている。平野部を走る福山~府中間は沿線人口も多く、電化されて列車本数も多いが、府中以北は非電化で列車本数も5往復とグッと少なくなる。中国山地に分け入る路線だけあってこの路線も利用者は多くないものの、上記2路線と比べると通学需要がある程度あるのが救いで、沿線の学校のテスト日などには臨時列車が運転される。令和4(2022)年度の輸送密度は160人/日で、二桁線区に比べれば廃止になる可能性は低い。沿線には石見銀山街道の宿場町の町並みが残る上下や吉舎といった町があるものの、通学特化ダイヤなので観光には少々使いにくいのが難点だ。

姫新線(中国勝山~新見間 34.3キロ)

姫新線
姫新線

姫新線は兵庫県播州の中心都市・姫路から岡山県美作の中心都市・津山を経て岡山県奥備中の新見までを結ぶ路線だ。姫路近郊は本数や利用者も多いが、岡山県内は利用者がそれほど多くない。特に利用者が少ないのが、中国勝山~新見間で、令和4(2022)年度の輸送密度は132人/日だった。元々は別の国だった美作(真庭市)と備中(新見市)に跨る区間で流動が小さく、城下町の中国勝山を出ると、終点の新見まで沿線に大きな街がないことが、同じ姫新線の他の区間と比べての輸送密度の低さに結びついているのだろう。途中の刑部は合併で新見市になった旧:大佐町の中心だが、令和3(2021)年度の1日平均乗車人員は59人だった。沿線の真庭市は株主として路線維持を働きかけるべくJR西日本の株式を1億円分取得している。

長大な姫新線の中でこの区間だけ廃止というのも、可能性としてはないことではないが、芸備線や木次線ほど絶望的な輸送密度でもないので、終点が他の路線に繋がっていることの方を重視されるのではないかと思う。

因美線(智頭~東津山間 38.9キロ)

因美線
因美線

因美線は県都・鳥取を起点に郡家、智頭を経て岡山県津山市の東津山駅までを結ぶ路線だ。すべての列車が東津山から先、津山まで姫新線に乗り入れている。智頭急行が分岐する智頭までは大阪や岡山と鳥取を結ぶ特急も走る都市間路線として機能しているが、県境を挟んだ智頭以南は列車の本数も6往復と一気に少なくなる。岡山県側の美作加茂からは本数が少し増え、津山方面への通学需要もあるものの、令和4(2022)年度の輸送密度は130人/日と少なかった。智頭~美作加茂、美作加茂~東津山と区切って輸送密度を計算すれば、県境を挟んだ智頭~美作加茂間はおそらく二桁だろう。

大糸線(南小谷~糸魚川間 35.3キロ)

大糸線
大糸線

大糸線は長野県第二の都市・松本から安曇野、大町、小谷を経て新潟県西部の糸魚川までを結ぶ路線だ。松本~南小谷(みなみおたり)間はJR東日本の管轄で、電化もされているが、JR西日本の南小谷~糸魚川間は非電化で、本数も7往復と少ない。令和4(2022)年度の輸送密度は108人/日だった。JR西日本の他の在来線と接続しない離れ小島のような路線で、専ら3両の気動車で運用を回している。現在、沿線活性化策の一環として糸魚川~白馬間の臨時バスによる補完増便などが行われており、バス転換に向けた動きとみることもできる。存続にせよ廃止にせよ、いずれ大きな動きがあるのではないだろうか。

越美北線(越前大野~九頭竜湖間 21.1キロ)

越美北線
越美北線

越美北線は福井駅の隣の越前花堂駅でハピラインふくいから分岐して、「越前の小京都」大野を経て、九頭竜川上流の九頭竜湖駅までを結ぶ路線だ。国鉄時代には九頭竜湖から先、岐阜県側に延伸する計画があった。越前大野まではある程度利用者がいるものの、越前大野から先は利用が極めて少ない。越前花堂~九頭竜湖間全線の輸送密度は318人/日だが、越前大野~九頭竜湖間はもっと低いだろう。当該区間の列車本数は4.5往復で、沿線の学生の通学は大野市が運行するスクールバスによって行われている。他のJR西日本の路線と接続しない孤立路線で、あいの風とやま鉄道への移管が決まっている氷見線・城端線のように今後ハピラインふくいへ移管されるというのも可能性がないことではないだろうが、移管されるのは越前大野までで、その先は廃止というのも考えられないことではない。

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美祢線
美祢線

以上、JR西日本の廃止危惧路線7線区を紹介してきた。今回は「今乗っておいた方がよい」という観点だったので外したが、山口県の美祢線もまた廃止危惧路線である。令和4(2022)年度の輸送密度は377人/日と7線区よりは多かったものの、豪雨被害により長期運休中で、復旧を断念して廃止となる可能性がある。また、輸送密度が200人/日を超え、7線区よりは廃止の優先度が低いと思われる線区についても合わせて注目しておきたい。

鉄道・旅行ライター

駅に降りることが好きな「降り鉄」で、全駅訪問目指して全国の駅を巡る日々。

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