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「貯金より消費したい男」と「貯金大好き女」との永遠の戦い

荒川和久独身研究家/コラムニスト/マーケティングディレクター
(提供:イメージマート)

あまり話題にならない貯金額の話

婚活系の話では常に取り上げられる年収の話。少し前に、2021年の出生動向基本調査で、結婚相手の条件に「女性は男性の容姿を求めるようになり、男性は女性の経済力を求めるようになったという私の記事がテレビやネットニュースなどで取り上げられ話題になった。

とはいえ、それはあくまで過去からの伸び率でみた場合であり、絶対値として、女性が男性の経済力を求める割合は91.6%と相変わらず高い値であることには変わりがない。

婚活の現場では「年収〇〇〇万円以上」の条件は当たり前のように提示されるし、マッチングアプリでは最初の条件検索の段階で足切り基準とされる。

いつも結婚の話題にされるこの相手の経済力問題だが、年収は話題になっても貯蓄はあまり話題にならない。

もちろん、初婚の中央値年齢である20代後半から30代前半においてそれほど貯蓄ができる余裕のある若者も少ないだろう。実際、未既婚男女問わず全体の29歳以下で貯蓄ゼロの割合は19%も存在する(2019年国民生活基礎調査)。

平均貯金は高いが…?

では、単身世帯の男女で貯蓄金額の分布に差はあるのだろうか。

平均貯蓄額で見てしまうと、男820.8万円、女820.1万円とほぼ変わらない。しかし、これを見て「そんなにあるの?」と思った人も多いだろう。平均してしまうと一部の高額貯蓄者に引っ張られて、実像とはかけ離れたものになってしまう。実際は、最頻値は単身男女の場合も「貯蓄ゼロ」で約2割を占める。

しかし、各年収毎の構成比の男女差を見ると、おもしろい傾向が出る。

貯蓄ゼロから400万未満では圧倒的に単身男性が多く、400万円以上のゾーン、特に700-1500万円の貯蓄ゾーンで単身女性が圧倒的に多いことがわかる。つまり、ここからわかるのは「貯金できない独身男、貯金大好き独身女」という傾向である。

全国単身世帯収支実態調査で男女単身者の年齢別でみても、絶対預金額ではなく所得に対する現預金保有高の割合で比較すると、20代までは男>女であるものの、30歳を超えると逆転している。つまり、単身女性の方が年収の中からやりくりして貯金しているということである。逆に言えば、単身男性たちは貯金ができないほど一体何に使っているのだ、という話でもある。

もちろん、中には地道に貯金している人もいるだろうが、独身男が貯金ができない理由には、浪費だけではなくそもそも所得の低さも関係あるかもしれない。「宵越しの銭は持たない」と言われたのは江戸っ子気質だが、これはその日に使ってしまえるだけの所得しかないということでもある。

写真:イメージマート

貯金より消費したい男たち

未既婚男女の年代別で消費と貯蓄意識について調査した結果をあわせてみると、さらに興味深い傾向が出ている。

「消費するより貯金したいか」という質問に対して、20代では男女ともほぼ半数が「貯金したい」と考えているが、年代を重ねるごとに、男性だけは「貯金より消費したい」という気持ちが上回っていく。女性は何歳になってもほぼ半数が「貯金したい」派である。この差が長い年月を経て、前述したとおりの貯金額の差となって表れるのだろう。

そして、ある意味、当然かもしれないが、未婚女性より既婚女性の方が貯金意欲は高い。各種機関の調査で「お小遣い制」の夫の割合が出ているが、調査によって若干の数字の違いはあれど、令和の今でも50-60%の夫が「お小遣い制」である。しかし、既婚男女のこの「消費したい夫」と「貯金したい妻」との数字の乖離をみれば、家計管理を夫に任せていると貯金できなくなるというのもうなづける。「夫のお小遣い制」というのは家族の貯金のためには必要な妻の発明だったのかもしれない。

もちろん、家の家計をきっちり自分で管理する夫もいるだろう。最近では、それぞれの財布を別にもち、家計に必要な分を互いに出し合い、相手がどれだけの所得があるのかすら知らない夫婦というのもいるという。

それぞれの夫婦で合意したやり方はマチマチだろうが、大きな傾向としては半数以上の夫婦が未だに「妻管理家計・夫はお小遣い制」であるというのが現実である。

写真:アフロ

そして、不思議と男性は未既婚問わず、40代で消費意欲がMAXになる。こちらの記事(→なぜ男性は不幸なのか。なぜ40~50代は不幸なのか。なぜ未婚の中年男性は不幸なのか)で男女の幸福度の調査結果を出しているが、男性は未既婚問わず40代が不幸度MAXとなる。「いろいろ買いたいものがあるのに買えない」という状況が不幸の源になっている可能性もなきにしもあらずだろう。

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独身研究家/コラムニスト/マーケティングディレクター

広告会社において、数多くの企業のマーケティング戦略立案やクリエイティブ実務を担当した後、「ソロ経済・文化研究所」を立ち上げ独立。ソロ社会論および非婚化する独身生活者研究の第一人者としてメディアに多数出演。著書に『「居場所がない」人たち』『知らないとヤバい ソロ社会マーケティングの本質』『結婚滅亡』『ソロエコノミーの襲来』『超ソロ社会』『結婚しない男たち』『「一人で生きる」が当たり前になる社会』などがある。

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