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夫婦の現実~妻の借金をなんとかしようとする夫、夫が借金したら見捨てる妻

荒川和久独身研究家/コラムニスト/マーケティングディレクター
(写真:アフロ)

借金があると言われたら?

「結婚生活は愛なのか?金なのか?」

ありふれた問いだが、それでは、結婚しようと思った相手に、もし多額の借金があることがわかったら、そのまま結婚するだろうか?取りやめるだろうか?

結婚前ならまだしも、もし結婚した後に、相手に借金を作られてしまった場合、その結婚生活をどうするだろうか?

そんな問いを全国20~50代の未既婚男女を対象に調査したことがあるのでご紹介したい。

質問は、「恋人または配偶者が返済不可能な借金を抱えたことが判明しました。あなたは、その相手と別れますか? それとも一緒に返済を頑張りますか?」というものである。グラフは、「別れる」と「一緒に頑張る」との、それぞれの割合の差分を示したものである。

棒グラフが上に伸びていれば「別れる」が多い、下に伸びていれば「一緒に頑張る」が多いことを意味する。どういう形の借金なのかなど細かい前提条件は設定してはいない。パートナーに自分の能力を超えた巨額の借金があるという事実を突然突き付けられたときに、どう考えるかという話である。

結果はこちら。

(C)ソロ経済・文化研究所 荒川和久
(C)ソロ経済・文化研究所 荒川和久

「別れる」が圧倒的多数

まず、未婚者を見ると、性別・年代かかわらず、すべて「別れる」が圧倒的多数派となっている。但し、どちらかといえば、男性より女性のほうがきっぱり別れるという傾向が強く、倍近い開きがある。借金のある男は捨てられる。

写真:アフロ

一方、既婚女性も、未婚女性ほど「別れる」率は高くはないものの、全年代「別れる」派が多くなっている。その中で、既婚男性だけが異彩を放つ。40代を除いて「一緒に頑張る」派のほうが多い。

この結果は、正直意外だった。

未婚のカップル同士の場合はまだわかる。恋人同士とはいえ、まだ他人であり、こうした割り切り感は納得できるのだが、すでに結婚して家族となっている既婚者、とくに既婚女性は、もっと「一緒に頑張る」率が高いものと予想していたからである。

ところが、現実は、「妻の借金をなんとかしようとする夫、夫が借金したら見捨てる妻」という構図だった。妻からすれば、まさに「金の切れ目は縁の切れ目」そのものである。

より詳細な既婚者のクロス集計結果

とはいえ、こうした既婚者の判断の背景には、それぞれの年収や貯蓄の多寡、子の有無、夫婦間の価値観の影響もあるだろう。そこで、既婚男女に絞って、いろいろな前提条件によるクロス集計結果も行ってみた。

それによると、既婚女性で「一緒に頑張る」が多くなるのは、「自分の年収が400万円未満」と「結婚は金より愛が大事だ」と答えた人たちだけだった。

「結婚は金である」と回答する女性が「別れる」を選択するのは当然として、子どもがいようがいまいが関係なく、年収や貯金に関しては、自分の年収や貯金額が多い女性ほど「別れる」派が多いのだ。

対して既婚男性を見ると、「結婚は金だ」「貯金600万円以上」の人が「別れる」派なのは既婚女性と同様だが、ほかはことごとく逆の傾向である。年収400万以上で、貯金は600万未満、子の有無関係なく、結婚は愛だと考えている既婚男性は、妻の借金をなんとかしようとするのだ。

※年収400万円及び貯金600万円は調査対象者の平均値で分けている。

写真:イメージマート

結婚とはなんだろう?

この結果からは、妻にとって「結婚とは経済生活である」という、彼女たちにとっては当たり前の価値観が浮き彫りになる。愛なんかで飯は食えないのである。

同時に、世の夫や父親は、家族のためには自分の身を犠牲にしてでも守ろうとする意志なのか、はたまた呪縛のようなものも感じられる。一方で、年収の低い夫と貯蓄額の多い夫だけは、妻や家族を捨てて「逃げ出す」のだ。

さらに、全体的に少数派であるが、夫の借金をなんとかしようとする妻は、低年収で、結婚は愛だと考えている女性だけに限られる。ロクに働かず、借金まみれのヒモのような夫を支えるために無理をする妻の姿もそこにはイメージできる。

もちろん、これはあくまで私が調査した範囲の中での傾向であり、全体がそうだと断定するものではない。個々の夫婦ではそれぞれに判断も違うだろう。

しかし、ここから読み取れるのは、決して「借金や貧乏は愛を壊す」ということではないように思う。むしろ、そもそも「夫婦愛というものは、あくまで普通の生活のできるお金があるという土台の上でしか構築できないもの」なのだ。

結婚は愛だのなんだのと言ってはいても、お金がない結婚は砂上の楼閣にすぎないのだ。

写真:アフロ

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※記事内グラフの無断転載は固くお断りします。

独身研究家/コラムニスト/マーケティングディレクター

広告会社において、数多くの企業のマーケティング戦略立案やクリエイティブ実務を担当した後、「ソロ経済・文化研究所」を立ち上げ独立。ソロ社会論および非婚化する独身生活者研究の第一人者としてメディアに多数出演。著書に『「居場所がない」人たち』『知らないとヤバい ソロ社会マーケティングの本質』『結婚滅亡』『ソロエコノミーの襲来』『超ソロ社会』『結婚しない男たち』『「一人で生きる」が当たり前になる社会』などがある。

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