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「魅力劣る人はより頻繁にマスク着用」研究で判明と米紙

安部かすみニューヨーク在住ジャーナリスト、編集者
(写真:イメージマート)

6日、航空業界が機内でマスク着用を求めない方針を決めるなど、日本ではここに来てマスク着用ルールの自由化が進んでいる。

また学校の卒業式でも、マスクなしでの実施が容認されそうだ。

マスク着用は今後、個人の判断や意思に委ねられるケースが増えていき、「着け続けるか外すか」の議論が活発化している。

今年1月9日、東京・渋谷を行き交う人々。
今年1月9日、東京・渋谷を行き交う人々。写真:つのだよしお/アフロ

パンデミック中にマスク着用義務があったアメリカでは、昨年4月に空港や国内線の機内での着用義務が撤廃され、全米でマスク離れが一気に進んだ。

その後も州ごとにルールが分かれ、ニューヨークでは公共交通機関や駅で残っていたマスク着用義務も9月に撤廃され、着用するか否かは個人の選択となった。

その後、街の人はどうなったのかというと、徐々にマスク離れが進んでいき、現在はほとんどの人がマスクを着けていない。

ただしコロナ禍以前のような風景が完全に戻っているかというとそうでもなく、街を歩いていても電車の中でもイベントでも、一部の人はマスクを着けている。インフルエンザの時期というのもあるかもしれない。

屋外では一部を除き、マスク姿はほとんど見かけなくなった。ニューヨーク市内にて、今年1月。(c) Kasumi Abe
屋外では一部を除き、マスク姿はほとんど見かけなくなった。ニューヨーク市内にて、今年1月。(c) Kasumi Abe

そんな中、7日付のFOXニュースニューヨークポストは、興味深い研究結果をもとに「’魅力的でない’人はより頻繁にマスクを着用していることが判明」とする記事を発表した。

平均年齢が33、34歳の女性が半数以上の対象者を調査したこの研究結果は、心理学専門誌「フロンティアズ・イン・サイコロジー(Frontiers in Psychology)」に掲載されたものだ。「マスク着用は、新型コロナの感染予防から自己アピール戦略として(フェーズが)移行していることを示唆」とあり、FOXニュースが韓国のソウル大学校の心理学の教授や米ノースキャロライナ中央大学(NCCU)の心理学の客員教授に聞いた話をまとめている。

「ポストコロナの世界では多くの人々が脱マスクを喜んでいる中、一部の人はマスクを着用し続ける」状況を鑑み、「自己認識の魅力アップ(魅力的により見えること)がマスク着用の動機だとしても、着用し続ける理由の1つに過ぎないのだから、マスクをしている=醜いとするのは不適切」と断りを入れながらも、着用し続ける人にはあくまでも以下の傾向があるとした。

  • 自分を魅力的でないと認識している人は、マスク着用を厭わない
  • 自分が他人より魅力的でないと認識している人は、好印象を与えることに意欲的な場やそれらの強い動機によって、マスクを着用し続ける可能性が高い

好印象を与えたい強い動機がある場というのは、例えば就職面接などだ。

ほかにも、パンデミック中のマスク着用の義務化については、専門家の意見も交えこのように分析した。

  • 意図しない利点(季節性インフルエンザの減少)と欠点(閉所恐怖症の患者の悪化)の両方をもたらした
  • 自己認識が否定的だった(見た目の自己肯定感が低い)人にとって、意図しない利益があった
  • マスクは対人関係において、否定的な感情の表現を隠してくれるものだった。魅力的でないと認識している人にとって(自信がない部分を)隠すものでもあった

試飲もあり、この室内イベントでマスク姿の人は見かけなかった。(ニューヨーク市のKASHIYAMAで今月。写真は筆者により一部加工済)。(c) Kasumi Abe
試飲もあり、この室内イベントでマスク姿の人は見かけなかった。(ニューヨーク市のKASHIYAMAで今月。写真は筆者により一部加工済)。(c) Kasumi Abe

雇用機会均等法が厳しいアメリカでは、履歴書に写真を貼ることは禁じられているが、そのような国においても、現実的には、面接で外見が結果を左右する一つの要因になりうるということは、まことしやかに言われている。

例えば、最終面接に学歴も条件も遜色がない2人が残った場合、最終的に1人に絞る決め手は、「見た目の美しい方になるだろう」とされている(もちろん反対意見や例外もある)。

そのような見た目も重要な要素となる就職面接の場を仮の設定とし、マスクを着用するか否かの調査も行われ、このような結果を示した。

  • 自分が魅力的だと思っている人はマスク着用により魅力が低下すると考えるため、着用する可能性は低い

マスクを着けることによる自己認識の魅力は、好印象を与えたい強い動機がある場(仕事の面接や初デートなど)で効果を発揮するようだ。よって日常的な活動の場(例えば犬の散歩など)においては、影響はないという。

調査をもとにしたこの報道は、「ポストコロナの時代は、マスク着用が自己顕示自己保護という2つの機能を果たすことができることを示している」と結論づけた。

また、調査は支持政党によるマスク着用の是非についての視点で行われたものではないこと、そして「時が経てば、マスク着用による意図しないメリットと結果がより多く明らかになるだろう」とつけ加えられた。

(Text and some photos by Kasumi Abe)  無断転載禁止

ニューヨーク在住ジャーナリスト、編集者

米国務省外国記者組織所属のジャーナリスト。雑誌、ラジオ、テレビ、オンラインメディアを通し、米最新事情やトレンドを「現地発」で届けている。日本の出版社で雑誌編集者、有名アーティストのインタビュアー、ガイドブック編集長を経て、2002年活動拠点をN.Y.に移す。N.Y.の出版社でシニアエディターとして街ネタ、トレンド、環境・社会問題を取材。日米で計13年半の正社員編集者・記者経験を経て、2014年アメリカで独立。著書「NYのクリエイティブ地区ブルックリンへ」イカロス出版。福岡県生まれ

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