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なぜ人は職場で「話す」必要があるのか? その理由はたった一つしかない

横山信弘経営コラムニスト
話すのって生産性悪いよね?(提供:イメージマート)

■「話す」ことの非生産性

職場で誰も話さないと気持ちが悪い。しかし「話す」ことで生産性が落ちることはとても多い。これを読んでいるあなたも、そう感じたことはあるだろう? その理由は一体何だろうか? それは伝達効率の悪さにある。

「話す」のが苦手な人の話を正しく理解するのには、誰だって時間がかかるだろう。何度も聞き直す必要があるし、相手が上司だと聞き直すこともできない。そのせいで認識のズレが生じ、勘違いした仕事をしてしまうこともある。これだと、非常に生産性が悪い。

したがって伝達が目的なら、メールやビジネスチャットでテキストデータをやり取りしたほうが圧倒的に生産性が高い。図表なども付け加えればなおいいだろう。

伝えるほうは相手の顔色をうかがうことなく、自分のペースで編集できるし、データの受け手も自分のペースでテキストや図を読解できる。このように、テキストによる伝達は極めて効率がいい。

それなのに、ビジネスの現場では会議でも商談でも面談でも、とにかく話す。なぜこんなに生産性の悪いコミュニケーション手段を使うのか。その理由を探ってみよう。

■「話す」ことの真の目的

友達同士で集まって雑談するのならいい。いくらでも話したらいい。しかし職場は仕事をする場である。しかも昨今は「一に生産性、二に生産性、三、四がなくて、五に生産性」とまで言われる時代だ。生産性の低いコミュニケーション手段である「話す」は、使うのを控えたほうがいい。

職場で「話す」理由は1つしかない。それは情感を伝えるためだ。話す中身がたとえ伝わりづらくなったとしても、情感を伝えることで得られるメリットがあるのだ。そのメリットとは以下の2つである。

(1)相手との信頼関係の構築と維持
(2)相手の意識と行動の変化

1つは信頼関係を築けること。もう1つは相手を動かすことができることだ。人の感情や行動を動かすのは理屈ではない。感情なのだ。

テキストや数字でも人の心を動かすことはできる。しかし、人間はコンピュータではない。それだけで人は納得したり、気持ちを変えたりすることはできない。だからこそ、ビジネスにおいて人は「話す」のである(メールよりも手紙でもらったほうが、嬉しいと思える人がいるように)。

例えば、新規プロジェクトの立ち上げ時に、リーダーが熱意を込めて語りかけることで、チームメンバーの士気が上がることがある。また、困難な局面での上司の励ましの言葉が、部下の奮起につながることもある。テキストデータでは伝わらない情感が、「話す」ことによって相手の気持ちを動かすのだ。

■生産性を意識した「話す」ことの取捨選択

ここで重要なのは、情感を伝える以外の目的で「話す」ことは生産性を下げる可能性が高いということだ。つまり、情報共有が目的の会議、報告が目的の打ち合わせ等はすべてなくしたほうがよい。

例えば、週次の進捗報告会議をメールやチャットでの情報共有に置き換えることで、時間の節約になる。また、日々の業務連絡も、可能な限りテキストベースで行うことで、お互いの作業の中断を最小限に抑えられる。

「タイパ」の時代なのだから、昨今はとくに気を付けるべきだ。

ビジネスにおいては常に「話す」目的を意識し、本当に「話す」必要があるかどうかを考えること。メンバー全員が心がけることで、真に生産性の高い職場が出来上がるだろう。

<参考記事>

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経営コラムニスト

企業の現場に入り、目標を「絶対達成」させるコンサルタント。最低でも目標を達成させる「予材管理」の理論を体系的に整理し、仕組みを構築した考案者として知られる。12年間で1000回以上の関連セミナーや講演、書籍やコラムを通じ「予材管理」の普及に力を注いできた。NTTドコモ、ソフトバンク、サントリーなどの大企業から中小企業にいたるまで、200社以上を支援した実績を持つ。最大のメディアは「メルマガ草創花伝」。4万人超の企業経営者、管理者が購読する。「絶対達成マインドのつくり方」「絶対達成バイブル」など「絶対達成」シリーズの著者であり、著書の多くは、中国、韓国、台湾で翻訳版が発売されている。

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