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保育園はいつもインクルーシブ教育「グレーの子とクラスメイトとの1日」便器にレゴ

オオタ先生現役保育士 幼保英検1級

現役保育士(幼保英検1級)です。

子どもの年齢・国籍・障害の有無などの違いをすべて受け入れる教育法、「インクルーシブ教育」を取り入れるべきという考え方が広がってきました。

でも、乳幼児が共同生活を送る場である保育園で働く立場としては、「そのような考え方が認知される前から保育園はインクルーシブな環境ですが」と思うのです。

認可保育園では特に、市区町村が点数を元に入園可否を決定するため、保育園側は、発達に困難を抱える(将来的に抱えるであろう)子も困難の程度によらず平等に受け入れます。

入園してきた子たちを保育していく過程で、その困難の程度を見極めていくというのが、偽りのない事実です。

今回は、年中時に加配保育士が付くことになった園児たっくん(仮名)が2歳児クラスだった時の様子を通して、インクルーシブな環境の実態を垣間見ていただければ思います。

障がい疑いの子とクラスメイトの保育園生活

保育園では障がいがある子も障がいがない(とされる)子も、同じ活動をし、同じ給食を食べて共に生活をします。

7:45 登園

たっくんが登園してきました。

たっくんはトイレや押し入れに入ったり、廊下に走って出て行ったりする傾向があるため保育士がほぼマンツーマンでついています。

その他の全員をもう一人の保育士が見ている状態で合同保育が進みます。

9:00 朝の会やおむつ替え

2歳児クラスの保育室に移動します。
2歳児クラスのときはたっくんには加配の先生が付いていないため、担任2人で他のクラスメイトも含めて保育します。

朝の会、たっくんは立っていることが難しいため、朝の会の間はマンツーマンで保育士が後ろにつきながら、クラス全員分の朝おやつや主活動の準備をしています。

もう一人の保育士は、朝の歌のピアノを弾きながら自分も歌いつつ、他のお友達に声掛けをしています。

9:30 おむつ替え

おむつ替えをします。

他のお友達のトイトレに影響を受けたのか、たっくんもトイレ内には入れるようになりました。

2歳児クラスでは身辺自立はまだまだ難しく、担任保育士2人が他のお友達のおむつ替えをあわただしく手伝っていると、トイレの中から「カラーン」。

たっくんが便器の中に何かを投げています。

レゴでした。

保育士の一人が「たっくん、やめてー」と止めつつ、レゴを拾って洗浄・消毒。

もう1人で他のお友達全員を補助することは難しく、おむつを持って歩きだす子も出てきました。

そのときカオスな状態であったことは、隠すべきではない事実です。

10:00 主活動

今日は七夕飾りの制作をします。

保育士が縦長に切った折り紙を子どもたちが手でちぎって、台紙に糊で貼っていきます。

たっくんは折り紙を手でちぎることも、糊を付けることもできませんが、皆と同じように折り紙と糊を机に出します。
保育士がたっくんの手を握り、動かしながらみんなと同じように作品を作っていきます。

このとき、他のクラスメイトと全く同じ作品を作ることを目指すのが、たっくんにとって本当に良いことなのか、毎回葛藤します。

11:20 給食

給食の時間。たっくんがお皿を投げないように、保育士はたっくんの隣についています。

もう一人の保育士で他のお友達全員を介助することは難しいので、たっくんについている保育士も、バナナなど自分で上手に食べられるものを食べている隙に、他の子の介助に向かいます。

13:00 昼寝

午睡(昼寝)の時間です。

たっくんは昼寝をしたくない気分のときは、叫んだり鼻歌を歌っていますが、声が大きく他の子が寝られなくなってしまうため、ひとまず廊下へ移動してもらうことがあります。

15:00 おやつ

おやつを食べて、帰りの会や帰りのお仕度の時間。

時折、室内を走っているたっくんですが、加配保育士が付いていないので担任1人がマンツーマンでたっくんに付いてしまうと、他の子全員に目を配ることが難しくなります。

お支度もおやつの食べ方も、たっくんに特化した方法で丁寧に教えたり、関わったりしたいところですが、そうもできないところに強いジレンマを感じます。

加配保育士制度にはまだまだ問題点が

障がい児保育を推進する取り組みの1つとして、障がいがある子どもを担当するために保育士を配置する「加配保育士」という制度があります。

今回紹介したたっくんには後に加配の先生が付くことになりますが、加配が付くまでに要した年月は3年。

加配の先生が付くまでは、今回紹介したように担任の先生だけで皆と同じように保育園生活を送ってきています。

加配保育士が付くまでの長いプロセス

加配保育士の制度はそもそも補助が少なすぎるという問題に加え、加配が決定するまでのプロセスが長すぎるという問題があります。

加配を付けるかの判断は多くの場合、保護者にゆだねられ、保護者が申請しない限り加配は適用しません。

市区町村により申請の方法は異なりますが、基本的には次の通りです。

  • 保護者が子供の発達障害を疑う
  • 発達検査などを受ける
  • 加配保育利用申請書を市区町村に提出
  • 対象児童の行動観察実施
  • 加配審査会による審査
  • 保護者と保育園に通知
  • 保育園が加配保育士を雇用

参考:障がい児加配申請について/南城市

まとめ

発達に困難を抱える子とクラスメイトとの保育園での1日を紹介してきました。

保育園での保育の実際の姿を通して、インクルーシブ教育とは何かを考える機会になってたのであれば幸いです。

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現役保育士 幼保英検1級

現役の保育士です。「うちの子保育園で何してる?」をテーマに保育園のリアルを伝えます。 幼保英語検定1級・TOEIC 875・ヤマハ指導グレード5級 自身も保育園児の母であった経験から、保護者の立場に立った情報提供を心がけています。

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