勘違い多し!加配保育士とは?お金が補助されるだけで即保育士配置という意味ではない 現役保育士が解説
現役の保育士(幼保英検1級)です。
障がいのある子が保育園を利用するとき、いろいろ調べていくと「加配保育士」という仕組みがあることに気が付くことでしょう。
今回は、加配保育士をした経験がある保育士の立場から、加配保育士と障がい児保育加算制度について解説します。
加配保育士とは?制度上の定義
加配保育士とは、障がいがある子どもを担当するために配置された保育士のことです。
内閣府子ども・子育て本部が「子ども・子育て支援新制度」を整備。
この中で、障がい児保育を推進する取り組みの1つとして、障がい児2名につき保育士1名を水準として配置するよう記載されています。
この制度に準じて配置される保育士が加配保育士などと呼ばれます。
保証しているのは保育士配置ではなくお金での補助
障がい児保育加算制度では「障がいのある子どもに保育士を加配」とうたっているので、さも国や自治体が保育士を手配して配置するかのように誤解されがちです。
実際は、制度で行うのは障がい児を受け入れた保育園に補助金を出すことであり、その人材の採用や捻出は各保育園にゆだねられています。
障がい児1人あたり補助金 月額4万5千円
障がい児保育加算として各保育園が受け取る補助金の金額は自治体により異なりますが、例としては次の通りです。
世田谷区の場合
高知県いの町の場合
本記事では金額が適正かについて議論する気はありません。
ただ、「障がい児2名につき保育士1名を水準」とは、年長児クラスに1人、3歳児クラスに1人障がい児がいたら、2人を同じ部屋で1人の保育士で保育せよという意味なのだろうかとも邪推したくなりますよね。
障がい児という枠でくくるのではなく、同じ年齢の子とそれぞれの部屋で生活を共にすることにも意味があると思います。
予算上の都合といって、2人まとめて1人の加配保育士が保育することを前提とした補助ではあまりにも乱暴ですよね。
加配を付けたくない家庭もある
加配保育士をつけるためには行政への申請が必要ですが、逆に、障がい者手帳の交付をはじめ、加配の申請を一切したくないという保護者の方もいます。
明らかに加配がつかないと身の回りのことはもちろん、座ることすらできない子で、保護者もなんらかの障がいの可能性を認識しているにも関わらず、申請は拒否する家庭もあります。
その理由や気持ちは察することしかできません。
ただ、受け入れる保育園側は加配なしで、現状いる職員でこのような子も一緒に保育せざるをえないのが現状です。
具体的には、慌ただしい給食や着替えの時間に、園長が他の業務を投げ出してその子のいるクラスを保育補助したり、先に給食を終えて午睡準備に入っている1-2歳児クラスの先生を一人借り出して保育補助にあたっています。
このような子の保護者は「遠足などもクラスの皆と同じ体験を」と望む意識が強く、引率の先生が他の子を引率しながら、18kg以上ある歩けない子をおんぶして歩いています。
その時、あと職員一人いたら・・と思ってしまったのは偽らざる気持ちです。
障がい児保育加算制度はないよりあったほうが良い制度ですが、障がい児や周りの他の園児全員にとっても、今後、改善の余地がありますよね。
障がいの可能性に気が付いていないパターンも
そもそも保護者が障がいの可能性に気が付いていないために、加配を付けるかどうかの議論まで至っていない場合も多いです。
家庭内だけで少人数の子どもを見るよりは、大人数の子どもが共に過ごしている保育園という環境での方が、障がいの可能性には気が付きやすいといつも思います。
歩く時の着地の仕方、シール貼りでシールを置く位置、手の振り方、目線などを、同じ年齢の子たちの中で毎日見るうちに「もしかして・・」と思うことがあります。
「もしかして」と思っても保育士からはあえて発信しないことも多いはずですので、保育園での様子が知りたいときはいつでも保育士に聞いてみてくださいね。
わざわざ加配と呼ばれていない加配保育士
加配保育士の業務や運用については各保育園によって異なります。
筆者の保育園を例に挙げると、実際の加配保育士は加配がついている子だけの保育をしているわけではありません。
実際、保護者が加配を申請し許可されたからといって、急に保育士が採用できるわけではありません。
仮にすぐ人材が採用できたとしても、その子が突然退園したら「はい、加配保育士がいらなくなったので今月で辞めてください」という訳にもいきませんよね。
このため、クラス担任が休んだ場合の代行や、様々な行事の対応などを行うフリーという立場の保育士を配置している保育園も多いです。
加配の子がいる場合はフリー保育士の業務に、加配の子の保育という業務を加えているという場合もあるでしょう。
このため、少なくとも筆者の保育園では、加配保育士などという固有のポジション名はありません。
その日その日で予定を組んで、時間が捻出できる先生が加配の子の保育にあたっている状態が近しいです。
まとめ
加配保育士をした経験がある保育士の立場から、加配保育士と障がい児保育加算制度について解説してきました。
では、障がいのある保育園児と加配保育士は、毎日をどのように過ごしているのでしょうか。
次回は、「障がいのある子と加配保育士 保育園での1日の過ごし方を現役保育士が紹介"どこに行くのも一緒"」というタイトルで、障がいのある子と加配保育士との関わり方について具体的に紹介していきます。
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