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キム・ヨナ2世、飲酒とセクハラ、未成年との秘密恋愛まで…スキャンダルに揺れる韓国フィギュア界

慎武宏ライター/スポーツソウル日本版編集長
イ・ヘイン(写真:松尾/アフロスポーツ)

日本では『週刊文春』が報じた女子フィギュアスケートの元世界女王・安藤美姫の“場外問題”がにわかに話題だが、韓国でも女子フィギュアスケートの人気選手が遡上に上がっている。

キム・ヨナ以来14年ぶりの快挙も遂げたスター選手

“キム・ヨナの後継者”の一人と呼ばれたイ・ヘインがそのひとだ。

2005年4月16日生まれで19歳のイ・ヘインは、“キム・ヨナの後継者”と期待された韓国女子フィギュア界の有望株の一人だった。

昨年3月に行われた四大陸選手権ではキム・ヨナ以来14年ぶり、韓国勢史上2人目の金メダルを獲得。さらにその年の4月に東京体育館で行われた世界国別対抗戦でも、銀メダル獲得に貢献するなど、韓国フィギュアスケート界を最前線でけん引している。ファッション雑誌『singles』にも登場する人気者だった。

(参考記事:“キム・ヨナ以来の逸材”と呼ばれる逸材…韓国女子フィギュア選手がアイドル顔負けの美貌で話題【PHOTO】)

ところが、今年5月15日から28日にかけてイタリア・ヴァレーゼで行われたフィギュアスケート韓国代表の合宿に参加した際、ほかの女子シングル選手Bと宿舎で飲酒した事実が発覚し、韓国氷上競技連盟のスポーツ公正委員会に回付された。

イタリア合宿中に飲酒、セクハラ、違法撮影で処分

連盟は調査の過程で、飲酒のほかにセクハラ行為があったことを把握。そして、6月20日のスポーツ公正委員会で、イ・ヘインが飲酒だけではなく未成年で異性の後輩選手Aにセクハラをしたとして、3年間の国家代表資格停止処分を下した。

また、イ・ヘインの性的不快感を誘発する写真を違法撮影し、後輩選手Aに見せる行為をしたBにも、1年間の国家代表資格停止処分が科された。

被害を受けた後輩選手Aも、女子宿舎を訪問したことが「強化訓練規定違反」と判断され、けん責処分が科されたことで一件落着と思われた。

ところが、この処分にイ・ヘインが真っ向から反論。被害を受けた後輩選手Aとも主張が食い違っており、両者の争いは泥沼の様相を呈している。

イ・ヘインの法律代理人を務めるキム・ガラム弁護士は6月27日、「選手は飲酒に対して深く後悔し、反省している」としながらも、「連盟が2人が恋人関係だったという事実を知らなかったため、事実関係を誤認したのだ。これに対し、公正委員会に再審議を申請し、セクハラと関連した部分は十分に疎明する予定だ」と説明した。

飲酒行為は謝罪するも「彼は恋人」と反論

イ・ヘイン本人も、自身のインスタグラムを通じて「私がお酒を飲んだことは、今考えても絶対にしてはいけない行動であり、深く反省しています」と飲酒行為を謝罪した。

だが、「記事には私が未成年者にセクハラをしたとか、性的加害をしたとか書かれていますが、この部分は事実ではありません」と、セクハラ行為を否定。

未成年で異性の後輩選手について、「昨年、私が高校生のときに付き合った彼氏で、両親の反対で別れた後、今回の合宿でまた会うことになった子でした。お互いを好きだった感情が残っていたためか、そこでまた付き合うようになりましたが、両親に知らせたくない一心から、その事実を秘密にすることにしました」と“恋人関係”であることを告白した。

そのうえで、「恋人同士であればするであろう悪ふざけや愛情表現だと思っていましたが、いくら私たちが付き合っていることを明らかにできなかったとしても、このような誤解まで受けるとは想像もできませんでした」と強調した。

後輩選手Aの主張「精神科治療を始めた」

一方の後輩選手Aも、イ・ヘインとの交際の事実は認めた。ただ、“セクハラ”と言及された行為が起きた当時は「大きく戸惑った」という見解を示しているのだ。

Aの法律代理人を務めるソン・ウォヌ弁護士は同日、立場文を発表し、「イ・ヘインとAは2023年7月から10月初旬まで交際し、イ・ヘインが別れを切り出して破局した。そして2024年5月、フィギュア代表のイタリア合宿が始まって2~3日後に再会した」と言及した。

それとともに、「Aはイ・ヘインとなるべく会わないように努力したが、イ・ヘインが話をしようと(Aを)宿舎に呼んだ。イ・ヘインが再び会わないかと提案し、Aも次の日にそうしようと伝えた」と、Aが女子宿舎を訪問することになった経緯を説明した。

また、ソン弁護士は「合宿期間中、Aがイ・ヘインの部屋を訪問し、イ・ヘインがセクハラ疑惑を受けることになった行為が起きた。Aは非常に戸惑い、驚いてすぐに部屋から出ていった」とも付け加えている。

Aは帰国後、両親にこの事実を知らせ、イ・ヘインにも別れを告げたという。そんななか、今月中旬に「秘密恋愛をしよう」というイ・ヘインの提案を受け、再び交際を始めたらしい。

ソン弁護士は「イ・ヘインは秘密恋愛をしながら、海外合宿当時の状況をひとつずつ尋ね、事後的な証拠収集などの対処のため、当時の状況に関して質問した」とし、「この事実に気づいたAはショックを受け、現在は精神科治療を受けている」と明らかにした。

現役バリバリの、しかも韓国フィギュア界のエース格のひとりであるスター選手が合宿中に起こした飲酒問題だけではなく、「セクハラ」や「不法撮影」などの言葉が飛び出し、さらには選手同士の色恋沙汰の縺れにまで発展している今回の件は、韓国フィギュア界を揺らすスキャンダルになっていることは間違いない。

いずれにしても今回の騒動によって国家代表資格停止3年の処分となったイ・ヘイン。スポーツ公正委員会に再審を請求するそうだが、処分が確定なら2026年のミラノ冬季五輪に出場することができなくなる。

ライター/スポーツソウル日本版編集長

1971年4月16日東京都生まれの在日コリアン3世。早稲田大学・大学院スポーツ科学科修了。著書『ヒディンク・コリアの真実』で02年度ミズノ・スポーツライター賞最優秀賞受賞。著書・訳書に『祖国と母国とフットボール』『パク・チソン自伝』『韓流スターたちの真実』など多数。KFA(韓国サッカー協会)、KLPGA(韓国女子プロゴルフ協会)、Kリーグなどの登録メディア。韓国のスポーツ新聞『スポーツソウル』日本版編集長も務めている。

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