「真夏の汚物収集」に苦しめられる北朝鮮国民、政府に猛反発
北朝鮮では毎年1月、人糞や家畜の糞を集めて堆肥を作る「堆肥戦闘」が大々的に展開される。国内の工場で化学肥料を製造しているが、それだけでは需要を満たすに至らないため、代用品として堆肥を作っているのだ。
凍った状態のものをシャベルなどで割って、藁と混ぜて発酵させるのだが、当然のことながら臭いが激しく、非常に辛い作業だという。
そんな作業を、夏を控えた今の時期にやれとの命令が下され、北朝鮮国民を困惑させている。米政府系のラジオ・フリー・アジア(RFA)が報じた。
両江道(リャンガンド)の情報筋によると、朝鮮労働党の両江道委員会から恵山(ヘサン)市内の人民班(町内会)の会議を通じて23日、「乾燥させて納めよ」との指示が下された。ノルマは1世帯あたり10キロだ。
通常は近隣の協同農場に納めることになっているのだが、今回は市内から8キロも離れた劔山里(コムサンリ)の複合肥料工場に納めて確認証を受け取れという。初夏を迎えて暑いというのに、乾燥させるだけではなく、遠くの工場まで運べという命令に、住民は呆れた様子だという。
なお、夏にこうした指示が出されたことは今までなかったという。
平屋の住宅に住んでいる人は、汲み取り式トイレから掻き出して乾燥させればいいが、マンションに住んでいる人は、いきなり集めよと言われても方法がない。出せない人は、代わりに5000北朝鮮ウォン(約90円)の現金を支払うように命じられた。
別の情報筋も、同様の命令が下されたとして、住民の反発が高まっていると伝えた。特に、代わりに現金を払えというところに、多くの人が怒っているようだ。
「党は、税金のない社会主義制度の下で、われわれ人民はこの世に羨むものはなく幸せに暮らしていると宣伝しているが、大嘘だ。党の偉大さを宣伝する時は税金がないといいながら、命令はすべてカネを出せというものばかりだ」
朝鮮労働党両江道委員会の目的は、堆肥の製造ではなく、それを口実にして現金を集めていることにあると見抜かれているのだろう。
金正恩総書記は、「税金外の負担」を強いる行為が横行しているとして、これを強く諌める発言を行っているが、党組織も地方政府も、中央から予算を受け取れず、自主調達することを求められている。そのため、住民から絞り立てる以外に方法がないのだ。これが国民の強い反発を生むのだが、一向になくなることはない。
さて、この時期に特に使い道があるとは思えない堆肥だが、それについて情報筋は言及していない。
(参考記事:【写真】水着美女の「悩殺写真」も…金正恩氏を悩ませた対北ビラの効き目)
北朝鮮は最近、韓国に向けてゴミ、ボロキレなどを入れた「汚物風船」を大量に飛ばすという嫌がらせを行っている。韓国・統一省の分析で、風船から様々な寄生虫が発見された。これは、堆肥が風船に入れられているということに他ならない。
今回作られた堆肥は、もしかして韓国向けのものだったのかもしれない。