知ってほしい!保育士が紹介する外国籍園児の保育園生活「手で食べるかスプーンか」迷う保育士と親たち
現役の保育士(幼保英検1級)です。
直近3本の記事では外国籍やハーフの子どもの保育園入園に関する情報をお届けしてきました。
外国にルーツを持つ子どもが保育園に入園する場合、保護者も保育士も迷いながら手探り状態で日々の保育を行っているのは事実です。
今回は、保護者と保育士、迷う大人たちの様子にフォーカスを当てて、外国にルーツを持つ子どもの保育園生活について紹介します。
11人は給食一人だけお弁当
牛肉、豚肉、アルコールなど、日本国内の保育園では一般的に給食の食材として使われているものも、国によっては宗教上の都合で口にしてはいけない食材があります。
給食における宗教への配慮については、国として決定したガイドラインや補助もなく各保育園に対応が任されているのが現状です。
- 摂食してはいけない食材を除去した配慮食を提供する
- 摂食してはいけない食材を使ったメニューの日だけお弁当を持参してもらう
など、対応は様々です。
宗教上、摂食できる食材に制限がある場合は、入園前の面談で栄養士を交えて対応を話し合う他、毎日の献立表で食材を確認していきます。
例えば、豚肉が食べられない場合、ゼラチンも豚皮が原料として使われているので、おやつがゼリーの日も他の子と同じメニューは提供できなくなります。
この場合、おやつも個別対応をします。
宗教上の配慮でお弁当にする日の様子
今日の給食のメニューは焼きそば・スープ・バナナ。
焼きそばで豚肉を使っているのでロイ君(仮名)はお弁当持参です。
保育士たちは、豚肉由来の食材を使っているメニューにだけマーキングをしたロイ君専用の献立表を確認し、誤って給食を提供しないように準備します。
給食の時間、ロイ君のお弁当を開けると、おそらく鶏肉であろうお肉が入ったフライ麺にスープ、バナナと給食とメニューがほぼ一緒です。
お弁当であっても、お友達と似たメニューを食べさせてあげようというママの気持ちが伝わってきますね。
「おしぼりって何」保護者の苦労
0-2歳児クラスの子は、給食やおやつを食べるとお口の周りがべっとりです。
食後は濡らした小さなタオルやおしぼりで手や口をきれいに拭き取るという保育園も多いでしょう。
このおしぼりは毎朝保護者の方が準備してくださるのですが、日本に長く住んでいる人なら”おしぼりタオルを準備してください”と聞いただけで、「ああ、あの小さいタオルね」とピンときますよね。
日本語は話せないながら毎朝、保育園の準備を一生懸命してくださるジョー君(仮名)のお母さん。
おしぼりタオルの意味や大きさが分からず迷っている様子を見て、タオル一つとっても使い方や流通しているサイズが国によって異なることを学びました。
それからは、自宅から新たに持参してもらいたいタオルや用品はサンプルを用意して、保育室の前に掲示するようにしましたよ。
手で食べるかスプーンか
ハーフや外国籍の園児を受け入れるときには毎回、当たり前と思っていた生活習慣に対し「これ、日本だけだったか」と気付かされます。
「食事は箸やスプーン・フォークなどのカラトリー類を使って食べる」というのは日本での一般的な習慣ですが、手で食べるのも一般的な食べ方という国もありますよね。
初めての給食で、手以外では食べない姿などを見ると、日本の常識は他国の常識ではないと改めて気付かされます。
保育園では給食のときにカラトリー類の持ち方やマナーなども教えますが、このためハーフや外国籍の園児への声掛けは非常に迷います。
2歳児クラスから入園したテレサちゃん。茶碗に手を突っ込み大好きな白飯を食べています。
テレサちゃんの場合は面談などで、今後も日本で暮らし続ける意向で、このためテレサちゃんが日本の生活文化に溶け込めるよう日本人の子が多く通う保育園を選んだという背景も聞いていたため、「”保育園では”スプーンも使って食べてみよう」という声かけにしています。
これが正解かどうかは分かりません。
ハーフや外国籍の園児への声掛けや対応は、保育士も迷いながら手探りで行っていることだけは事実です。
まとめ
ハーフや外国籍の園児たちが日本の保育園でどのように生活しているのか、保護者と保育士、迷う大人たちの様子にフォーカスを当てて紹介してきました。
今後、さらに外国にルーツを持つ保育園児が増えたとしても、明確な対応ガイドラインを整備することは不可能に近く、その子どもや家庭の意向を汲みながら最適解を探していくことが続くと予想しています。
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