米太平洋陸軍司令官「インド太平洋に来年、新たな中距離ミサイルを配備する」と明言 中国メディアは反発
米太平洋陸軍のチャールズ・フリン司令官が来年に地上配備型の中距離ミサイルをインド太平洋地域に配備する予定であると発言したことに対し、中国メディアが「中国への大きな挑発」と反発している。
フリン司令官は18日、カナダ南東部のノバスコシア州で開かれたハリファックス国際安全保障フォーラムで、米太平洋陸軍が中国の台湾侵攻を阻止する取り組みの一環として、限られた数の陸上配備型トマホークとSM-6を含む新たな中距離ミサイルをインド太平洋地域に配備する予定であると明言した。
フリン司令官は「2024年に我々はインド太平洋地域にそのシステムを導入するつもりだ。いつ、どこに、とまでは言うつもりはない。しかし、我々はそれを配備するとだけは言っておく」と明確に述べた。
海外メディアの間では、最終的に日本に配備されるとの見通しを伝える報道も出ている。
トマホークには地上発射型のほか、水上艦艇に搭載される水上発射型と潜水艦が搭載する水中発射型があり、最大射程は2500キロメートルにも達する。米国は、1987年に署名したロシアとの中距離核戦力(INF)全廃条約に基づき、射程500~5500キロの地上発射型ミサイルを全廃し、以後も保有してこなかった。しかし、トランプ前米政権が2019年、ロシアによる条約違反のミサイル開発を理由に条約を離脱し、今は既に失効した。
米国防総省が10月に公表した2023年版の中国の軍事力に関する年次報告書によると、同条約に縛られてこなかった中国は、中距離弾道ミサイル(IRBM、射程3000~5500キロ)を500発、準中距離弾道ミサイル(MRBM、射程1000~3000キロ)を1000発、短距離弾道ミサイル(SRBM、300~1000キロ)を1000発それぞれ保有している。射程1500キロ以上の地上発射巡航ミサイル(GLCM)も300発保有すると記されている。
現実味を増す台湾有事を見据えて、米軍はこうした中国との「ミサイル格差」の是正を急いでいる。米海兵隊は7月、カリフォルニア州のキャンプ・ペンドルトンを拠点とする第11海兵連隊に史上初のトマホーク大隊を創設した。
フリン司令官はまた、中国の軍事力強化が加速していると述べた。中国の急速に発展する能力は過去数年間で大幅に向上しており、アジア太平洋地域にとって「危険な」軌道に乗っていると指摘した。さらに、中国の台湾侵攻の可能性についてのタイムラインには言及しなかったが、この問題についての中国最高指導者の習近平国家主席の意思決定プロセスに影響を与える可能性のある4つの要因を挙げた。
1つ目は、中国が台湾侵攻の際に西側諸国の制裁を乗り切ることができると習主席が判断するかどうか。2つ目は中国がどれほどまでに米国の同盟国やパートナー国の間に楔を打ち込み、不和を助長できることに成功するか。3つ目に習主席が人民解放軍(PLA)が台湾侵攻を実行できるほど戦力的に準備万全だと考えるかどうか。最後に、短期的な台湾侵攻の可能性に影響を与える要因として、来年1月13日に予定される台湾の次期総統選において中国の情報戦などの策略がどれほど選挙結果に影響を与えるかだ。
●中国メディア「大きな脅威にはならないが、政治的に大きな挑発」と批判
フリン司令官の発言に対し、中国共産党系の英字ニュース「グローバルタイムズ」は27日、「配備が伝えられているSM-6とトマホークは弾道ミサイルではないため、迎撃が容易であり、軍事的・戦術的な意味で大きな脅威にはならない」とする中国の軍事専門家の見方を報じた。
その上で、「この動きは米国が(INF全廃)条約を完全に破棄し、中国のすぐそばにミサイルを配備していることを意味するため、政治的には大きな挑発である」と批判。1962年のキューバ危機の例を挙げ、「挑発の危険性と対立激化の可能性」に触れて警告した。そして、「米国がアジア太平洋への配備を計画しているミサイルはキューバのものほど強力ではないが、挑発の深刻さの違いにもかかわらず、2つの問題は本質的に似ているとアナリストらは述べた」と報じた。
さらに「中国は台湾問題が中米関係において越えてはならない最初の一線であると繰り返し述べてきた。米国はこの立場を過小評価すべきではなく、さもないとこのデリケートなテーマで問題を引き起こす可能性がある」と伝えた。
来年1月の台湾の次期総統選を控え、フリン司令官の発言は短期的にも中国の高まる政治的・軍事的な影響力へのけん制と受け取れる。米高官の発言や中国メディアの報道を含め、米中の駆け引きや情報戦が強まりそうだ。
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