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中国3隻目の空母「福建」が年内に海上公試も 米軍相手のエリア拒否能力強化狙う

高橋浩祐米外交・安全保障専門オンライン誌「ディプロマット」東京特派員
「遼寧」「山東」に続く中国3隻目の空母「福建」(環球時報のサイトをキャプチャー)

「遼寧」「山東」に続く中国空母3隻目の「福建」が推進性能試験を実施した。中国共産党系国際ニュース「グローバルタイムズ」(環球時報)が4月23日、報じた。そして、同紙は、「福建」の海上公試が今年中に実施される可能性が高いとの中国の軍事専門家の見方を紹介した。

同紙によると、中国人民解放軍海軍が23日に創設74周年の記念日を迎えたなか、同軍は「福建」の稼働試験の進捗状況を含む主要な海軍開発プログラムについての最新情報を発表した。その中で、4隻目以降の空母のさらなる増勢や新型戦闘機の開発計画に加え、1万トン級大型駆逐艦の就役を明らかにした。

同紙は、「福建」が昨年6月17日に進水して以来、海上公試に先立ち、推進性能と係留の試験を実施し、成功裏に終えたと報じた。海上公試とは、建造された艦船を海上で実際に運航し、要求通りの機能や性能が発揮できるかを確認するために、建造所から発注者に引き渡される前に実施される最終段階での性能試験のことだ。

英軍事週刊誌ジェーンズ・ディフェンス・ウィークリーによると、「福建」は満載排水量は約8万トンで、45機から50機を艦載できる。海上自衛隊最大のいずも型護衛艦が2万6000トンであることから、かなり大きいことが分かる。

さらに重要なことは、「福建」が艦上機発進用の電磁式カタパルト(射出機)を初めて採用した中国空母であることだ。具体的には、離着艦装置としてカタパルトを使用する方式のCATOBARシステムが3つ装備されている。これによって、「福建」は一度により多くの戦闘機を最大離陸重量で発進できる。

2016年12月に南シナ海で初の発着艦訓練を実施した中国空母「遼寧」。もともとは旧ソ連海軍のクズネツォフ級空母だ
2016年12月に南シナ海で初の発着艦訓練を実施した中国空母「遼寧」。もともとは旧ソ連海軍のクズネツォフ級空母だ写真:ロイター/アフロ

これに対し、中国1隻目の空母「遼寧」(満載排水量5万8500トン)と2隻目の「山東」(同7万トン)はトン数が少なく、それぞれの艦上機は約40機に制限されている。また、「遼寧」と「山東」はカタパルトの補助を受けずに、艦上機が自力で飛行甲板上を滑走して発艦するSTOBARシステムを採用している。そして、その発艦を支援するためにスキージャンプ台を設置している。STOBARシステムはCATOBARシステムよりも長い滑走距離が必要となるため、航空機の運用効率が低くなり、最大離陸重量も制約されている。中華民国海軍(台湾海軍)によると、戦闘機1機の離陸重量が12トンを超える場合、「遼寧」と「山東」のSTOBARシステムからは離陸できない。

2017年1月、南シナ海でJ-15戦闘機の発着艦訓練を実施する中国海軍1隻目の空母「遼寧」。スキージャンプ台が設置されている
2017年1月、南シナ海でJ-15戦闘機の発着艦訓練を実施する中国海軍1隻目の空母「遼寧」。スキージャンプ台が設置されている写真:ロイター/アフロ

グローバルタイムズは、中国国営中央テレビ(CCTV)の4月22日の放映を引用し、中国の広大な海域をカバーするには空母3隻だけではその需要を満たすことができないと主張し、中国がさらに多くの空母を建造することは確実であると述べた。

また、米海軍が11隻の10万トン級の原子力空母を運用していることから、中国の将来の空母も原子力推進になる可能性があると指摘している。

また、グローバルタイムズは、空母搭載の艦上機として最新鋭ステルス戦闘機「J-35」、多用途戦闘機J-15の改良型「J-15B」、J-15の電子戦型機「J-15D」、空母艦載用の早期警戒機「KJ-600」を中国がそれぞれ開発中と述べた。そして、これらの中国軍機が、アメリカ軍のF-35Cステルス戦闘機、F/A-18E/F多用途戦闘機、EA-18G電子戦機、E-2D早期警戒機に匹敵する組み合わせになると強調している。

いずれにせよ、中国は「空母3隻時代」をアピールし、海洋大国としての地位を確立したいという野望をあらわにしている。2019年3月の第13期全国人民代表大会(全人代)第2回会議では、尹中卿(イン・チュウケイ)全人代財政経済委員会副主任委員が、中国は「海洋の権利と利益を保護し、海洋の安全を守る」ために強力な海洋力を投射すべきであると提案した。

ただし、世界の海洋大国になるという中国の願望は、そのエンジン技術によって妨げられている。空母部隊が蒸気エンジンを使用しているため、中国が太平洋とインド洋で空母展開能力を長期間維持できる可能性は低い。ジェーンズでは、「福建」がディーゼルエンジン機関を搭載する可能性が50%の確率であり得ると分析している。

とは言え、「福建」は、中国海軍で尖閣諸島(沖縄県石垣市)や台湾周辺海域を管轄する東海艦隊への配備が見込まれている。中国は東シナ海と西太平洋で米空母などが近づけないようにする接近阻止・領域拒否(A2/AD)能力の強化を狙っている。「福建」が配備されれば、中国はインド太平洋地域でかつてない打撃力に伴う強い戦力投射能力を持つことになるだろう。

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米外交・安全保障専門オンライン誌「ディプロマット」東京特派員

英軍事週刊誌「ジェーンズ・ディフェンス・ウィークリー」前東京特派員。コリアタウンがある川崎市川崎区桜本の出身。令和元年度内閣府主催「世界青年の船」日本ナショナルリーダー。米ボルチモア市民栄誉賞受賞。ハフポスト日本版元編集長。元日経CNBCコメンテーター。1993年慶応大学経済学部卒、2004年米コロンビア大学大学院ジャーナリズムスクールとSIPA(国際公共政策大学院)を修了。朝日新聞やアジアタイムズ、ブルームバーグで記者を務める。NK NewsやNikkei Asia、Naval News、東洋経済、週刊文春、論座、英紙ガーディアン、シンガポール紙ストレーツ・タイムズ等に記事掲載。

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